LEDの電流制限抵抗を、ばらつき込みで決める

電流制限抵抗は R = (Vcc − Vf) ÷ I で求められますが、公称値だけでは電流の範囲は決まりません。電源・Vf・抵抗のばらつきを重ね、必要な明るさと上限電流を両立できるか確認します。

最終更新: 2026-10-30 LED抵抗ばらつき設計ディレーティング

Vf は「典型値」で、部品ごとに違う

データシートのVfには測定電流と温度の条件があります。ここでは白色LEDのVfを2.8〜3.4Vと仮定して計算します。この範囲は特定部品の保証値ではありません。採用する型番の最小・最大値、温度特性、電流―電圧曲線を確認し、典型値だけを保証範囲として扱わないようにします。

設計では、電流が最大になる条件で Vf の最小値、最小になる条件で最大値を使います。

LEDの明るさと電流制限抵抗の選定
LEDの明るさと電流制限抵抗の選定。概念を表すAI生成イラストです。実際の回路・条件は本文の図と説明を参照してください。

最悪条件で電流は何倍になるか

5V 電源で白色 LED(Vf 典型 3.0V、範囲 2.8〜3.4V)を 10mA で点けると、典型値で R = (5 − 3.0) ÷ 0.01 = 200Ω です。電源 ±5%、抵抗 ±1% なら、電流は電源が高く Vf が低く抵抗が小さいとき最大で (5.25 − 2.8) ÷ 198 = 12.4mA、逆のとき最小で (4.75 − 3.4) ÷ 202 = 6.7mA。設計値 10mA に対して 6.7〜12.4mA、およそ 2 倍の幅です。

3.3V(±3%)から公称30Ω(±1%)で駆動する例では、最大電流の近似は (3.399 − 2.8) ÷ 29.7 ≈ 20.2mAです。最小側は3.201Vが仮定したVf最大3.4Vを下回ります。固定Vfモデルでは0mAとしますが、実際のLEDは非線形なので、正確な微小電流や明るさはこの計算では求められません。

供給電圧の余裕が少ないほどVf変動の影響が大きくなります。電流幅を指定する場合は、次の抵抗範囲を計算して判断します。

5V / 白色 LED(Vf 2.8〜3.4V)/ R=200Ω±1% / 電源 ±5% での電流の幅
条件電源Vf抵抗電流
設計値5.00V3.0V200Ω10.0mA
最大5.25V2.8V198Ω12.4mA
最小4.75V3.4V202Ω6.7mA
白色 LED の Vf の範囲と、電源電圧の範囲、ヘッドルーム電圧軸の上に、白色 LED の Vf の範囲 2.8〜3.4V、3.3V 電源の範囲 3.2〜3.4V、5V 電源の範囲 4.75〜5.25V を並べた図。Vf 典型値 3.0V からのヘッドルームは、3.3V で 0.3V、5V で 2.0V。 電源から Vf を引いた残り(ヘッドルーム)が電流を決める 白色 LED、Vf 典型値 3.0V からの距離 0V 1V 2V 3V 4V 5V 白色 LED の Vf:2.8〜3.4V 2.8V 3.4V Vf 典型 3.0V 3.3V 電源(±3%) 3.2〜3.4V:Vf の範囲に重なる ヘッドルーム 0.3V 5V 電源(±5%) 4.75V 5.25V ヘッドルーム 2.0V
図1:白色 LED の Vf と電源電圧の関係。

必要電流から、公称抵抗の成立範囲を求める

抵抗許容差をt、許容する最大電流をImax、必要な最小電流をIminとすると、公称抵抗Rは R ≥ (Vsmax − Vfmin) ÷ [Imax(1 − t)] と R ≤ (Vsmin − Vfmax) ÷ [Imin(1 + t)] の両方を満たす必要があります。電圧差が正である固定Vfモデルの条件です。

5V±5%、Vf=2.8〜3.4V、抵抗±1%、要求7〜12mAなら、下限206.2Ω、上限191.0Ωで範囲が重なりません。200Ωを220Ωに変えるだけでは両条件を満たせません。要求を6〜12mAに緩めると上限222.8Ωとなり、220Ωなら約6.08〜11.25mAです。この仮定内で成立する候補を選び、明るさと温度範囲を別に確認します。

電源電圧ごとの LED 電流のばらつき幅白色 LED(Vf 2.8〜3.4V)を 10mA で設計したとき、5V 電源では電流が 6.7〜12.4mA、3.3V 電源では 0〜20mA になることを横棒で示す。 最悪条件で LED 電流はどこまで動くか 白色 LED(Vf 2.8〜3.4V)、設計値 10mA、電源 ±5%(3.3V は ±3%)、抵抗 ±1% 0mA 5mA 10mA 15mA 20mA 設計値 10mA 5V 電源、R = 200Ω ヘッドルーム 2.0V。幅は約 2 倍 6.7mA 12.4mA 3.3V 電源、R = 30Ω 余裕0.3V:電流幅が大きい 0mA 20mA ←固定Vf近似では0 抵抗の成立範囲は電源・Vf・抵抗許容差と要求電流から求める。 3.3V で白色 LED を抵抗駆動するなら、定電流化か電源の変更を考える。
図2:10mA 設計の電流の幅。

抵抗の定格電力は最大電流で決める

消費電力は I²R で、設計値の 10mA では 0.01² × 200 = 20mW、最大電流の 12.4mA では 0.0124² × 198 = 30mW です。定格はこの最大値で決めます。

パッケージ寸法だけで定格は決まりません。例としてVishay D/CRCW e3の標準動作モードは0402で0.063W、0603で0.10Wですが、同じ寸法でも動作モードやシリーズで変わります。採用部品のデータシートで温度ディレーティング、実装条件、最高使用電圧を確認します。

30mWに対して50%負荷を設計上の目安とするなら、必要定格は60mW以上です。ただし50%は本記事の余裕の取り方で、規格による一律の要求ではありません。周囲温度で低減した後の許容電力と比較してください。

複数の LED で抵抗を共有してはいけない

LED を 2 個並列にして抵抗を 1 本で済ませると、Vf の低いほうに電流が偏ります。Vf が 2.9V と 3.1V なら、0.2V の差は電流にして数倍に相当し、片方だけが明るく、片方はほとんど点きません。温度が上がると Vf がさらに下がり、電流が集中します。並列ならLED 1 個につき抵抗 1 本が原則です。

直列接続では同じ電流が流れ、R = (Vcc − ΣVf) ÷ Iです。赤色LEDを4個、各2.0Vと仮定して12Vから駆動すると公称の抵抗電圧は4Vです。最大・最小のΣVfと電源公差を使い、単灯と同じ上下限計算で成立を確認します。

  • GPIO で直接駆動するとき。出力抵抗で電圧が下がるので、VOH の規定(3.3V 系で 2.4V など)で計算し直し、ポートの合計電流の上限も見ます。
  • PWM調光。瞬時電流はオン時の電圧と抵抗で決まります。LEDのピーク電流、許容パルス幅とデューティを確認し、抵抗は平均電力に加えてパルス耐量も確認します。
  • 逆電圧。逆電圧定格はLEDの型番で確認します。逆方向使用を想定しない部品もあり、「5Vまでは安全」とは扱えません。極性反転があり得るなら保護回路を検討します。
LED を並列にしたとき、抵抗を共有する場合と 1 個ずつ付ける場合の電流左は 1 本の抵抗に Vf 2.9V と 3.1V の LED を並列につないだ回路で、Vf の低い LED に電流が偏る。右は LED ごとに抵抗を付けた回路。 抵抗を共有(避ける) Vcc R Vf 2.9V Vf 3.1V 電流が集中 ほとんど流れない Vf の低い LED に電流が偏り、 片方は明るく、片方はほとんど点かない。 LED 1 個に抵抗 1 本 Vcc R Vf 2.9V R Vf 3.1V 電流は各抵抗で決まる。 Vf が違っても偏らない。
図3:抵抗を共有したときの電流の偏り。

計算機でやること

LED の点灯回路設計は、この記事の計算を実装しています。電源電圧、Vf、抵抗の許容差の最大・最小を入れると、電流の幅と、最悪条件の消費電力、必要な定格が出ます。

よくある質問

抵抗は E24 系列のどれを選べばよいですか。
公称値を標準数列に丸めたあと、最小・最大電流を再計算します。抵抗を大きくすると最大電流は下がりますが、最低限の明るさを満たせなくなる場合があります。上の例なら220Ωは6〜12mAの要求内ですが、7〜12mAの要求外です。
3.3V で白色 LED を点けたいときはどうすればよいですか。
この記事の固定Vfモデルでは、3.3Vの例は電圧余裕が少なく電流幅が広くなります。採用LEDの条件で上下限を計算し、成立範囲がなければ供給電圧・LED・駆動方式を変更します。定電流ドライバにも必要な電圧余裕があるため、3.3Vで必ず使えるとは限りません。
抵抗を LED のアノード側とカソード側のどちらに入れるべきですか。
電気的には同じです。配線の都合で決めます(GPIO のシンク駆動ならカソード側など)。
抵抗の温度係数は考慮が必要ですか。
チップ抵抗(±100〜200ppm/℃)で 50℃ 上がっても 0.5〜1% で無視できます。必要なのは電流検出用のシャントや精密な定電流回路です。

参考にした規格・資料

  • 各 LED メーカのデータシート — Vf の最小・典型・最大値、ランク分け、電流–Vf 特性、温度係数
  • IEC 60115-8 — チップ抵抗(固定表面実装抵抗器)の定格電力とディレーティング曲線
  • JEITA RCR-2121 — 半導体デバイスのディレーティングの考え方
  • Vishay D/CRCW e3, document 20035 (14-Apr-2026) — 1〜2ページ:標準・拡張動作モードの定格、実装基板と膜温度による制限。

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