3dB と 6dB を取り違えない:dB の電圧比と電力比

「6dB 落ちた」と言われて、電圧が半分になったのか電力が 1/4 になったのかを即答できないと、フィルタの計算も EMI の限度値も読み違えます。dB は比を対数で表したもので、電力なら 10 倍、電圧なら 20 倍の係数が付きます。

最終更新: 2026-09-14 dBデシベルdBmEMI

定義は電力比。電圧は 2 乗するから 20log

デシベルの定義は電力比です。dB = 10 × log₁₀(P₂ ÷ P₁)。電力が 2 倍なら 3.01dB、10 倍なら 10dB、100 倍なら 20dB です。

電圧で表すときは、電力が電圧の 2 乗に比例する(P = V² ÷ R)ことから、10 × log(V₂² ÷ V₁²) = 20 × log(V₂ ÷ V₁) になります。電圧が 2 倍なら 6.02dB、10 倍なら 20dB、100 倍なら 40dB。同じ「2 倍」でも、電力なら 3dB、電圧なら 6dB です。

この 2 つが一致するのは、同じインピーダンスで測ったときです。電圧 2 倍は電力 4 倍で、どちらで計算しても 6dB。電力 2 倍は電圧 √2 = 1.414 倍で、どちらで計算しても 3dB。矛盾しているのではなく、同じ現象を電力で見るか電圧で見るかの違いです。

つまずくのは、「−3dB」を電圧比で読むときです。フィルタのカットオフ周波数(−3dB 点)では電圧が 0.707 倍、電力が 0.5 倍です。「半分」は電力の話で、電圧は 7 割残っています。電圧が半分になるのは −6dB です。

dB と電圧比・電力比の対応
dB電圧比電力比よく出てくる場面
0dB11基準
+3dB1.412電力 2 倍
+6dB24電圧 2 倍
+10dB3.1610電力 10 倍
+20dB10100電圧 10 倍、アンプの標準的なゲイン
+40dB10010,000電圧 100 倍
−3dB0.7070.5フィルタのカットオフ
−6dB0.50.25電圧半分、1/2 の分圧
−20dB0.10.011 次フィルタの 10 倍周波数での減衰
−40dB0.0110⁻⁴2 次フィルタの 10 倍周波数、CMRR の目安
−60dB0.00110⁻⁶1000 分の 1
dB と電圧比・電力比の対応−40dB から +40dB までの目盛りの上に電圧比(20log)、下に電力比(10log)を並べた数直線。−3dB で電力 0.5・電圧 0.707、−6dB で電圧 0.5・電力 0.25 になることを示す。 同じ dB でも、電圧比と電力比は違う数字になる 上段:電圧比(20log) 下段:電力比(10log)。同じインピーダンスなら両方が同時に成り立つ dB 電圧比 電力比 -40 ×0.01 ×0.0001 -20 ×0.1 ×0.01 -10 ×0.32 ×0.1 -6 ×0.5 ×0.25 -3 ×0.71 ×0.5 0 ×1 ×1 +3 ×1.41 ×2 +6 ×2 ×3.98 +10 ×3.16 ×1 +20 ×1 ×100 +40 ×100 ×10000 −3dB:電力半分、電圧 0.707 −6dB:電圧半分、電力 1/4 フィルタのカットオフ(−3dB)で電圧は 7 割残る。電圧が半分になるのは −6dB。 20dB ごとに電圧は 10 倍、電力は 100 倍。
図1:dB の目盛りと、電圧比・電力比の対応。同じ目盛りに対して電圧比は 20log、電力比は 10log で読む。

基準を決めた dB:dBm、dBV、dBu、dBµV

dB は比なので、単独では大きさを表しません。基準を決めると絶対値になり、単位の後ろに基準を書きます。

dBm:1mW を 0dBm とする電力。RF で標準です。50Ω 系では 0dBm = 0.224Vrms(0.632Vp-p)、+10dBm = 10mW = 0.707Vrms、+20dBm = 100mW、+30dBm = 1W。−30dBm = 1µW = 7.07mVrms、−100dBm = 0.1pW = 2.2µVrms(受信機の感度の領域)。

dBV:1Vrms を 0dBV とする電圧。−20dBV = 0.1V、−60dBV = 1mV。

dBu:0.775Vrms を 0dBu とする電圧。600Ω に 1mW を与える電圧が 0.775V であることに由来し、オーディオ機器のライン入出力の基準(+4dBu = 1.23Vrms など)に使われます。

dBµV:1µVrms を 0dBµV とする電圧。EMI 測定で使います。60dBµV = 1mV、120dBµV = 1V。CISPR の限度値が「40dBµV/m」のように書かれていたら、100µV/m の電界強度です。

50Ω 系では dBm と dBµV の間に固定の関係があり、dBµV = dBm + 107 です。0dBm = 107dBµV。EMI 測定器(受信機)の表示を切り替えるときに使います。

dB は足し算、倍率は掛け算

dB を使う理由は、縦続接続した回路のゲインを足し算で扱えることです。20dB のアンプの後に −6dB の分圧を置けば 14dB。倍率で言えば 10 × 0.5 = 5 倍で、20log(5) = 14dB。

フィルタの減衰も足し算です。1 次の RC フィルタは、カットオフの 10 倍の周波数で −20dB、100 倍で −40dB。2 段(互いに影響しないよう分離した)なら −40dB、−80dB。

オペアンプの利得帯域幅積(GBW)もこの考え方です。GBW = 1MHz のオペアンプで 40dB(100 倍)のゲインを取ると、帯域は 1MHz ÷ 100 = 10kHz。ゲインを 20dB(10 倍)に下げれば 100kHz まで伸びます。

アンテナのゲイン dBi と dBd は基準が違います。dBi は等方性アンテナ基準、dBd は半波長ダイポール基準で、dBi = dBd + 2.15。カタログの 5dBi は 2.85dBd で、同じアンテナです。

よくある取り違え

  • 電力の比に 20log を使う。「出力が 2 倍になった」を 6dB と書く誤り。電力なら 3dB です。
  • 電圧の比に 10log を使う。1/2 の分圧を −3dB と書く誤り。電圧なら −6dB です。
  • インピーダンスが違う 2 点の電圧比を dB で比べる。入力 1kΩ、出力 8Ω のアンプで「電圧ゲイン 0dB」でも、電力ゲインは 10log(1000 ÷ 8) = 21dB あります。
  • dBm を電圧だと思う。dBm は電力なので、インピーダンスが違えば電圧は変わります。0dBm は 50Ω で 0.224V、600Ω で 0.775V です。
  • −3dB を「ほぼ変わらない」と読む。電力半分です。オーディオでは聴感上わずかですが、電源効率や RF のリンクバジェットでは大きな値です。
  • dB の差と dB の値を混同する。「SN 比が 3dB 改善」は信号対雑音の比が 2 倍(電力)になったこと。「雑音が 3dB」は基準がなければ意味を持ちません。

計算機

dB→倍率は dB 値から電圧比と電力比の両方を出します。電圧→dB電力→dBは、それぞれ 20log と 10log で計算します。どちらの計算機を使うかで係数が変わるので、扱っている量が電圧なのか電力なのかを先に決めてください。

よくある質問

−3dB は半分ですか、7 割ですか。
電力なら半分(0.5 倍)、電圧なら 0.707 倍です。同じ現象を電力で見るか電圧で見るかの違いで、矛盾はありません。フィルタのカットオフ周波数で電圧が 0.707 倍に落ちるとき、電力は半分になっています。
0dBm は何 V ですか。
インピーダンスによります。50Ω なら 0.224Vrms(0.632Vp-p)、75Ω なら 0.274Vrms、600Ω なら 0.775Vrms です。dBm は電力の単位なので、電圧に直すには V = √(P × R) を使います。
電圧のゲインが 20dB のアンプの電力ゲインは何 dB ですか。
入出力のインピーダンスが同じなら 20dB です。違う場合は、電圧ゲイン(dB)+ 10log(R_in ÷ R_out) になります。入力 10kΩ、出力 100Ω なら 20 + 20 = 40dB です。
dBµV と dBm の換算は?
50Ω 系で dBµV = dBm + 107 です。0dBm(1mW)は 50Ω で 0.224V = 224,000µV = 107dBµV。EMI 受信機の表示切り替えで使います。

参考にした規格・資料

  • IEC 60027-3 — 対数量と単位(ベル・ネーパ)の定義
  • CISPR 16-1-1 — EMI 測定器の仕様と dBµV による表記
  • ITU-R V.574 — dB の基準値の表記法(dBm、dBW、dBµV など)

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