反転増幅回路の入力インピーダンスと、ゲイン誤差の出どころ

反転増幅回路は仮想接地のおかげで計算が簡単ですが、その仮想接地が「入力インピーダンス = Rin」を意味することを忘れると、センサをつないだ瞬間にゲインが半分になります。

最終更新: 2026-09-14 オペアンプ反転増幅入力インピーダンスゲイン誤差

入力インピーダンスは Rin。それ以上でも以下でもない

反転増幅回路では、オペアンプの負帰還によって反転入力端子が GND と同じ電位(仮想接地)に保たれます。信号源から見ると、Rin の先が GND につながっているのと同じで、入力インピーダンスは Rin そのものです。オペアンプの入力インピーダンスがいくら高くても関係ありません。

出力抵抗 Rs を持つ信号源をつなぐと、Rs が Rin に直列に加わり、ゲインは −Rf ÷ (Rin + Rs) に下がります。Rs = 10kΩ のセンサに Rin = 10kΩ の回路をつなぐと、ゲインは設計値の半分です。誤差を 1% 以内にするには Rin ≧ 100 × Rs が必要で、Rs = 10kΩ なら Rin = 1MΩ。それだけ Rin を大きくすると、後述のノイズと浮遊容量の問題が出ます。

信号源のインピーダンスが高い(数 kΩ 以上)なら、反転ではなく非反転増幅回路を使います。非反転の入力インピーダンスはオペアンプの入力インピーダンス(CMOS で 10¹² Ω 以上)で、信号源の負担になりません。反転を選ぶのは、信号源が低インピーダンス(オペアンプの出力や DAC など)のとき、複数の入力を加算したいとき、入力の同相電圧範囲の制約を避けたいときです。

反転増幅回路と、信号源の出力抵抗出力抵抗 Rs を持つ信号源が Rin を通してオペアンプの反転入力に入り、Rf で帰還する回路図。反転入力は仮想接地なので、信号源から見た入力インピーダンスは Rin だけであることを矢印で示す。 仮想接地の先は GND。だから入力インピーダンスは Rin 信号源の Rs は Rin に直列に入り、そのぶんゲインが下がる ~ Rs 信号源 Rin + Vout Rf 仮想接地(≒ 0V) ここから見たインピーダンス = Rin Rs = 10kΩ、Rin = 10kΩ、Rf = 100kΩ 設計ゲイン −10 のつもりが −100 ÷ (10 + 10) = −5。半分 誤差 1% 以内にするには Rin ≧ 100 × Rs → Rin = 1MΩ、Rf = 10MΩ 浮遊容量とノイズで現実的でない 結論 Rs が数 kΩ 以上なら非反転か、前段にバッファ
図1:反転増幅回路の入力インピーダンスは Rin。信号源の出力抵抗 Rs が Rin に直列に入り、ゲインが −Rf ÷ (Rin + Rs) に下がる。

有限の開ループゲインによる誤差

理想のオペアンプは開ループゲイン A が無限大ですが、実物は直流で 10⁵〜10⁷、周波数とともに −20dB/decade で落ちます。ゲインが有限だと、閉ループゲインは設計値の 1 ÷ (1 + 1 ÷ (A·β)) 倍になります。β は帰還率で、反転増幅では β = Rin ÷ (Rin + Rf)、1 ÷ β はノイズゲイン = 1 + Rf ÷ Rin です。

ゲイン −10(Rf = 100kΩ、Rin = 10kΩ)なら、ノイズゲインは 11。GBW = 1MHz のオペアンプは 10kHz で A = 100 なので、ループゲイン A·β = 100 ÷ 11 ≒ 9。誤差は 1 ÷ (1 + 9) = 10% です。1kHz なら A = 1000、誤差 1.1%。100Hz で 0.1%。

つまり、GBW = 1MHz のオペアンプでゲイン 10 の回路を作ると、1kHz で既に 1% の誤差があります。「帯域は GBW ÷ ノイズゲイン = 91kHz」という −3dB 帯域の計算は、そこで 30% 落ちているという意味で、精度が要る帯域はその 1/100 以下です。

精度を保ちたい周波数で誤差 0.1% 以内にするには、その周波数で A·β ≧ 1000、つまり A ≧ 1000 × ノイズゲインが必要です。ゲイン 10 で 10kHz なら A ≧ 11,000、GBW ≧ 110MHz。汎用オペアンプでは無理で、高速オペアンプの領域です。

ゲイン −10(ノイズゲイン 11)、GBW = 1MHz のときの開ループゲインによる誤差
周波数開ループゲイン Aループゲイン A·βゲイン誤差
100Hz10,000909−0.11%
1kHz1,00091−1.1%
10kHz1009.1−9.9%
91kHz111−29%(−3dB)

抵抗の許容差、オフセット、バイアス電流

抵抗の許容差。ゲインは Rf ÷ Rin なので、±1% の抵抗 2 本で最悪 ±2%。0.1% にすれば ±0.2%。分圧と同じです。温度係数も比で効くので、同じシリーズの抵抗を使います。

入力オフセット電圧。Vos はノイズゲイン倍されて出力に出ます。Vos = 1mV、ノイズゲイン 11 で出力 11mV。ゲイン 10 で入力換算 1.1mV。入力信号が 10mV なら 11% の誤差です。精度が要るなら Vos の小さいオペアンプ(100µV 以下、チョッパ型なら 5µV 以下)を選びます。

入力バイアス電流。反転入力に流れる Ib は Rf ∥ Rin を流れ、その電圧降下がオフセットになります。バイポーラ入力のオペアンプ(Ib = 100nA)と Rf = 100kΩ なら 100nA × 9.1kΩ ≒ 0.9mV。非反転入力に Rf ∥ Rin と同じ抵抗を入れて GND に落とすと、両入力で同じ電圧降下が起きて相殺されます(オフセット電流ぶんは残る)。CMOS や JFET 入力(Ib = 数 pA)ではこの抵抗は不要で、入れるとかえって熱雑音が増えます。

帰還抵抗の浮遊容量と、帯域の上限

Rf に並列に、パッドや配線の浮遊容量 Cf が 0.2〜1pF 入ります。これが Rf と作る極 f = 1 ÷ (2π·Rf·Cf) より上でゲインが落ちます。Rf = 100kΩ、Cf = 0.5pF で 3.2MHz。Rf = 1MΩ なら 320kHz で、オペアンプの帯域より先に浮遊容量で帯域が決まります。

逆に、反転入力端子の対 GND 容量(オペアンプの入力容量 + 配線で 5〜10pF)は、Rin ∥ Rf と極を作り、帰還のループに位相遅れを入れて発振の原因になります。フォトダイオードのように大きな容量(数十〜数百 pF)を持つ信号源では顕著で、Rf に意図的に数 pF の Cf を入れて補償します。

これらの理由から、Rf は 1kΩ〜100kΩ の範囲に収めるのが実務的です。1kΩ 以下だとオペアンプの出力が Rf + Rin を駆動する負担が大きく、100kΩ 以上だと浮遊容量とノイズ(100kΩ で 40nV/√Hz)が効いてきます。

計算機での確認

反転増幅回路の計算機は Rf と Rin からゲインを出します。設計の手順としては、まず信号源のインピーダンスから Rin の下限(Rs の 100 倍)を決め、Rf の上限(100kΩ 程度)との間でゲインが取れるかを見ます。取れなければ非反転にするか、2 段に分けます。

次に、精度が要る周波数でのループゲインを GBW から計算し、誤差が許容内かを確認します。最後にオフセットとバイアス電流を入力換算して、信号の最小値と比べます。

よくある質問

反転増幅回路の入力インピーダンスを上げるにはどうすればよいですか。
Rin を大きくするしかなく、それに応じて Rf も大きくなります。Rf が 100kΩ を超えると浮遊容量とノイズの問題が出るので、高い入力インピーダンスが必要なら非反転増幅回路か、前段にボルテージフォロワを置いてください。
非反転入力に入れる抵抗(Rf ∥ Rin)は必ず必要ですか。
バイポーラ入力のオペアンプで、バイアス電流による誤差を減らしたいときだけです。CMOS・JFET 入力ではバイアス電流が pA 級なので効果がなく、抵抗の熱雑音が加わるぶん不利です。入れる場合はノイズ対策として並列にコンデンサを置きます。
ゲイン 100 を 1 段で取ってよいですか。
GBW ÷ 101 が帯域になるので、GBW = 1MHz なら −3dB 帯域は 10kHz、1% 精度は 100Hz までです。それで足りなければ、ゲイン 10 × 10 の 2 段にすると、各段の帯域は 91kHz、1% 精度は 1kHz まで伸びます。オフセットは 1 段目のものが 100 倍されるので、1 段目に低オフセットのオペアンプを使います。
単電源で反転増幅回路を使えますか。
非反転入力を GND ではなく中点電圧(Vcc/2)にバイアスすれば使えます。ただし入力信号も中点を基準にするか、交流結合が必要です。出力もレール・ツー・レールでないと振幅が取れないので、単電源用のオペアンプを選びます。

参考にした規格・資料

  • Horowitz & Hill, The Art of Electronics — オペアンプ回路の誤差要因
  • Analog Devices, Op Amp Applications Handbook — ループゲインと閉ループ誤差、バイアス電流の補償
  • 各オペアンプメーカのデータシート — GBW、Vos、Ib、入力容量

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