反転増幅回路の入力インピーダンスと、ゲイン誤差の出どころ

反転増幅回路は仮想接地のおかげで計算が簡単ですが、それが「入力インピーダンス = Rin」を意味することを忘れると、センサをつないだ瞬間にゲインが半分になります。

最終更新: 2026-10-28 オペアンプ反転増幅入力インピーダンスゲイン誤差

入力インピーダンスは Rin

反転増幅回路では、負帰還によって反転入力が GND と同じ電位(仮想接地)に保たれます。信号源から見ると Rin の先が GND につながっているのと同じで、入力インピーダンスは Rin そのものです。

出力抵抗 Rs の信号源では、Rs が Rin に直列に加わり、ゲインは −Rf ÷ (Rin + Rs) に下がります。Rs = 10kΩ に Rin = 10kΩ なら、ゲインは設計値の半分です。誤差 1% 以内には Rin ≧ 100 × Rs(Rin = 1MΩ)が要ります。

信号源のインピーダンスが数 kΩ 以上なら非反転増幅回路を使います。入力インピーダンスはオペアンプの入力インピーダンス(CMOS で 10¹² Ω 以上)です。反転を選ぶのは、信号源が低インピーダンス(オペアンプの出力や DAC など)か、複数の入力を加算したいときです。

抵抗と増幅回路による信号の調整
抵抗と増幅回路による信号の調整。概念を表すAI生成イラストです。実際の回路・条件は本文の図と説明を参照してください。
反転増幅回路と、信号源の出力抵抗出力抵抗 Rs を持つ信号源が Rin を通してオペアンプの反転入力に入り、Rf で帰還する回路図。反転入力は仮想接地なので、信号源から見た入力インピーダンスは Rin だけであることを矢印で示す。 仮想接地の先は GND。だから入力インピーダンスは Rin 信号源の Rs は Rin に直列に入り、そのぶんゲインが下がる ~ Rs 信号源 Rin − + Vout Rf 仮想接地(≒ 0V) ここから見たインピーダンス = Rin Rs = 10kΩ、Rin = 10kΩ、Rf = 100kΩ 設計ゲイン −10 のつもりが −100 ÷ (10 + 10) = −5。半分 誤差 1% 以内にするには Rin ≧ 100 × Rs → Rin = 1MΩ、Rf = 10MΩ 浮遊容量とノイズで現実的でない 結論 Rs が数 kΩ 以上なら非反転か、前段にバッファ
図1:Rs が Rin に直列に入り、ゲインが −Rf ÷ (Rin + Rs) に下がる。

有限の開ループゲインによる誤差

実物の開ループゲイン A は直流で 10⁵〜10⁷、周波数とともに −20dB/decade で落ちます。閉ループゲインのずれは約 1 ÷ (A·β) で、β は帰還率(β = Rin ÷ (Rin + Rf))、1 ÷ β はノイズゲイン = 1 + Rf ÷ Rin です。このずれは位相の遅れを含み、振幅の低下は −3dB 周波数の近くまで小さいままです。

ゲイン −10(Rf = 100kΩ、Rin = 10kΩ)ならノイズゲインは 11。GBW = 1MHz では 10kHz で A = 100、A·β ≒ 9 で、ずれは約 11%、1kHz で約 1.1%、100Hz で約 0.11% です。GBW ÷ ノイズゲイン = 91kHz(−3dB 帯域)では A·β = 1 で、振幅が 29% 落ちます。精度が要る帯域は、その 1/100 以下です。

0.1% 以内には A·β ≧ 1000 が要り、ゲイン 10 で 10kHz なら GBW ≧ 110MHz。汎用オペアンプでは無理です。

GBW = 1MHz、ゲイン −10(ノイズゲイン 11)のずれ
周波数開ループゲイン Aループゲイン A·βゲインのずれ ≒ 1 ÷ (A·β)
100Hz10,0009090.11%
1kHz1,000911.1%
10kHz1009.111%
91kHz111振幅 −29%(−3dB)
開ループゲインとノイズゲインの差周波数(100Hz〜1MHz)とゲインを対数軸にしたグラフ。GBW = 1MHz の開ループゲイン A は −20dB/decade で下がり、ノイズゲイン 11 の水平線と 91kHz で交わる。1kHz で A·β = 91、10kHz で 9.1。 開ループゲインとノイズゲインの差が、ループゲイン A·β GBW = 1MHz、ゲイン −10(ノイズゲイン 11) 100Hz 1kHz 10kHz 100kHz 1MHz 1 10 100 1,000 10,000 ゲイン(倍) ノイズゲイン 11 開ループゲイン A 1kHz:A·β = 91 10kHz:A·β = 9.1 91kHz:A·β = 1(−3dB) 差が大きいほど 閉ループゲインは 設計値に近い。 精度が要る帯域 −3dB 帯域の 1/100 以下。
図2:A とノイズゲイン 11 の差がループゲイン A·β。

抵抗の許容差、オフセット、バイアス電流

抵抗の許容差。ゲインは Rf ÷ Rin なので、±1% の抵抗 2 本で最悪 ±2%(0.1% なら ±0.2%)です。同じシリーズなら温度係数も比でそろいます。

入力オフセット電圧 Vos はノイズゲイン倍されて出ます。Vos = 1mV、ノイズゲイン 11 なら出力で 11mV、ゲイン 10 の入力換算で 1.1mV で、10mV の信号なら 11% の誤差です。精度が要るなら Vos の小さいもの(100µV 以下、チョッパ型なら 5µV 以下)を選びます。

入力バイアス電流 Ib は Rf ∥ Rin を流れて電圧降下を作ります。バイポーラ入力(Ib = 100nA)で Rf = 100kΩ なら 100nA × 9.1kΩ ≒ 0.9mV です。非反転入力に同じ Rf ∥ Rin の抵抗を GND へ入れると、降下が両入力でそろって相殺されます(オフセット電流ぶんは残る)。CMOS や JFET 入力(Ib = 数 pA)では不要です。

オフセット電圧とバイアス電流の入り方反転増幅回路。非反転入力側に Rf ∥ Rin の抵抗と入力オフセット電圧 Vos を置き、反転入力にバイアス電流 Ib が流れ込む。Vos は出力で 11mV、Ib は 0.9mV のオフセットになる。 Vos はノイズゲイン倍され、Ib は抵抗で電圧に変わる Rin = 10kΩ、Rf = 100kΩ(ノイズゲイン 11)の例 入力 Rin − + Rf Vout Rf ∥ Rin ± Vos Ib 入力オフセット電圧 Vos 1mV × ノイズゲイン 11 = 出力で 11mV ゲイン 10 の入力換算で 1.1mV 入力バイアス電流 Ib 100nA × 9.1kΩ ≒ 0.9mV +入力の抵抗 Rf ∥ Rin 両入力の電圧降下がそろって相殺 (オフセット電流ぶんは残る)
図3:Vos はノイズゲイン倍で出力に出る。Ib の電圧降下は+入力の同じ抵抗で相殺する。

帰還抵抗の浮遊容量と、帯域の上限

Rf に並列の浮遊容量 Cf(0.2〜1pF)は、f = 1 ÷ (2π·Rf·Cf) より上でゲインを落とします。Rf = 100kΩ、Cf = 0.5pF で 3.2MHz、Rf = 1MΩ なら 320kHz です。

反転入力の対 GND 容量(5〜10pF)が Rin ∥ Rf と作る極は、位相遅れで発振の原因になります。数十〜数百 pF のフォトダイオードなら、Rf に数 pF の Cf を入れて補償します。

Rf は 1kΩ〜100kΩ が実務的です。1kΩ 以下では出力の負担が大きく、100kΩ 以上では浮遊容量とノイズ(100kΩ で 40nV/√Hz)が効きます。

計算機での確認

反転増幅回路の計算機は Rf と Rin からゲインを出します。Rin の下限(Rs の 100 倍)と Rf の上限(100kΩ 程度)でゲインが取れなければ、非反転か 2 段にします。そのうえで、精度が要る周波数のループゲインと入力換算のオフセットを確かめます。

よくある質問

反転増幅回路の入力インピーダンスを上げるにはどうすればよいですか。
Rin を大きくするしかなく、Rf も大きくなります。Rf が 100kΩ を超えると浮遊容量とノイズが問題になるので、非反転増幅回路か前段のボルテージフォロワを使います。
非反転入力に入れる抵抗(Rf ∥ Rin)は必ず必要ですか。
バイポーラ入力でバイアス電流の誤差を減らしたいときだけです。CMOS・JFET 入力では効果がなく、熱雑音が増えます。
ゲイン 100 を 1 段で取ってよいですか。
GBW = 1MHz なら 1 段(GBW ÷ 101)で −3dB 帯域は 10kHz、1% 精度は 100Hz までです。ゲイン 10 × 10 の 2 段にすると、各段の帯域は 91kHz、1% 精度は 1kHz まで伸びます。1 段目は低オフセットのものにします。
単電源で反転増幅回路を使えますか。
非反転入力を中点電圧(Vcc/2)にバイアスすれば使えますが、入力信号も中点基準か交流結合にします。

参考にした規格・資料

  • Horowitz & Hill, The Art of Electronics — オペアンプ回路の誤差要因
  • Analog Devices, Op Amp Applications Handbook — ループゲインと閉ループ誤差、バイアス電流の補償
  • 各オペアンプメーカのデータシート — GBW、Vos、Ib、入力容量

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