オーバードライブ・ディストーション・ファズの回路:TS808、ケンタ系、RAT、Fuzz Face を ngspice で鳴らして聴き比べる

3 種類の違いは、ダイオードを OP アンプの帰還に入れるか、増幅のあとで GND へつなぐか、トランジスタそのものを飽和させるかです。代表的な 4 つの回路を ngspice で解き、同じギターの音を通して聴き比べられるようにしました。

最終更新: 2026-10-18 オーバードライブディストーションファズクリッピングSPICE

3 種類の違いは、波形を潰す場所と素子

ギターの歪みエフェクトは、どれも「信号を大きく増幅して、決まった電圧で頭打ちにする」回路です。違うのは、頭打ちにする素子と、それを置く場所です。

歪みエフェクトの 3 つの型
オーバードライブディストーションファズ
この記事の回路TS808、ケンタ系RATFuzz Face
潰す素子Si / Ge ダイオードSi ダイオードトランジスタ
置き場所OP アンプの帰還(TS808)、ゲイン段のあとで GND へ(ケンタ系、原音と混ぜる)高利得の増幅段のあとで GND へ2 段の直結増幅そのもの
波形角の丸い台形、原音が残る上下が平らな台形上下で形の違う矩形
多い倍音奇数次奇数次(さらに多い)奇数次と偶数次

下の図は、196Hz(G の音)、0.3V の正弦波を同じピックアップを通して各回路に入れたときの出力です。ダイオードを上下対称に置いた 3 つは、偶数次の倍音が −80dB 以下で、奇数次だけが出ます。3 次は TS808 で基本波の −15.7dB、RAT で −9.7dB です。Fuzz Face は波形の上下が対称でなく、2 次が −8.9dB と強く出ます。

同じ正弦波を入れたときの出力波形と倍音196Hz、0.3V の正弦波を原音、TS808、ケンタ系、RAT、Fuzz Face に入れたときの出力を 1 周期ずつ並べた図。下に 2 次から 7 次の倍音の大きさを棒で示す。ダイオードの 3 回路は奇数次だけ、Fuzz Face は偶数次も出る。 同じ正弦波(196Hz、0.3V)を入れたときの出力 ngspice の過渡解析。ピックアップとケーブルを通してから各回路に入れた 原音 2 3 4 5 6 7 TS808 2 3 4 5 6 7 ケンタ系 2 3 4 5 6 7 RAT 2 3 4 5 6 7 Fuzz Face 2 3 4 5 6 7 0dB −40 倍音の大きさ(基本波に対する dB、2〜7 次) 上下対称に潰すと偶数次は出ない。Fuzz Face は上下で潰れ方が違うので 2 次が強い 奇数次(3, 5, 7) 偶数次(2, 4, 6) 入力の正弦波 波形は振幅をそろえて表示。点線は入力の正弦波
図1:196Hz、0.3V の正弦波を入れたときの出力(1 周期、振幅をそろえて表示)と、2〜7 次の倍音の大きさ。ngspice の過渡解析の結果。

試聴の条件:合成したギターの音を、ピックアップごと回路に通す

試聴音は実機の録音ではなく、回路シミュレータ ngspice(WebAssembly 版)で解いた結果です。入力のギターは、弦の振動を倍音ごとに計算するモード合成で作りました。ピックで弦を三角形に引いて離す形、弦の硬さによる倍音のずれ、高い倍音ほど早く消える減衰、縦横 2 方向の振動のわずかな違いを入れています。フレーズは E5 のパワーコード、A5 と G5 の刻み、E マイナー・ペンタトニックの単音、ビブラートで伸ばす高音、開放の E メジャーの 9.4 秒です。

ピックアップはシングルコイルとハムバッカーの 2 種類を用意し、プレーヤーの下で切り替えられます。シングルコイルはブリッジから 43mm に 1 個(L = 2.5H、R = 6.5kΩ、250kΩ のポット)、ハムバッカーは 40mm と 58mm の 2 つのコイルの和(L = 5H、R = 10kΩ、500kΩ のポット)で、出力はシングルコイルの約 1.8 倍です。どちらも自己容量 100pF と 3m のケーブル(300pF)を通してから各回路に入れています。弦のどの位置を拾うかで倍音の混ざり方が変わり、ピックアップのインピーダンスはファズの音を大きく変えるので、省略していません(ピックアップの等価回路)。

出力は 88.2kHz で取り、44.1kHz に間引いてから、音量を RMS で −20dBFS にそろえました。ペダルの Volume つまみで音量を合わせて比べるのと同じです。原音のようにピークの大きいものは、ピークが −1dBFS を超えないように抑えたので、そのぶん小さくなっています。

回路の出力をそのまま聴くと、ギターアンプのスピーカが削る 5kHz 以上の成分まで聞こえ、実際より耳障りです。プレーヤーの下のチェックが入っていると、ブラウザの中で 90Hz〜5kHz の帯域制限をかけて再生します。外すと回路の出力そのままです。

  • 原音ピックアップ → ケーブル → アンプ入力(1MΩ)
ピックアップ

TS808:帰還のダイオードで丸く潰し、低音は歪ませない

Ibanez TS808(Tube Screamer)の心臓は、OP アンプ(JRC4558)の非反転増幅です。帰還抵抗は 51kΩ + Drive(500kΩ)、反転入力から GND へは 4.7kΩ + 47nF です。利得は 1 + (51k + Drive) ÷ 4.7k で、Drive 最大で 118 倍(41dB)になります。

47nF があるので、この利得が出るのは 720Hz(1 ÷ (2π × 4.7k × 47n))より上だけです。それより下では利得が 1 倍に近づき、低音はほとんど歪みません。低い弦の基音まで潰すと和音が濁るので、そこを避ける定数です。

ダイオード 2 本は帰還抵抗と並列です。帰還抵抗の両端(出力と反転入力の間)の電圧が約 0.6V を超えるとダイオードが導通して帰還が深くなり、利得がなめらかに下がります。これがソフトクリップです。非反転増幅なので、入力そのもの(利得 1 倍ぶん)は必ず出力に残り、波形の角が丸くなります。

後ろのトーン段は 1kΩ + 0.22µF のローパス(723Hz)が基本で、20kΩ のトーンポットで高域を足し引きします。前段の 720Hz のハイパスと合わせて、中域が持ち上がった特性になります(図6)。

  • TS808 Drive 中Drive 100kΩ(利得 33 倍)、Tone 中央
  • TS808 Drive 最大Drive 500kΩ(利得 118 倍)、Tone 中央
ピックアップ
TS808 のクリッピング段入力バッファ、1µF と 10kΩ、JRC4558 の非反転増幅。帰還は 51kΩ と Drive 500kΩ の直列、51pF、逆並列のダイオード 2 本の並列。反転入力から GND へ 4.7kΩ と 47nF。後ろに 1kΩ と 0.22µF のローパスとトーン段。 TS808:ダイオードは帰還の中(ソフトクリップ) 利得 = 1 + (51k + Drive) ÷ 4.7k、720Hz より上で効く IN 入力バッファ 1µF 10kΩ + − JRC4558 4.7kΩ 47nF 51kΩ Drive 500kΩ 51pF 1N914 × 2(約 0.6V で導通) 1kΩ 0.22µF トーン段Tone 20kΩ OUT 4.7kΩ + 47nF:720Hz より下は 利得 1 倍に近づき、低音は歪まない ダイオードが導通すると帰還が深くなり、 利得がなめらかに下がる。入力ぶんは 必ず出力に残る(原音が混ざる)
図2:TS808 のクリッピング段。ダイオードは帰還抵抗と並列で、4.7kΩ + 47nF が 720Hz より下の利得を下げる。

ケンタ系:ゲルマニウムで潰した音に、原音を足す

Klon Centaur とその系統(ケンタ系)は、歪ませた信号と歪ませない信号を加算アンプで足す回路です。この記事の回路は、公開されている回路解析をもとに、構成(2 連の Gain ポット、ゲルマニウムダイオード、加算)だけを取り出して定数を丸めたもので、実機そのものではありません。

ゲイン段は非反転増幅で、利得は 482Hz より上で 1 + (2.2k + Gain2) ÷ 3.3k です。出力を 1kΩ 経由でゲルマニウムダイオード(1N34A)2 本に通し、GND へ潰します。ゲルマニウムの順方向電圧は約 0.3V で、シリコン(約 0.6V)の半分の電圧で頭打ちになります。

クリーンの経路は、入力バッファの出力を 15kΩ と Gain1(GND へ)で分圧して加算点へ送ります。2 つのポットは同じ軸で回るので、Gain を上げると Gain2 が増えて歪みが増え、同時に Gain1 が減って原音が減ります。この回路では、Gain 最小付近で原音の割合が 0.58、最大で 0.06(−20dB)です。

Gain を絞ったときは原音が主役で、ゲルマニウムで潰れた成分がその上に薄く乗ります。歪んで聞こえにくいのに音が太くなる、という評判はこの足し算から来ています。実機は OP アンプを 18V(チャージポンプで昇圧)で動かし、原音の経路が先に頭打ちにならないようにしています。シミュレーションでは ±9V で同じ振幅を確保しました。

下のミキサーでは、原音の量だけをスライダで変えて足し合わせられます。2 つの経路を別々に ngspice で解き、ページの中で足しています。加算アンプは線形なので、足した結果は回路全体を解いたものと同じです。

  • ケンタ系 Gain 低めゲイン段 4.7 倍、原音の割合 0.58
  • ケンタ系 Gain 最大ゲイン段 32 倍、原音の割合 0.06
ピックアップ

ゲイン段は Gain 中央(16.8 倍)に固定し、加算点に入る原音の量だけを変えます。100% は Gain 最小のときの量、0% はゲルマニウムで潰した音だけです。実機では Gain つまみ 1 つで両方が同時に動きます。足し合わせても音量が変わらないように、全体の大きさをそろえています。

ピックアップ
ケンタ系の構成入力バッファから 2 つの経路に分かれる。上はクリーンの経路で、15kΩ と Gain1(GND へ)で分圧し 27kΩ で加算点へ。下はゲイン段(非反転増幅、帰還に Gain2)、1kΩ とゲルマニウムダイオード 2 本で GND へ潰し、47kΩ で加算点へ。加算アンプの帰還は 27kΩ。 ケンタ系:潰した音に原音を足す Gain1 と Gain2 は 2 連ポット。Gain を上げると歪みが増え、原音が減る IN 入力バッファ 15kΩ Gain1 27kΩ 原音の経路 0.1µF + − ゲイン段 3.3kΩ 0.1µF Gain2(100kΩ) 1kΩ 1N34A × 2(Ge、約 0.3V) 47kΩ 歪ませる経路 − + 27kΩ OUT 加算アンプ Gain 低め:原音 0.58、ゲイン段 4.7 倍 Gain 最大:原音 0.06、ゲイン段 32 倍 OP アンプは 18V(ここでは ±9V)で動かす
図3:ケンタ系の構成。歪ませる経路(赤)と原音の経路(青)を加算アンプで足す。Gain1 と Gain2 は 2 連ポット。

RAT:高い利得のあと、GND へのダイオードで平らに潰す

ProCo RAT は、OP アンプ LM308 の非反転増幅で大きく増幅し、そのあとでダイオード 2 本を GND へつないで潰します。反転入力から GND へは 47Ω + 2.2µF と 560Ω + 4.7µF の 2 本で、1.5kHz より上の利得は 1 + Distortion ÷ 43Ω、Distortion 最大で 2300 倍(67dB)です。

実際の利得は OP アンプが決めます。LM308 は 30pF の外付け補償で GBW が約 1MHz なので、2kHz での利得は 500 倍ほどで頭打ちになります。スルーレートも 0.3V/µs と遅く、大振幅の高域は三角波に近づきます。RAT の音に LM308 が欠かせないと言われるのはこのためです。

TS808 と違い、ダイオードは増幅段の外にあります。1kΩ を通った信号は ±0.6V でそのまま切られ、上下が平らなハードクリップになります。最後の Filter は 1.5kΩ + Filter ポット(100kΩ)と 3.3nF のローパスで、遮断周波数は 32kHz(ポット 0)から 475Hz(最大)まで動きます。試聴では 15kΩ(約 2.9kHz)にしました。

RAT のような 1970 年代のディストーションと、1990 年代以降のハイゲイン(Boss MT-2 Metal Zone)の回路の違いは、古いディストーションと現代のハイゲインで比べています。

  • RAT Distortion 中Distortion 12kΩ(利得 280 倍)、Filter 2.9kHz
  • RAT Distortion 最大Distortion 100kΩ(GBW で頭打ち)、Filter 2.9kHz
ピックアップ
RAT の回路入力の 22nF と 1MΩ、1kΩ を通して LM308 の非反転増幅。反転入力から GND へ 47Ω と 2.2µF、560Ω と 4.7µF の 2 本、帰還に Distortion 100kΩ と 100pF。出力は 4.7µF と 1kΩ を通してダイオード 2 本で GND へ切り、1.5kΩ と Filter 100kΩ、3.3nF のローパス、出力バッファへ。 RAT:大きく増幅してから、GND へのダイオードで切る(ハードクリップ) 1.5kHz より上の利得 = 1 + Distortion ÷ 43Ω(最大 2300 倍)。実際は LM308 の GBW で頭打ち IN 22nF 1MΩ 1kΩ + − LM308 47Ω 2.2µF 560Ω 4.7µF Distortion 100kΩ ‖ 100pF 4.7µF 1kΩ 1N914 × 2(±0.6V で切る) 1.5kΩ Filter 100kΩ 3.3nF バッファ OUT 47Ω + 2.2µF は 1.5kHz、560Ω + 4.7µF は 60Hz で効き始める。低音ほど利得が低い LM308:GBW 約 1MHz、スルーレート 0.3V/µs。2kHz での利得は 500 倍ほどで頭打ち Filter:1.5kΩ + ポット と 3.3nF のローパス。32kHz(0)〜 475Hz(最大)
図4:RAT。LM308 で大きく増幅し、出力側でダイオードを GND へつないで切る。Filter は可変のローパス。

Fuzz Face:トランジスタ 2 石の飽和と遮断で潰す

Fuzz Face はダイオードを使いません。2 つのトランジスタを直結した増幅回路で、Q2 のエミッタから Q1 のベースへ 100kΩ で直流の帰還をかけ、動作点を決めています。Fuzz ポット(1kΩ)を 20µF でバイパスするほど交流の利得が上がります。

利得が大きいので、Q2 は信号の一方の向きで飽和(コレクタが約 0.9V まで下がる)し、反対の向きで遮断(9V 近くまで上がる)します。動作点の 4.4V から上下への振れ幅が違うので、波形は上下で形の違う矩形になり、2 次などの偶数次の倍音が出ます(図1)。

入力はコンデンサを通して Q1 のベースに直接つながり、入力インピーダンスが低い回路です。ピックアップのコイルやギターのボリュームと直接干渉するのはこのためで、前にバッファを置くと音が変わります。

オリジナルはゲルマニウムの PNP トランジスタで、ここではシリコンの NPN 版にしています。シリコン版は Q2 の動作点が下がるので、8.2kΩ を 5.6kΩ にしてコレクタを 4.4V にそろえました(シリコン版でよく行う調整です)。

  • Fuzz Face Fuzz 中Fuzz ポットの半分をバイパス
  • Fuzz Face Fuzz 最大1kΩ 全体をバイパス
ピックアップ
Fuzz Face の回路入力の 2.2µF から Q1 のベースへ。Q1 のコレクタは 33kΩ で +9V へつながり、Q2 のベースに直結。Q2 のコレクタは 470Ω を通って出力の分岐、さらに 5.6kΩ で +9V へ。Q2 のエミッタは Fuzz 1kΩ で GND へ、20µF でバイパス。Q2 のエミッタから Q1 のベースへ 100kΩ の帰還。出力は 10nF と Volume 500kΩ。 Fuzz Face:トランジスタの飽和と遮断で潰す(ダイオード無し) シリコン NPN 版。Q2 のコレクタの動作点は 4.4V +9V IN 2.2µF Q1 33kΩ Q2 470Ω 5.6kΩ (原典は 8.2kΩ) Fuzz 1kΩ 20µF 100kΩ 100kΩ:直流の帰還で動作点を決める 10nF Volume 500kΩ OUT Q2 は一方の向きで飽和(約 0.9V)、 反対の向きで遮断(9V 近く)。振れ幅が上下で違う 入力は Q1 のベースに直接つながり、 入力インピーダンスが低い
図5:Fuzz Face(シリコン NPN 版)。2 石の直結増幅で、100kΩ が直流の動作点を決める。ダイオードは無い。

周波数特性:どの帯域を持ち上げてから潰すか

同じ「潰す」回路でも、潰す前にどの帯域を持ち上げるかで音が変わります。下の図は、ダイオードが導通しない小さな信号での周波数特性で、1kHz を 0dB にそろえています。

TS808 は 800Hz 付近を頂点にした山で、20Hz では −24dB、6.3kHz で −13dB です。TS808 が「中域が出る」と言われるのは、この山がそのまま歪みの成分になるからです。ケンタ系は原音の経路が低音を運ぶので、20Hz でも −8dB にとどまり、6.3kHz でも −2dB です。RAT は 1.8kHz 付近に山があり、低域は TS808 と同じくらい切れています。

小さな信号での周波数特性TS808、ケンタ系、RAT の周波数特性を 20Hz から 20kHz まで重ねたグラフ。1kHz で 0dB にそろえている。TS808 は 800Hz 付近が頂点で低域が大きく落ちる。ケンタ系はほぼ平ら。RAT は 1.8kHz 付近が頂点。 ダイオードが導通しない小さな信号での周波数特性(1kHz で 0dB) ngspice の小信号解析。試聴音と同じ定数 20 50 100 200 500 1k 2k 5k 10k 20k 0dB -10dB -20dB -30dB 周波数 [Hz] TS808 800Hz 付近が頂点。20Hz で −24dB、 6.3kHz で −13dB ケンタ系(Gain 低め) 原音の経路が低音を運ぶので、 20Hz でも −8dB RAT 1.8kHz 付近が頂点。低域の切れ方は TS808 と同じくらい 大きな信号ではダイオードが導通して利得が下がるので、この特性は「どの帯域から先に潰れるか」の目安になる
図6:小さな信号での周波数特性(1kHz で 0dB)。TS808 は Drive 100kΩ・Tone 中央、ケンタ系は Gain 低め、RAT は Distortion 12kΩ・Filter 15kΩ。

まとめて聴き比べる

同じフレーズを 9 通りの回路と設定に通した音です。和音を歪ませると、各音の周波数の和と差の成分(混変調)が出ます。パワーコード(ルート・5 度・オクターブ)ではその多くが元の音の倍音と重なりますが、3 度を含む最後の E メジャーでは重ならない成分が出て濁ります。ハードクリップほどこの成分が多くなります。

  • 原音
  • TS808 Drive 中
  • TS808 Drive 最大
  • ケンタ系 Gain 低め
  • ケンタ系 Gain 最大
  • RAT Distortion 中
  • RAT Distortion 最大
  • Fuzz Face Fuzz 中
  • Fuzz Face Fuzz 最大
ピックアップ

シミュレーションで省いたこと

  • OP アンプは、GBW・スルーレート・出力の振れ幅だけを持たせた簡単なモデルです(JRC4558 は 3MHz・1V/µs、TL072 は 3MHz・13V/µs、LM308 は 1MHz・0.3V/µs)。雑音、入力オフセット、出力電流の制限は入れていません。
  • OP アンプの回路は、実機の「9V 単電源 + 4.5V のバイアス」を「±4.5V の両電源」に置き換えています(ケンタ系は ±9V)。信号から見れば同じです。
  • 入出力のバッファ(TS808 のトランジスタ、RAT の JFET)は理想的な電圧バッファにしています。
  • ポットはつまみの位置を抵抗値に直した固定抵抗です。A カーブ・B カーブの違いは、抵抗値の選び方に含めています。
  • ギターアンプとスピーカは入れていません。チェックを入れたときの帯域制限は、スピーカの帯域を大まかにまねたもので、特定のキャビネットの特性ではありません。

よくある質問

オーバードライブとディストーションの境目はどこですか。
回路の上では、ダイオードの位置と利得です。帰還に入れて原音が残るのがオーバードライブ、増幅のあとで GND へ切るのがディストーションの典型です。ただし製品の呼び名はメーカーが決めていて、厳密な定義はありません。
ゲルマニウムとシリコンのダイオードで何が変わりますか。
頭打ちになる電圧が違います。ゲルマニウムは約 0.3V、シリコンは約 0.6V なので、同じ利得ならゲルマニウムの方が早く潰れ、出力は小さくなります。
TS808 が低音を歪ませないのはなぜですか。
反転入力から GND への 4.7kΩ に 47nF が直列に入っていて、720Hz より下では利得が 1 倍に近づくからです。低い弦の基音がダイオードの電圧まで届かず、和音が濁りにくくなります。
ファズの前にバッファを置くと音が変わるのはなぜですか。
Fuzz Face は入力インピーダンスが低く、ピックアップのコイルと直接つながる前提の回路だからです。バッファを挟むと信号源のインピーダンスが下がり、音の太さや、ギターのボリュームを絞ったときの歪みの減り方が変わります。

参考にした規格・資料

  • ElectroSmash, "Tube Screamer Analysis" — TS808 の回路定数と、クリッピング段・トーン段の解析
  • ElectroSmash, "Klon Centaur Analysis" — ケンタ系の構成(2 連ポット、ゲルマニウムダイオード、加算アンプ、チャージポンプ)
  • ElectroSmash, "ProCo RAT Analysis" — RAT の利得の周波数特性、LM308 の補償、Filter の遮断周波数
  • R. G. Keen, "The Technology of the Fuzz Face" — Fuzz Face の動作点と帰還、入力インピーダンスの解説
  • ngspice User's Manual / EEcircuit-engine(ngspice の WebAssembly 版) — 過渡解析と小信号解析に使ったシミュレータ
  • JRC4558、TL072、LM308、1N914、1N34A の各データシート — OP アンプの GBW・スルーレート、ダイオードの順方向特性

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