mil と mm が混在するデータシートを、どう読むか
基板メーカのルールは mm、部品のフットプリントは mil、銅箔厚は oz。同じ図面に3つの単位系が混ざるのが基板設計の日常です。換算そのものは簡単ですが、どこで丸めるかを間違えるとルール違反や部品が載らない基板になります。
mil は 1/1000 インチ
mil(ミル)は 1/1000 インチで、1mil = 0.0254mm です。逆は 1mm = 39.37mil。米国の基板設計で長く使われてきた単位で、Eagle や Altium など CAD のデフォルト設定、古いフットプリント、米国系メーカのデータシートに残っています。thou(サウ)と呼ぶ地域もあります。
基板設計で出会う値は、だいたい決まった数字です。4mil ≒ 0.1mm、6mil ≒ 0.15mm、8mil ≒ 0.2mm、10mil = 0.254mm、20mil ≒ 0.5mm、50mil = 1.27mm、100mil = 2.54mm。この対応を頭に入れておくと、データシートを開くたびに換算せずに済みます。
紛らわしいのが「ミリ」です。mil(ミル)と mm(ミリ)を口頭で取り違えると 40 倍違います。図面のやり取りで「ミリ」と言われたら、どちらかを確かめる習慣をつけてください。µm(ミクロン)も混ざります。1mil = 25.4µm なので、銅箔厚 35µm は約 1.4mil です。
| mil | mm | どこで出てくるか |
|---|---|---|
| 3mil | 0.076mm | 細線・細クリアランスの限界付近 |
| 4mil | 0.102mm | 「4/4 ルール」の線幅・クリアランス |
| 5mil | 0.127mm | 一般的な最小線幅・クリアランス |
| 6mil | 0.152mm | 同上(余裕を持たせた設計) |
| 8mil | 0.203mm | 一般信号線の標準的な幅 |
| 10mil | 0.254mm | 電源線・レジスト開口の余裕など |
| 12mil | 0.305mm | 小径ビアの穴径(0.3mm) |
| 20mil | 0.508mm | 0.5mm ピッチ QFP・BGA |
| 50mil | 1.27mm | SOIC のピンピッチ |
| 100mil | 2.54mm | DIP・ピンヘッダのピッチ |
「4mil = 0.1mm」と丸めてよいか
4mil は正確には 0.1016mm です。基板メーカの最小線幅が「0.1mm」で、設計を 4mil で描いたなら 0.1016mm ≧ 0.1mm でルールは満たします。逆に、メーカが「4mil」と言っていて設計を 0.1mm で描くと、0.1mm < 0.1016mm でわずかに違反します。
実用上、0.0016mm(1.6µm)の差をメーカが問題にすることはまずありません。しかし DRC(デザインルールチェック)は機械的に判定します。CAD のルールを 0.1mm にして 4mil で描いた線は通り、CAD のルールを 4mil にして 0.1mm で描いた線はエラーになります。
対策は簡単で、メーカのルールをそのままの単位で CAD に入れることです。mm で来たら mm で、mil で来たら mil で。自分で換算して丸めた瞬間に、どちらかの方向にずれます。
5mil は 0.127mm で、「0.125mm」でも「0.13mm」でもありません。メーカの表に「0.127mm」と書いてあれば mil ベースのルール、「0.125mm」なら mm ベースのルールだとわかります。
部品のピッチはどちらの単位系か
SOIC のピッチ 1.27mm は 50mil、DIP の 2.54mm は 100mil で、これらはインチ系の部品です。一方で QFP の 0.5mm、0.65mm、0.8mm や BGA の 0.8mm、1.0mm はミリ系で、mil にすると 19.69mil、25.59mil のような端数になります。
問題になるのは、ピン数の多い部品でピッチを換算して丸めたときです。0.5mm ピッチを 20mil(0.508mm)と置いて 100 ピンの QFP を作ると、端のピンは 100 × 0.008 = 0.8mm、片側 50 ピンでも 0.4mm ずれます。ピン幅 0.25mm に対して 0.4mm のずれは、ランドがピンから完全に外れる量です。
フットプリントを作るときは、部品の図面と同じ単位系で作ります。ピッチを絶対座標で置く(ピン n の位置 = n × ピッチ)のではなく、CAD のピン配置機能で正確なピッチを指定してください。既存のライブラリを流用するときも、原点からの累積で寸法を確認します。
- グリッド。インチ系部品を 0.635mm(25mil)グリッドで、ミリ系部品を 0.5mm グリッドで置くと、両方を同じグリッドに乗せられません。配線グリッドは 0.05mm や 0.025mm のような細かいものにして、部品は各自のピッチで置きます。
- 穴径。ドリルはメーカによって mm の 0.05mm 刻み(0.3、0.35、0.4…)か、インチのナンバードリル(#60 = 1.016mm など)です。中途半端な穴径を指定すると、メーカ側で近い径に置き換えられます。
- 基板厚。1.6mm は 0.063inch(63mil)、0.8mm は 31mil、1.0mm は 39mil です。米国のカードエッジコネクタは 0.062inch 用で、1.6mm でそのまま合います。
oz は「重さ」で厚みを表す
銅箔厚の oz(オンス)は、1 平方フィートあたりの銅の重さです。1oz = 28.35g の銅を 1 平方フィート(929cm²)に広げると厚み 34.8µm になるので、1oz ≒ 35µm ≒ 1.4mil。2oz で 70µm、0.5oz で 18µm です。
注意点は、外層の銅箔はめっきで厚くなることです。1oz の銅箔で始めても、スルーホールめっきで 20〜25µm が乗り、最終的には 50〜60µm になります。電流容量や線幅の計算では、メーカの「仕上がり銅厚」を使ってください。内層はめっきがないので 1oz なら 35µm のままです。
日本の基板メーカの仕様書には「銅箔厚 18µm / 35µm / 70µm」と µm で書いてあることが多く、海外メーカは「0.5oz / 1oz / 2oz」です。どちらも同じものを指しています。
混在を避けるための実務的なルール
- CAD の表示単位は mm に統一し、ルールは来た単位のまま入れる。表示と入力の単位は別に設定できる CAD がほとんどです。
- 換算値を図面に書くときは元の値を併記する。「1.27(50mil)」「0.254(10mil)」のように書いておくと、次に見た人が丸めの由来を判断できます。
- フットプリントは部品図面の単位系で作る。ピッチの累積誤差を出さないため。
- メーカへの指定は mm で、ルールぎりぎりの値は避ける。最小 0.1mm のメーカに 0.1mm で描かず、0.12mm や 0.15mm にしておけば、mil/mm のどちらで解釈されても通ります。
- 銅厚は「仕上がり」で聞く。oz の値は出発点の箔厚で、めっき後の厚みではありません。
よくある質問
1mil は何 mm ですか。
基板メーカの「最小線幅 0.1mm」に対して 4mil で設計してよいですか。
0.5mm ピッチの部品を mil で描くとどうなりますか。
1oz の銅箔で線幅を計算したら、実物と抵抗が合いません。
参考にした規格・資料
- IPC-2221B — 基板設計の一般標準。導体幅・間隔の要件
- IPC-7351B — 表面実装部品のランドパターン標準(ミリ系)
- JEDEC MS-012 / MO-153 ほか — SOIC・TSSOP などパッケージ外形図。ピッチの定義
- IPC-4562 — プリント基板用銅箔の仕様。oz と厚みの対応