IBISモデル 波形シミュレータ

IBISモデル(.ibs)を読み込み、送信IC → パッケージ → 基板パターン(伝送線路) → 終端 → 受信IC の回路を過渡解析して、送信端と受信端の波形を表示します。[Diff_pin] のあるモデルなら差動ペア(LVDS など)も解析でき、Vod・Vos の波形とアイパターンを出せます。
節点解析+Newton法+後退オイラー、伝送線路はBranin法という構成をフルスクラッチで実装しています(SPICE等の外部エンジンは使っていません)。ファイルはブラウザ内でのみ処理され、サーバへは送信されません。

(未読み込み)

ここにファイルをドラッグ&ドロップしても読み込めます。読み込んだモデルはブラウザのローカルストレージにのみ保存されます。ベンダ提供のIBISモデルには再配布を禁じるものが多いため、本サイトには同梱していません。手元の .ibs を読み込んでください。デモモデルは当サイトで生成した架空の合成データ(Public Domain / CC0)で、シングルエンドの 3.3V CMOS I/O と [Diff Pin] つきの LVDS 差動ペアを収録しています。

このシミュレータの中身と限界

回路モデル

送信ダイ(C_comp と I-V テーブル)→ パッケージ(R_pkg + L_pkg 直列、C_pkg 対地)→ 送信側直列抵抗 → 伝送線路 → 終端 → 受信パッケージ → 受信ダイ(C_comp とクランプ)という一次元の回路を組み、全節点について節点方程式を立てて解いています。

数値解法

  • 時間積分:後退オイラー(無条件安定、固定ステップ)
  • 非線形素子:Newton-Raphson 法。I-V テーブルは区分線形補間し、その傾きをヤコビアンに使用
  • 伝送線路:Branin(特性線)法による無損失遅延線。往復波を履歴バッファに保持し、遅延が時間刻みの整数倍でない分は線形補間
  • 直流損失:線路を複数区間に分割し、区間の間に直列抵抗を挿入
  • 初期値:直流動作点を Newton 法で解き、容量電圧・インダクタ電流・線路の進行波を初期化

IBIS のどこを使っているか

キーワード使い方
[Pullup] / [Pulldown]ドライバの非線形 I-V。Ku(t)/Kd(t) で重み付けして合成
[POWER_Clamp] / [GND_Clamp]ESDクランプ。オーバー/アンダーシュートの制限に効く
[Ramp]20〜80% の dV/dt から遷移時間 = dt / 0.6 を求め、Ku/Kd を直線的に変化させる
[Rising/Falling Waveform]あれば、フィクスチャ負荷から Ku(t) を逆算して [Ramp] より現実的な遷移形状にする
C_compダイ容量
[Package] / [Pin]R_pkg・L_pkg・C_pkg(またはピン別の値)
[Diff_pin]差動ペアの相方・差動しきい値 vdiff・P/N スキュー tdelay
[Voltage Range] ほか電源電圧、各テーブルの基準電圧
Vinh / Vinl / Vmeas受信しきい値判定と伝搬遅延の基準

差動モード

[Diff_pin] を持つモデルでは「差動ペア」を選べます。P 側と N 側に同じ [Model] を割り当て、相補的な Ku/Kd で駆動する 2 本のレーンを立てて、両方を 1 つの回路として同時に解きます。表示している Vod は P − N、Vos は (P + N) / 2 です。

  • 線路は奇モードインピーダンス Zdiff/2 の独立した 2 本として扱います。線間の結合そのものは解いていないため、差動モードは妥当ですが、コモンモードのインピーダンスは実際より単純になります。
  • 終端は線間 1 本(LVDS の 100Ω)、分割終端(R/2 ×2 と中点コンデンサ)、各線を GND / Vtt へ、から選べます。
  • P/N スキューを入れると、差動成分の一部がコモンモードに変換される様子が見られます。[Diff_pin] の tdelay があれば初期値として読み込みます。
  • 論理しきい値は [Diff_pin] の vdiff(|Vod| がこれを超えるか)で判定します。単線用の Vinh / Vinl は差動モードでは使いません。
  • 電流モード駆動(LVDS など)のモデルでは、Vod は合っても Vos(コモンモード電圧)がデータシートと合わないことがあります。IBIS の [Pullup] / [Pulldown] は片線ずつの表なので、内部のコモンモード帰還までは表現できないためです。ここで出る Vos は「そのモデルが言っている値」であって、デバイスの実力値ではありません。

割り切っている点

  • Ku + Kd = 1 を仮定した1波形法です。2波形法(立ち上がり・立ち下がりの両方から Ku, Kd を独立に解く)ではありません。
  • [Ramp] しか無いモデルでは Ku/Kd が直線変化になるため、実際の丸まったエッジよりわずかに角張ります。
  • 伝送線路は無損失+直流抵抗のみです。表皮効果・誘電体損失・分散は含みません。長距離・数Gbps帯では実際より波形がきれいに出ます。
  • クロストーク、電源/グラウンドバウンス(SSO)、非対称なリターンパスは扱いません。
  • [Driver Schedule]、[Submodel]、[External Model](IBIS-AMI)には対応していません。
  • 差動ペアは 2 本の独立した線路として解いており、線間結合・差動クロストークは含みません。
  • 電源電圧は理想電圧源として扱います。

反射・リンギング・終端方式の効き方といった傾向をつかむ用途を想定しています。出荷判定や規格適合の確認には、ベンダ純正の SI ツールを使ってください。

関連する計算機

特性インピーダンス 表層(マイクロストリップ線路) / パターン長を遅延時間に変換 / 遅延時間を距離に変換 / 集中定数 分布定数