LEDの電流制限抵抗を、ばらつき込みで決める
電流制限抵抗は R = (Vcc − Vf) ÷ I で求められますが、公称値だけでは電流の範囲は決まりません。電源・Vf・抵抗のばらつきを重ね、必要な明るさと上限電流を両立できるか確認します。
Vf は「典型値」で、部品ごとに違う
データシートのVfには測定電流と温度の条件があります。ここでは白色LEDのVfを2.8〜3.4Vと仮定して計算します。この範囲は特定部品の保証値ではありません。採用する型番の最小・最大値、温度特性、電流―電圧曲線を確認し、典型値だけを保証範囲として扱わないようにします。
設計では、電流が最大になる条件で Vf の最小値、最小になる条件で最大値を使います。
最悪条件で電流は何倍になるか
5V 電源で白色 LED(Vf 典型 3.0V、範囲 2.8〜3.4V)を 10mA で点けると、典型値で R = (5 − 3.0) ÷ 0.01 = 200Ω です。電源 ±5%、抵抗 ±1% なら、電流は電源が高く Vf が低く抵抗が小さいとき最大で (5.25 − 2.8) ÷ 198 = 12.4mA、逆のとき最小で (4.75 − 3.4) ÷ 202 = 6.7mA。設計値 10mA に対して 6.7〜12.4mA、およそ 2 倍の幅です。
3.3V(±3%)から公称30Ω(±1%)で駆動する例では、最大電流の近似は (3.399 − 2.8) ÷ 29.7 ≈ 20.2mAです。最小側は3.201Vが仮定したVf最大3.4Vを下回ります。固定Vfモデルでは0mAとしますが、実際のLEDは非線形なので、正確な微小電流や明るさはこの計算では求められません。
供給電圧の余裕が少ないほどVf変動の影響が大きくなります。電流幅を指定する場合は、次の抵抗範囲を計算して判断します。
| 条件 | 電源 | Vf | 抵抗 | 電流 |
|---|---|---|---|---|
| 設計値 | 5.00V | 3.0V | 200Ω | 10.0mA |
| 最大 | 5.25V | 2.8V | 198Ω | 12.4mA |
| 最小 | 4.75V | 3.4V | 202Ω | 6.7mA |
必要電流から、公称抵抗の成立範囲を求める
抵抗許容差をt、許容する最大電流をImax、必要な最小電流をIminとすると、公称抵抗Rは R ≥ (Vsmax − Vfmin) ÷ [Imax(1 − t)] と R ≤ (Vsmin − Vfmax) ÷ [Imin(1 + t)] の両方を満たす必要があります。電圧差が正である固定Vfモデルの条件です。
5V±5%、Vf=2.8〜3.4V、抵抗±1%、要求7〜12mAなら、下限206.2Ω、上限191.0Ωで範囲が重なりません。200Ωを220Ωに変えるだけでは両条件を満たせません。要求を6〜12mAに緩めると上限222.8Ωとなり、220Ωなら約6.08〜11.25mAです。この仮定内で成立する候補を選び、明るさと温度範囲を別に確認します。
抵抗の定格電力は最大電流で決める
消費電力は I²R で、設計値の 10mA では 0.01² × 200 = 20mW、最大電流の 12.4mA では 0.0124² × 198 = 30mW です。定格はこの最大値で決めます。
パッケージ寸法だけで定格は決まりません。例としてVishay D/CRCW e3の標準動作モードは0402で0.063W、0603で0.10Wですが、同じ寸法でも動作モードやシリーズで変わります。採用部品のデータシートで温度ディレーティング、実装条件、最高使用電圧を確認します。
30mWに対して50%負荷を設計上の目安とするなら、必要定格は60mW以上です。ただし50%は本記事の余裕の取り方で、規格による一律の要求ではありません。周囲温度で低減した後の許容電力と比較してください。
複数の LED で抵抗を共有してはいけない
LED を 2 個並列にして抵抗を 1 本で済ませると、Vf の低いほうに電流が偏ります。Vf が 2.9V と 3.1V なら、0.2V の差は電流にして数倍に相当し、片方だけが明るく、片方はほとんど点きません。温度が上がると Vf がさらに下がり、電流が集中します。並列ならLED 1 個につき抵抗 1 本が原則です。
直列接続では同じ電流が流れ、R = (Vcc − ΣVf) ÷ Iです。赤色LEDを4個、各2.0Vと仮定して12Vから駆動すると公称の抵抗電圧は4Vです。最大・最小のΣVfと電源公差を使い、単灯と同じ上下限計算で成立を確認します。
- GPIO で直接駆動するとき。出力抵抗で電圧が下がるので、VOH の規定(3.3V 系で 2.4V など)で計算し直し、ポートの合計電流の上限も見ます。
- PWM調光。瞬時電流はオン時の電圧と抵抗で決まります。LEDのピーク電流、許容パルス幅とデューティを確認し、抵抗は平均電力に加えてパルス耐量も確認します。
- 逆電圧。逆電圧定格はLEDの型番で確認します。逆方向使用を想定しない部品もあり、「5Vまでは安全」とは扱えません。極性反転があり得るなら保護回路を検討します。
計算機でやること
LED の点灯回路設計は、この記事の計算を実装しています。電源電圧、Vf、抵抗の許容差の最大・最小を入れると、電流の幅と、最悪条件の消費電力、必要な定格が出ます。
よくある質問
抵抗は E24 系列のどれを選べばよいですか。
3.3V で白色 LED を点けたいときはどうすればよいですか。
抵抗を LED のアノード側とカソード側のどちらに入れるべきですか。
抵抗の温度係数は考慮が必要ですか。
参考にした規格・資料
- 各 LED メーカのデータシート — Vf の最小・典型・最大値、ランク分け、電流–Vf 特性、温度係数
- IEC 60115-8 — チップ抵抗(固定表面実装抵抗器)の定格電力とディレーティング曲線
- JEITA RCR-2121 — 半導体デバイスのディレーティングの考え方
- Vishay D/CRCW e3, document 20035 (14-Apr-2026) — 1〜2ページ:標準・拡張動作モードの定格、実装基板と膜温度による制限。