RCフィルタ - カットオフ周波数
ローパスフィルタ 電圧が-3dB(0.707倍)となる周波数
SI接頭辞可(4k7 / 1M / 10m / 220)。大文字M=メガ、小文字m=ミリ
計算履歴
計算式
時定数: τ = R × C [s]
カットオフ周波数では電圧が -3 dB(≈0.707倍)になります
設計のポイント
RCフィルタはコンデンサと抵抗だけで構成できる最もシンプルなフィルタです。ノイズ除去、ADCの前段フィルタ、電源のデカップリングなど用途は多岐にわたります。
設計のヒント:
• カットオフを10倍にするには R または C を 1/10 にする
• k・n などの接頭辞入力に対応(例:10k、100n)
• ローパスフィルタはカットオフ以下の周波数を通し、以上を減衰させます
同じ R と C でハイパスフィルタも作れます(Rと Cの位置を入れ替えるだけ)。
こんなときに使います
ADC 入力のアンチエイリアシング、センサ信号のノイズ除去、リセット回路の時定数、PWM の平滑など、抵抗 1 本とコンデンサ 1 本で作る一次フィルタの定数を決めるときに使います。カットオフ周波数と時定数を同時に出すので、周波数で考えたい場合とステップ応答で考えたい場合の両方に使えます。
カットオフ周波数の意味
カットオフ周波数 fc = 1/(2πRC) は、信号の振幅が −3dB(約 70.7%)になる周波数です。「ここから上が切れる」という境目ではなく、そこから緩やかに落ち始める点だと考えてください。
一次フィルタの減衰はオクターブあたり 6dB、ディケードあたり 20dB です。カットオフの 10 倍の周波数でようやく 1/10(−20dB)にしかなりません。強く落としたいなら段数を増やすか、カットオフを大幅に下げる必要があります。
時定数とステップ応答
| 経過時間 | 到達率 | 残り誤差 |
|---|---|---|
| 1 τ | 63.2 % | 36.8 % |
| 2 τ | 86.5 % | 13.5 % |
| 3 τ | 95.0 % | 5.0 % |
| 5 τ | 99.3 % | 0.7 % |
| 7 τ | 99.9 % | 0.1 % |
| 9 τ | 99.99 % | 0.01 % |
ADC の前にフィルタを置く場合、この表がそのままサンプリング間隔の下限になります。12bit(1/4096 ≈ 0.024%)の精度で読みたいなら、チャンネル切り替えから 8τ 以上待つ必要があります。マルチプレクサで複数チャンネルを高速に切り替える設計では、ここが律速になりがちです。
計算例:ADC 前のアンチエイリアシング
- サンプリング周波数 1kHz でセンサを読む。ナイキスト周波数は 500Hz。
- 折り返しを避けるため、カットオフを 150Hz あたりに置きたい。
- R = 10kΩ、C = 100nF とすると、この計算機で fc = 159.15Hz、時定数 1000µs。
- 500Hz での減衰は約 −10dB(1/3)。一次フィルタではこの程度しか落ちない。
- 折り返しをもっと抑えたいなら、二次以上のフィルタにするか、サンプリングを速くして後段でデジタル的に間引く(オーバーサンプリング)ほうが現実的。
定数の選び方
- 抵抗を先に決める。前段が駆動できる負荷と、後段の入力インピーダンスから決まります。ADC 前なら 1〜10kΩ が扱いやすい範囲です。
- コンデンサの種類に注意。高誘電率系のセラミックコンデンサ(X5R / X7R / F 特性)は直流電圧をかけると容量が減ります。定格の半分の電圧で容量が半分になる品種も珍しくありません。フィルタの定数が狂うので、精度が要る場所には C0G / NP0 か、電圧に対して余裕のある品種を使ってください。
- フィルタ抵抗は ADC の要求と両立させる。抵抗を大きくするとカットオフは下げやすくなりますが、ADC のサンプリング容量への充電が間に合わなくなります。抵抗を上げるならコンデンサも十分大きくして、ADC から見える電荷源として働くようにします。
- ローパスかハイパスかは接続で決まる。この計算機の fc はどちらでも同じ式です。コンデンサを GND に落とせばローパス、直列に入れればハイパスになります。
急峻な特性が要るなら:2次・3次のアクティブフィルタ
一次のRCフィルタはオクターブあたり6dB、ディケードあたり20dBの減衰しか得られません。カットオフのすぐ上にまだ落としたい信号がある場合、抵抗とコンデンサだけでは限界があります。
代表的なのがサレンキー(Sallen-Key)型で、オペアンプ1個・抵抗2本・コンデンサ2本で2次(-40dB/dec)のローパスが組めます。3次にしたい場合は1次RCと2次サレンキーを縦続にするか、多重帰還(MFB)型を使います。次数を上げるほど遮断は急峻になりますが、素子ばらつきへの感度も上がるため、精度の低い抵抗・コンデンサを使うと狙った周波数特性からずれやすくなります。
どの応答特性(バターワース、チェビシェフ、ベッセルなど)を選ぶかでも挙動が変わります。バターワースは通過帯域が平坦で汎用的、チェビシェフはより急峻に落ちる代わりに通過帯域にリプルが乗り、ベッセルは群遅延が一定で波形の崩れ(ステップ応答のオーバーシュート)が小さいのが特徴です。ADCのアンチエイリアシング用途では、位相特性が素直なベッセル系を選ぶことが多くなります。
2段のRCを単純に縦続接続しても2次フィルタにはなりません。前段の出力インピーダンスが後段の負荷になり、互いに影響し合うためです(このページの計算例を参照)。段間にオペアンプのボルテージフォロワを挟むか、最初からアクティブフィルタとして設計してください。
よくある質問
−3dB とはどういう意味ですか?
カットオフの 10 倍の周波数でどれだけ落ちますか?
RC を 2 段重ねればカットオフは急峻になりますか?
セラミックコンデンサの直流バイアス特性はどのくらい効きますか?
参考にした規格・資料
- IEC 60384-1 — 固定コンデンサの一般仕様。
- EIA-198(温度特性の記号) — C0G / X5R / X7R などの分類。
- Sallen-Key / MFB フィルタトポロジー — 2次能動フィルタの代表的な構成。
最終更新: 2026-08-30