3dB と 6dB を取り違えない:dB の電圧比と電力比

「6dB 落ちた」と言われて、電圧が半分になったのか電力が 1/4 になったのかを即答できないと、フィルタの計算も EMI の限度値も読み違えます。dB は比を対数で表したもので、電力なら 10 倍、電圧なら 20 倍の係数が付きます。

最終更新: 2026-10-28 dBデシベルdBmEMI

定義は電力比。電圧は 2 乗するから 20log

デシベルの定義は電力比です。dB = 10 × log₁₀(P₂ ÷ P₁)。電力が 2 倍なら 3.01dB、10 倍なら 10dB、100 倍なら 20dB です。

電力は電圧の 2 乗に比例する(P = V² ÷ R)ので、電圧では 20 × log(V₂ ÷ V₁) になります。電圧が 2 倍なら 6.02dB、10 倍なら 20dB、100 倍なら 40dB。同じ「2 倍」でも、電力なら 3dB、電圧なら 6dB です。同じインピーダンスなら電圧 2 倍は電力 4 倍にあたるので、矛盾はありません。

つまずくのは、「−3dB」を電圧比で読むときです。カットオフ周波数(−3dB 点)では電圧が 0.707 倍、電力が 0.5 倍で、「半分」は電力の話です。電圧が半分になるのは −6dB です。

dB と電圧比・電力比の対応
dB電圧比電力比よく出てくる場面
0dB11基準
+3dB1.412電力 2 倍
+6dB24電圧 2 倍
+10dB3.1610電力 10 倍
+20dB10100電圧 10 倍、アンプの標準的なゲイン
+40dB10010,000電圧 100 倍
−3dB0.7070.5フィルタのカットオフ
−6dB0.50.25電圧半分、1/2 の分圧
−20dB0.10.011 次フィルタの 10 倍周波数での減衰
−40dB0.0110⁻⁴2 次フィルタの 10 倍周波数、CMRR の目安
−60dB0.00110⁻⁶1000 分の 1
信号の大きさを異なる尺度で比べるイメージ
信号の大きさを異なる尺度で比べるイメージ。概念を表すAI生成イラストです。実際の回路・条件は本文の図と説明を参照してください。
dB と電圧比・電力比の対応−40dB から +40dB までの目盛りの上に電圧比(20log)、下に電力比(10log)を並べた数直線。−3dB で電力 0.5・電圧 0.707、−6dB で電圧 0.5・電力 0.25 になることを示す。 同じ dB でも、電圧比と電力比は違う数字になる 上段:電圧比(20log) 下段:電力比(10log)。同じインピーダンスなら両方が同時に成り立つ dB 電圧比 電力比 -40 ×0.01 ×0.0001 -20 ×0.1 ×0.01 -10 ×0.32 ×0.1 -6 ×0.5 ×0.25 -3 ×0.71 ×0.5 0 ×1 ×1 +3 ×1.41 ×2 +6 ×2 ×3.98 +10 ×3.16 ×10 +20 ×10 ×100 +40 ×100 ×10000 −3dB:電力半分、電圧 0.707 −6dB:電圧半分、電力 1/4 フィルタのカットオフ(−3dB)で電圧は 7 割残る。電圧が半分になるのは −6dB。 20dB ごとに電圧は 10 倍、電力は 100 倍。
図1:dB の目盛りと、電圧比・電力比の対応。

基準を決めた dB:dBm、dBV、dBu、dBµV

dB は比なので、基準を決めてはじめて絶対値になります。基準は単位の後ろに書きます。

  • dBm:1mW を 0dBm とする電力。RF で標準です。50Ω 系では 0dBm = 0.224Vrms(0.632Vp-p)、+10dBm = 10mW = 0.707Vrms、−30dBm = 1µW = 7.07mVrms、−100dBm = 0.1pW = 2.2µVrms。
  • dBV:1Vrms を 0dBV とする電圧。−20dBV = 0.1V。
  • dBu:0.775Vrms を 0dBu とする電圧。600Ω に 1mW を与える電圧に由来し、オーディオのライン入出力(+4dBu = 1.23Vrms など)に使います。
  • dBµV:1µVrms を 0dBµV とする電圧。EMI 測定で使います。60dBµV = 1mV、120dBµV = 1V。CISPR の限度値「40dBµV/m」は 100µV/m の電界強度です。

50Ω 系では dBµV = dBm + 107 です。EMI 受信機の表示を切り替えるときに使います。

基準ごとの 0dB の位置電圧の対数軸に、dBµV、dBm、dBu、dBV の 0dB の位置を並べた図。0dBµV は 1µV、0dBu は 0.775V、0dBV は 1V。0dBm は 50Ω のとき 0.224V で、0dBµV から 107dB の位置にある。 基準を決めると、電圧の対数軸に「0dB の位置」ができる 横軸は電圧(対数)。dBm は電力の基準なので、位置は 50Ω のときの値 1µV 1mV 1V 電圧(対数軸) dBµV 基準 1µVrms 0dBµV = 1µV dBm 基準 1mW(電力) 0dBm = 0.224V(50Ω) dBu 基準 0.775Vrms 0dBu = 0.775V dBV 基準 1Vrms 0dBV = 1V 107dB(dBµV = dBm + 107)
図2:4 つの基準で 0dB が電圧のどこにあるか。

dB は足し算、倍率は掛け算

dB を使う理由は、縦続接続した回路のゲインを足し算で扱えることです。フィルタの減衰も同じで、1 次の RC フィルタはカットオフの 10 倍の周波数で −20dB、100 倍で −40dB です。

アンテナのゲインでは、dBi が等方性アンテナ、dBd が半波長ダイポールを基準にし、dBi = dBd + 2.15 です。カタログの 5dBi は 2.85dBd で、同じアンテナです。

縦続接続のゲインの足し算上段は 20dB のアンプと −6dB の分圧を続けると 14dB(倍率は 10 × 0.5 = 5 倍)。下段は 1 次の RC フィルタを 2 段つなぐと、カットオフの 10 倍の周波数で −20dB と −20dB を足して −40dB(100 倍では −80dB)。 dB は足し算、倍率は掛け算 縦続接続したときの全体のゲイン アンプの後に分圧 +20dB アンプ(10 倍) −6dB 分圧(0.5 倍) 14dB 10 × 0.5 = 5 倍、20log(5) + = 1 次の RC フィルタを 2 段(互いに影響しないよう分離) −20dB カットオフの 10 倍で −20dB 2 段目も同じ −40dB 100 倍では −80dB + =
図3:縦続接続のゲインは、dB なら足し算になる。

よくある取り違え

  • 係数の取り違え。「出力が 2 倍」を 6dB と書くのは誤りで、電力なら 3dB です。1/2 の分圧を −3dB と書くのも誤りで、電圧なら −6dB です。
  • インピーダンスが違う 2 点の電圧比を dB で比べる。入力 1kΩ、出力 8Ω で電圧ゲイン 0dB でも、電力ゲインは 10log(1000 ÷ 8) = 21dB です。
  • dB の差と dB の値を混同する。「SN 比が 3dB 改善」は信号対雑音の比が 2 倍(電力)になったこと。「雑音が 3dB」は基準がなければ意味を持ちません。

計算機

dB→倍率は電圧比と電力比の両方を出します。電圧→dBは 20log、電力→dBは 10log で計算するので、扱う量が電圧か電力かを先に決めてください。

よくある質問

−3dB は半分ですか、7 割ですか。
電力なら半分(0.5 倍)、電圧なら 0.707 倍です。同じ現象を電力で見るか電圧で見るかの違いで、矛盾はありません。
0dBm は何 V ですか。
50Ω なら 0.224Vrms、75Ω なら 0.274Vrms、600Ω なら 0.775Vrms です。電力 P と抵抗 R からは V = √(P × R) で求めます。
電圧のゲインが 20dB のアンプの電力ゲインは何 dB ですか。
入出力のインピーダンスが同じなら 20dB です。違う場合は電圧ゲイン(dB)+ 10log(R_in ÷ R_out) で、入力 10kΩ、出力 100Ω なら 40dB です。
dBµV と dBm の換算は?
50Ω 系で dBµV = dBm + 107 です。0dBm は 0.224V = 224,000µV = 107dBµV にあたります。

参考にした規格・資料

  • IEC 60027-3 — 対数量と単位(ベル・ネーパ)の定義
  • CISPR 16-1-1 — EMI 測定器の仕様と dBµV による表記
  • ITU-R V.574 — dB の基準値の表記法(dBm、dBW、dBµV など)

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