パターン長を遅延時間に変換
基板パターンの長さから伝搬遅延時間を求めます。 「遅延時間を距離に変換」の逆計算です。
計算履歴
計算式
表層(マイクロストリップ): TD = L × √εeff / c [ps]
εeff = (εr+1)/2 + (εr-1)/2 × (1+10h/w)^-0.5
設計のポイント
配線長から伝搬遅延を計算します。高速インターフェースの等長設計(スキュー管理)で重要です。
DDR-SDRAMの例:
• DDR4-3200:1bit周期 ≈ 313 ps
• スキュー許容値 ≈ ±20 ps → 配線誤差 ≈ ±1.4mm以内
基板CADの等長制約(Length Matching)を設定する前に、許容遅延から許容配線長誤差を逆算しておくと設計がスムーズに進みます。
こんなときに使います
等長配線のレビューで「この 12mm の差は何 ps なのか」を確かめたいときや、CAD が出した配線長リストをタイミングに読み替えるときに使います。表層と内層を同時に出すので、層を跨いだ配線の比較にそのまま使えます。
表層と内層で答えが2つ出る理由
同じ長さでも、通る層によって信号の速度が違うためです。内層(ストリップライン)は上下を誘電体に挟まれているので実効誘電率が基板の εr そのものになります。表層(マイクロストリップ)は上が空気なので実効誘電率が下がり、その分だけ速く進みます。
表層側は線幅 w と誘電体厚み h から実効誘電率を求めています。w/h が小さい(細くて厚い)ほど電界が空気側に多く漏れるため速くなり、太くて薄いほど内層の値に近づきます。
特性インピーダンスは配線の断面形状(線幅・厚み・基準面までの距離)で決まり、伝搬速度は実効誘電率だけで決まります。同じ50Ωに揃えた配線でも、表層と内層では速度(=遅延)が異なります。「Z0を揃えたのだからタイミングも揃っているはず」は誤りで、層をまたぐ配線の等長設計では、この計算機で層ごとに遅延を確認してください。
計算例:層を跨ぐ配線の等長
- 基板は FR-4(εr = 4.3)、線幅 0.2mm、誘電体厚み 0.1mm。
- A の配線は内層を 100mm。この計算機で 691.2 ps。
- B の配線は表層を 100mm。同じ入力の表層側は 607.7 ps。
- 長さは同じでも 83.5 ps ずれている。100MHz のクロックの周期が 10,000ps なので、その 0.8% にあたる。
- B を A に合わせるには、表層側を 691.2 ÷ 6.077 ≈ 114mm まで伸ばす必要がある。
CAD の「等長配線」機能は多くの場合ただの物理長で揃えます。層が混ざる配線では、この差が丸ごと残ります。
よくある失敗
- 蛇行配線(ミアンダ)の効果を長さどおりに見積もる。折り返しが近接していると隣り合う区間が容量結合し、実際の遅延は計算より数%短くなります。折り返しの間隔は線幅の 3〜4 倍以上あけてください。
- ビアの遅延を数えない。1.6mm 厚を貫通するビアはおよそ 10ps。層変更が 3 回あれば 30ps で、これは配線 4mm 分に相当します。
- パッケージ内配線の差を無視する。BGA の内部配線長はピンによって数 mm 違います。高速なメモリインタフェースでは、ICメーカが公開しているパッケージ長を引き算してから基板側を合わせます。
よくある質問
表層と内層、どちらの値を使えばいいですか?
線幅と誘電体厚みは表層の値にしか効かないのですか?
蛇行配線はどのくらい余裕を見ればいいですか?
参考にした規格・資料
- IPC-2141A — マイクロストリップ/ストリップラインの実効誘電率。
- JEDEC JESD79-4 (DDR4) — アドレス/データ群に許されるスキューの規定。
最終更新: 2026-08-30