3dB と 6dB を取り違えない:dB の電圧比と電力比
「6dB 落ちた」と言われて、電圧が半分になったのか電力が 1/4 になったのかを即答できないと、フィルタの計算も EMI の限度値も読み違えます。dB は比を対数で表したもので、電力なら 10 倍、電圧なら 20 倍の係数が付きます。
定義は電力比。電圧は 2 乗するから 20log
デシベルの定義は電力比です。dB = 10 × log₁₀(P₂ ÷ P₁)。電力が 2 倍なら 3.01dB、10 倍なら 10dB、100 倍なら 20dB です。
電圧で表すときは、電力が電圧の 2 乗に比例する(P = V² ÷ R)ことから、10 × log(V₂² ÷ V₁²) = 20 × log(V₂ ÷ V₁) になります。電圧が 2 倍なら 6.02dB、10 倍なら 20dB、100 倍なら 40dB。同じ「2 倍」でも、電力なら 3dB、電圧なら 6dB です。
この 2 つが一致するのは、同じインピーダンスで測ったときです。電圧 2 倍は電力 4 倍で、どちらで計算しても 6dB。電力 2 倍は電圧 √2 = 1.414 倍で、どちらで計算しても 3dB。矛盾しているのではなく、同じ現象を電力で見るか電圧で見るかの違いです。
つまずくのは、「−3dB」を電圧比で読むときです。フィルタのカットオフ周波数(−3dB 点)では電圧が 0.707 倍、電力が 0.5 倍です。「半分」は電力の話で、電圧は 7 割残っています。電圧が半分になるのは −6dB です。
| dB | 電圧比 | 電力比 | よく出てくる場面 |
|---|---|---|---|
| 0dB | 1 | 1 | 基準 |
| +3dB | 1.41 | 2 | 電力 2 倍 |
| +6dB | 2 | 4 | 電圧 2 倍 |
| +10dB | 3.16 | 10 | 電力 10 倍 |
| +20dB | 10 | 100 | 電圧 10 倍、アンプの標準的なゲイン |
| +40dB | 100 | 10,000 | 電圧 100 倍 |
| −3dB | 0.707 | 0.5 | フィルタのカットオフ |
| −6dB | 0.5 | 0.25 | 電圧半分、1/2 の分圧 |
| −20dB | 0.1 | 0.01 | 1 次フィルタの 10 倍周波数での減衰 |
| −40dB | 0.01 | 10⁻⁴ | 2 次フィルタの 10 倍周波数、CMRR の目安 |
| −60dB | 0.001 | 10⁻⁶ | 1000 分の 1 |
基準を決めた dB:dBm、dBV、dBu、dBµV
dB は比なので、単独では大きさを表しません。基準を決めると絶対値になり、単位の後ろに基準を書きます。
dBm:1mW を 0dBm とする電力。RF で標準です。50Ω 系では 0dBm = 0.224Vrms(0.632Vp-p)、+10dBm = 10mW = 0.707Vrms、+20dBm = 100mW、+30dBm = 1W。−30dBm = 1µW = 7.07mVrms、−100dBm = 0.1pW = 2.2µVrms(受信機の感度の領域)。
dBV:1Vrms を 0dBV とする電圧。−20dBV = 0.1V、−60dBV = 1mV。
dBu:0.775Vrms を 0dBu とする電圧。600Ω に 1mW を与える電圧が 0.775V であることに由来し、オーディオ機器のライン入出力の基準(+4dBu = 1.23Vrms など)に使われます。
dBµV:1µVrms を 0dBµV とする電圧。EMI 測定で使います。60dBµV = 1mV、120dBµV = 1V。CISPR の限度値が「40dBµV/m」のように書かれていたら、100µV/m の電界強度です。
50Ω 系では dBm と dBµV の間に固定の関係があり、dBµV = dBm + 107 です。0dBm = 107dBµV。EMI 測定器(受信機)の表示を切り替えるときに使います。
dB は足し算、倍率は掛け算
dB を使う理由は、縦続接続した回路のゲインを足し算で扱えることです。20dB のアンプの後に −6dB の分圧を置けば 14dB。倍率で言えば 10 × 0.5 = 5 倍で、20log(5) = 14dB。
フィルタの減衰も足し算です。1 次の RC フィルタは、カットオフの 10 倍の周波数で −20dB、100 倍で −40dB。2 段(互いに影響しないよう分離した)なら −40dB、−80dB。
オペアンプの利得帯域幅積(GBW)もこの考え方です。GBW = 1MHz のオペアンプで 40dB(100 倍)のゲインを取ると、帯域は 1MHz ÷ 100 = 10kHz。ゲインを 20dB(10 倍)に下げれば 100kHz まで伸びます。
アンテナのゲイン dBi と dBd は基準が違います。dBi は等方性アンテナ基準、dBd は半波長ダイポール基準で、dBi = dBd + 2.15。カタログの 5dBi は 2.85dBd で、同じアンテナです。
よくある取り違え
- 電力の比に 20log を使う。「出力が 2 倍になった」を 6dB と書く誤り。電力なら 3dB です。
- 電圧の比に 10log を使う。1/2 の分圧を −3dB と書く誤り。電圧なら −6dB です。
- インピーダンスが違う 2 点の電圧比を dB で比べる。入力 1kΩ、出力 8Ω のアンプで「電圧ゲイン 0dB」でも、電力ゲインは 10log(1000 ÷ 8) = 21dB あります。
- dBm を電圧だと思う。dBm は電力なので、インピーダンスが違えば電圧は変わります。0dBm は 50Ω で 0.224V、600Ω で 0.775V です。
- −3dB を「ほぼ変わらない」と読む。電力半分です。オーディオでは聴感上わずかですが、電源効率や RF のリンクバジェットでは大きな値です。
- dB の差と dB の値を混同する。「SN 比が 3dB 改善」は信号対雑音の比が 2 倍(電力)になったこと。「雑音が 3dB」は基準がなければ意味を持ちません。
計算機
dB→倍率は dB 値から電圧比と電力比の両方を出します。電圧→dBと電力→dBは、それぞれ 20log と 10log で計算します。どちらの計算機を使うかで係数が変わるので、扱っている量が電圧なのか電力なのかを先に決めてください。
よくある質問
−3dB は半分ですか、7 割ですか。
0dBm は何 V ですか。
電圧のゲインが 20dB のアンプの電力ゲインは何 dB ですか。
dBµV と dBm の換算は?
参考にした規格・資料
- IEC 60027-3 — 対数量と単位(ベル・ネーパ)の定義
- CISPR 16-1-1 — EMI 測定器の仕様と dBµV による表記
- ITU-R V.574 — dB の基準値の表記法(dBm、dBW、dBµV など)