ビア・スルーホール関連

ビアインダクタンス・寄生容量・円周長の計算機です。 パターン配線用のスルーホールビアにも誘導成分や容量成分が生じます。 ビアの円周長は、ビアがどれくらいのパターン幅に相当するかの目安にしてください。

ビア・スルーホール関連の説明図
mm
mm
mm
インダクタンス
1.299nH
寄生容量0.382 pF
ビアの円周長0.942 mm
詳細設定 — クリアランスホール直径・基板の誘電率
mm
εr
計算履歴
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計算式

ビアインダクタンス: L = 2×h×[ln(4h/d)+1] [nH]
(h:ビア高さ[mm]、d:ビア径[mm])
寄生容量: C = 0.55×εr×T×d/(D-d) [pF]

設計のポイント

ビア(スルーホール)は層間接続に必須ですが、インダクタンスと容量の寄生素子を持ちます。GHz帯ではビアのインピーダンス不連続が信号劣化の原因になります。

高速設計でのビア対策:
• バックドリルで不要スタブを除去→スタブ共振を防止
• ビア径を小さくしインダクタンスを低減
• GNDビアをシグナルビアの近くに配置→参照グランドを確保

円周長の出力値は、ビアが何mm幅パターンに相当するかの目安として大電流ビア設計に役立ちます。

こんなときに使います

デカップリングコンデンサの配置を詰めるときや、高速信号が層を跨ぐ箇所の影響を見るときに使います。ビア 1 本のインダクタンスがどれだけ効くかは、電源のインピーダンス設計で最も見落とされやすいところです。

なぜビアのインダクタンスが問題になるのか

デカップリングコンデンサの効きは、コンデンサ本体の ESL だけでは決まりません。パッド → ビア → 内層の電源/GND 面までの経路すべてのインダクタンスが直列に入ります。

1.6mm 厚の基板を貫通するビアは約 1.3nH です。0402 のコンデンサの ESL が 0.5nH 程度であることを考えると、ビア 2 本(電源側と GND 側)で本体の 5 倍以上のインダクタンスが付くことになります。コンデンサを高価な低 ESL 品に変えても、ビアの引き回しが悪ければ意味がありません。

共振周波数への効き方

コンデンサが容量として働くのは自己共振周波数までで、それより上は誘導性になります。合計インダクタンスを L、容量を C とすると共振周波数は f = 1/(2π√(LC)) です。

100nF のコンデンサ単体(ESL 0.5nH)なら約 22MHz。ここにビア 2 本ぶんの 2.6nH が加わって 3.1nH になると、約 9MHz まで下がります。狙っていた帯域の 3 分の 1 です。

インダクタンスを減らす一番効く手はビアを短くすることです。式のとおり L は高さにほぼ比例します。電源/GND 面を表層の近くに置くスタックアップにすれば、それだけで効果があります。

典型的な値

FR-4、ランド径 0.6mm、クリアランス径 1.2mm、εr = 4.3 での計算値。
板厚(ビア長)ビア径インダクタンス寄生容量
1.6mmφ0.3mm約 1.30 nH約 0.38 pF
1.6mmφ0.2mm約 1.43 nH約 0.38 pF
0.8mmφ0.3mm約 0.54 nH約 0.19 pF
2.4mmφ0.3mm約 2.14 nH約 0.57 pF

ビア同士の相互インダクタンス

この計算機が出すのはビア1本ぶんの自己インダクタンスです。実際の電源経路には電源側とGND側の少なくとも2本のビアがあり、電流はこの2本をペアにしたループとして流れます。近接した2本のビアの間には磁気的な結合(相互インダクタンス M)が生じるため、ループ全体のインダクタンスは自己インダクタンスの単純な合計にはなりません。

電流の向きによって効き方が逆になる点に注意してください。電源ビアとGNDビアのように、行きと帰りで電流が逆向きに流れるペア(ループ)では、2本を近づけるほど M が大きくなり、打ち消し合いが強く働いてループインダクタンスが下がります。デカップリングコンデンサのビアを電源・GNDともに最短・最近接で配置すべき理由はここにあります。

一方、同じ電源ネットのビアを本数だけ増やして並列にする場合(同じ向きに電流が流れるペア)は逆に働きます。近づけるほど M が加算方向に効き、単純に本数で割った理想値(2本で半分など)まで下がりません。前節で触れた「2本にしても半分にはならない、効かせるには離して配置する必要がある」現象はこちらのケースです。

同じ電流が流れるビア同士は離し、行きと帰りが逆向きのペアは近づける――これが相互インダクタンスをうまく使う原則です。パスコンの配置では特に後者が重要で、電源ビアだけでなくGNDビアの位置・本数にも同じだけ気を配ってください。

減らすための手

  • ビアを短くする。電源/GND 面を表層直下に置く。これが最も効きます。
  • ビアを増やす。ただし 2 本にしても半分にはなりません。近接したビアは磁気的に結合するため、実際は 6〜7 割にしかなりません。効かせるには離して配置する必要があります。
  • パッドからビアまでの配線をなくす。パッド内にビアを置く(ビアインパッド)か、パッドに直付けします。0.5mm の引き出し配線でも 0.3nH 前後増えます。
  • 電源とGNDのビアを近づける。往復の電流が逆向きに流れるので、近いほど磁束が打ち消し合ってループインダクタンスが下がります。
  • パスコンではGNDビアの位置と本数を電源ビアと同格で扱う。電源側だけビアを増やしてGND側を1本のまま放置すると、GND側のインダクタンスがボトルネックになり、電源側の対策が生きません。GNDビアは電源ビアの直近かつ複数本を基本にし、まとまったGNDプレーンへ最短で落とします。

よくある失敗

  • コンデンサの ESL だけ見て選定する。実装後のインダクタンスはビアと配線で決まります。データシートの ESL 0.3nH と 0.5nH の差は、ビア 1.3nH の前では誤差です。
  • 「とりあえずビアを2本」で済ませる。結合があるので効果は限定的です。本当に効かせたいなら間隔を空けるか、そもそもビアを短くします。
  • 寄生容量を無視する。高速差動信号では、ビアの容量がインピーダンスの落ち込みとして見えます。10Gbps を超えると、使わないランド(スタブ)を削るバックドリルが必要になることがあります。

よくある質問

ビアを2本にするとインダクタンスは半分になりますか?
なりません。近接した2本のビアは磁気結合するため、実際には 6〜7 割程度までしか下がりません。並列の効果をきちんと出すには、ビア同士を板厚と同程度以上離す必要があります。
寄生容量はどんなときに気にすればいいですか?
高速差動信号が層を跨ぐ箇所です。ビアの容量はインピーダンスの局所的な低下として現れ、反射を生みます。数 Gbps までは実用上問題になりませんが、10Gbps を超えると効いてきます。逆に電源ビアでは、容量はむしろ有利に働きます。
ビアインパッドは常に使うべきですか?
インダクタンスの面では有利ですが、はんだがビアに吸われるためビアを樹脂で埋めて蓋をする(フィルド&キャップ)工程が必要で、費用が上がります。BGA の下など物理的に引き出せない場所や、高速電源で本当に必要な箇所に絞るのが現実的です。
バックドリルとは何ですか?
貫通ビアのうち、信号が実際に通らない余った部分(スタブ)を裏側から削り取る加工です。スタブは共振して信号を減衰させるため、10Gbps を超える設計では有効です。追加工程なので費用は上がります。
電源ビアとGNDビア、どちらを優先して増やすべきですか?
両方です。ループインダクタンスは電源側とGND側の直列和に近い形で効くため、片方だけ強化しても改善は頭打ちになります。特にGND側を1本のまま放置する設計をよく見かけますが、GNDビアも電源ビアと同じ本数・同じ近さで配置してください。

参考にした規格・資料

  • IPC-2221B — ビアの寸法とランド設計の基本。
  • Howard Johnson, "High-Speed Digital Design" — ビアのインダクタンスとデカップリングの実装。
  • Montrose, "EMC and the Printed Circuit Board" — ビアの寄生成分と EMI への影響。

最終更新: 2026-08-30