表皮効果

導体表面に対し、電流が1/e=0.37倍まで減衰する深さの計算機です。 導体を伝搬する信号は、導体の表面ほど流れやすく、内側ほど流れにくい性質があります。 信号の周波数が高いほど、その傾向が強くなります。 インパルスノイズや静電気のノイズは周波数が高く、表皮効果により導体や基板の表面に流れやすいです。

表皮効果の説明図
Hz

SI接頭辞可(4k7 / 1M / 10m / 220)。大文字M=メガ、小文字m=ミリ

電流が1/e倍になる深さ
mm
計算履歴
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計算式

表皮深さ(銅): δ = 66 / √f [mm]
(f:周波数[Hz])
例:1 GHz → δ ≈ 2.1 µm

設計のポイント

交流電流は周波数が高いほど導体の表面近くに集中します(表皮効果)。高周波では実効断面積が減少し、抵抗が増加して損失が大きくなります。

表皮深さの目安(銅):
• 60 Hz(商用電源): ≈ 8.5 mm
• 1 MHz: ≈ 0.066 mm
• 100 MHz: ≈ 6.6 µm
• 1 GHz: ≈ 2.1 µm

ESD(静電気)やサージは表皮効果で導体・基板の表面を流れます。シールドの設計でこの特性を活用できます。

こんなときに使います

高周波での導体損失を見積もるときや、「銅箔を厚くしたのに高周波では効かない」理由を確かめるときに使います。電源の話に見えて、実際には高速信号の減衰やスイッチング電源のインダクタ設計で効いてくる数字です。

表皮深さとは

交流電流は導体の内部を均一には流れません。周波数が高くなるほど表面に集中し、内部はほとんど電流が流れなくなります。表皮深さ δ は、電流密度が表面の 1/e(約 37%)まで減る深さです。

実用上は「導体の表面から δ の厚みだけが使われている」と考えて差し支えありません。導体の厚みが δ の 2 倍以上あると、それ以上厚くしても交流抵抗はほとんど下がらなくなります。

銅での表皮深さ

銅(20°C、ρ = 1.72×10⁻⁸ Ω·m)。1oz 銅箔の厚み 35µm と比べてください。
周波数表皮深さ1oz(35µm)との比較
100 kHz約 209 µm銅箔全体を使えている
1 MHz約 66 µmまだ厚み全体が使える
3.5 MHz約 35 µmここで銅箔厚と一致
10 MHz約 21 µm厚みの 6 割しか使えない
100 MHz約 6.6 µm厚みの 2 割
1 GHz約 2.1 µm厚みの 6%

1oz 銅箔では 3.5MHz あたりが境目です。それより高い周波数では、銅箔を 2oz に厚くしても交流抵抗はほとんど変わりません。厚くする代わりに幅を広げるほうが効きます。表皮効果は周辺長で効くためです。

実務で効いてくる場面

  • 高速差動配線の損失。数 GHz では表皮効果に加えて銅箔表面の粗さ(Rz)が効きます。粗い銅箔は表面積が増えて電流経路が伸び、損失が増えます。10Gbps を超える設計では低粗度銅箔(VLP / HVLP)を指定します。
  • スイッチング電源のインダクタ。数百 kHz のリップル電流に対して、太い単線より細線を束ねたリッツ線のほうが交流抵抗を下げられます。
  • 大電流パターンの交流成分。直流は断面全体で流れますが、リップルやスイッチングノイズは表面しか使いません。直流抵抗で発熱を見積もると過小評価になります。
  • GND 面のリターン電流。高周波のリターン電流は信号配線の真下に集中して流れます。表皮効果によって面の表層しか使わないため、内層 GND の「厚み」は高周波にはほとんど寄与しません。

よくある質問

銅箔を厚くすれば高周波の損失は減りますか?
ほとんど減りません。表皮深さより厚い部分は使われないからです。1oz(35µm)は 3.5MHz で表皮深さと一致するので、それ以上の周波数では厚くしても無駄になります。損失を減らしたければ、配線を広くするか、誘電正接の小さい材料を選ぶほうが効果的です。
表皮深さの式に温度は関係しますか?
します。抵抗率 ρ が温度で上がるため、高温ほど表皮深さは深くなります。銅は 100°C で抵抗率が約 31% 増えるので、表皮深さは √1.31 ≈ 1.14 倍になります。実務ではこの差より、周波数の効き方(√f に反比例)のほうがはるかに大きいです。
銅箔の表面粗さはどのくらい効きますか?
数 GHz 以上で無視できなくなります。標準的な銅箔の Rz は 5µm 前後で、これは 1GHz の表皮深さ 2.1µm より大きい値です。電流が凹凸に沿って流れるため経路が伸び、損失が 1.5 倍近くになることもあります。低粗度銅箔は Rz が 2µm 以下です。
アルミや金では違いますか?
抵抗率と透磁率で変わります。アルミは銅より抵抗率が高いぶん表皮深さは深く(約 1.3 倍)なります。この計算機は銅の値で固定しています。なお鉄やニッケルは透磁率が桁違いに大きいため表皮深さが極端に浅く、高周波では表面のめっき層の材質が効いてきます。

参考にした規格・資料

  • IPC-2141A — 高周波での導体損失と表皮効果。
  • IPC-4562 — 銅箔の仕様。粗さ(プロファイル)の区分。

最終更新: 2026-08-29