比誘電率から基板上での伝搬速度
基板における電波の伝搬速度の計算機です。誘電率が高いほど、伝搬速度は低下します。 誘電率が低い基板は高速信号(5Gやミリ波など)の伝搬遅延が少なく、有利です。
εr
伝搬速度
6.912ps/mm
伝搬速度
0.1447mm/ps
計算履歴
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計算式
伝搬速度: v = c / √εr [m/s]
伝搬遅延: TD = √εr / c [ps/mm]
例:FR-4(εr=4.3)→ 約14.5 ps/mm
伝搬遅延: TD = √εr / c [ps/mm]
例:FR-4(εr=4.3)→ 約14.5 ps/mm
設計のポイント
プリント基板上の信号は光速より遅く伝搬します。その速度は基板材料の比誘電率(εr)によって決まり、高速ディジタル設計では配線のタイミング遅延の見積もりに使います。
代表的な基板材料の εr:
• FR-4(汎用): εr ≈ 4.2〜4.8
• Rogers 4350B(高速通信): εr ≈ 3.48
• PTFE系(マイクロ波): εr ≈ 2.1
DDRやPCI Expressの配線等長合わせにこの計算機のps/mm値を活用してください。
こんなときに使います
DDR や LVDS、PCIe のような差動・パラレル配線で等長配線の許容差を決めたいときに最初に必要になる数値です。基板メーカから届いたスタックアップ表の比誘電率を入れて、「この基板では信号が 1mm あたり何 ps 遅れるのか」を押さえておくと、以降のタイミング設計がすべてこの1つの数字から出せます。
計算していること
真空中の光速 c を、基板の誘電体で満たされた空間での速度に落とした値です。誘電率が高い材料ほど電磁波は遅く進むので、伝搬遅延 tpd は √εr に比例して増えます。
出力は2種類あります。ps/mm は「1mm 進むのに何 ps かかるか」で、等長配線やタイミングバジェットで使います。mm/ps はその逆数で、「この時間差は何 mm 相当か」を暗算するときに便利です。
適用範囲と注意
- この式が素直に当てはまるのは内層(ストリップライン)です。配線の上下が同じ誘電体で囲まれているため、実効誘電率がそのまま εr になります。
- 表層(マイクロストリップ)は当てはまりません。配線の上が空気(εr = 1)なので実効誘電率が下がり、内層より 10〜15% ほど速く進みます。表層の遅延が要る場合はパターン長を遅延時間に変換を使ってください。こちらは表層・内層の両方を出します。
- εr は周波数によって変わります(誘電分散)。FR-4 は 1MHz で 4.6〜4.8、1GHz では 4.2〜4.4 程度まで下がります。データシートの εr がどの周波数で測った値かを必ず確認してください。
- ガラスクロスの織り目に対して配線がどこを通るかでも局所的に εr が変わります(グラスウィーブ効果)。10Gbps を超える差動ペアでは、これがスキューとして無視できなくなります。
代表的な基板材料の値
| 材料 | εr(目安) | 遅延 ps/mm | 100mm あたり |
|---|---|---|---|
| FR-4(標準) | 4.2 〜 4.6 | 6.8 〜 7.2 | 約 690 ps |
| FR-4(高Tg) | 4.1 〜 4.5 | 6.7 〜 7.1 | 約 680 ps |
| Megtron 6 | 3.6 〜 3.7 | 6.3 〜 6.4 | 約 640 ps |
| Rogers 4350B | 3.48 | 6.2 | 約 620 ps |
| ポリイミド(FPC) | 3.2 〜 3.5 | 6.0 〜 6.2 | 約 610 ps |
| 空気 | 1.0 | 3.34 | 約 334 ps |
現場の暗算では「FR-4 の内層はだいたい 7 ps/mm、表層は 6 ps/mm」と覚えておくと、レビュー中に配線長を見て遅延をすぐ見積もれます。
計算例:DDR のアドレス線の許容スキュー
- 基板は標準的な FR-4 で、スタックアップ表の比誘電率は εr = 4.3。
- この計算機に 4.3 を入れると 6.912 ps/mm。
- タイミングバジェットから、アドレス線間に許されるスキューが 50ps だったとする。
- 50 ps ÷ 6.912 ps/mm = 約 7.2mm。これが配線長の許容差になる。
- 実際にはビアの遅延やパッケージ内配線の差も食うので、基板側の目標は半分の ±3mm 程度に置いておくと安全。
よくある失敗
- 表層と内層が混ざった配線を、長さだけで等長にしてしまう。速度が違うので、長さを揃えても時間は揃いません。層を跨ぐ配線は必ず時間(ps)で揃えます。
- データシートの εr を無条件に使う。低い周波数で測った大きめの値を使うと遅延を過大評価し、必要のない蛇行配線を増やすことになります。
- ビアの遅延を無視する。1.6mm 厚の基板を貫通するビアは 10ps 前後の遅延を持ちます。層変更が多い配線では効いてきます。
- 製造ロットによる εr のばらつきを見ない。同じ FR-4 でもメーカ・ロットで ±5% 程度は動きます。遅延にすると ±2.5% です。
よくある質問
FR-4 の伝搬遅延は結局いくつで計算すればいいですか?
内層なら 6.9〜7.0 ps/mm、表層なら 6.0〜6.1 ps/mm を出発点にしてください。厳密さが要る設計では、基板メーカに実際のスタックアップでの実効誘電率を出してもらうのが確実です。同じ「FR-4」でも樹脂とガラスの比率で εr が変わります。
なぜ表層のほうが速いのですか?
マイクロストリップは配線の上側が空気だからです。電界の一部が εr = 1 の空気を通るため、配線全体が感じる実効誘電率が基板の εr より小さくなります。結果として伝搬速度が上がります。逆に、表層はノイズを受けやすく放射もしやすいという欠点があります。
ps/mm と ps/inch はどう換算しますか?
1 inch = 25.4mm なので 25.4 倍です。FR-4 内層の 6.9 ps/mm は約 175 ps/inch にあたります。海外の資料は inch 系が多く、「150 ps/inch(表層)/180 ps/inch(内層)」という覚え方をよく見かけます。
誘電率が低い基板を使うメリットは?
遅延が減るので同じタイミングバジェットでより長く配線できます。加えて誘電正接(tanδ)も小さい材料が多く、高周波での損失が減ります。ただし材料費は FR-4 の数倍になるため、必要な速度が出せる範囲で一番安い材料を選ぶことになります。
参考にした規格・資料
- IPC-2141A — 制御インピーダンス基板と高速配線の設計指針。伝搬遅延と実効誘電率の扱い。
- IPC-4101 — 基材の仕様規格。材料ごとの誘電率・Tg の区分。
- Howard Johnson, "High-Speed Digital Design" — 伝搬遅延とスタックアップの実務的な扱い。
最終更新: 2026-08-29