電源パターンの幅は、温度上昇と電圧降下の両方で決める

1A なら 0.3mm、という表を見て電源パターンを引くと、長い配線では電圧降下で困ります。温度上昇で決まる幅と、電圧降下で決まる幅は別の計算で、長い配線ほど後者が支配します。

最終更新: 2026-09-14 電源パターン電流容量電圧降下IPC-2221

温度上昇で決まる幅:IPC-2221 の式

パターンに電流を流すと I²R で発熱し、放熱との釣り合いで温度が上がります。IPC-2221 は、外層のパターンについて I = 0.048 × ΔT0.44 × A0.725(I は A、ΔT は ℃、A は断面積 mil²)という経験式を示しています。内層は係数が半分の 0.024 です。

この式を 1oz(厚み 1.37mil ≒ 35µm)、温度上昇 10℃ で解くと、1A で 0.3mm、2A で 0.8mm、3A で 1.4mm、5A で 2.8mm 程度になります。温度上昇を 20℃ まで許せば幅は 6 割程度、2oz にすれば半分程度です。

内層は係数が半分なので、同じ電流で 2.6 倍の断面積、つまり 2.6 倍の幅が要る計算になります。ただしこの式は 1950 年代の測定に基づく古いもので、2009 年の IPC-2152 では「内層は隣接するプレーンや基材への放熱があり、実際には外層と同程度かそれ以上の電流を流せる」と改められています。IPC-2221 の内層の値は安全側に大きく振れていると考えてください。

IPC-2221 の式による外層パターンの幅(1oz = 35µm)
電流ΔT = 10℃ΔT = 20℃ΔT = 10℃、2oz
0.5A0.12mm0.08mm0.06mm
1A0.30mm0.20mm0.15mm
2A0.78mm0.51mm0.39mm
3A1.37mm0.90mm0.69mm
5A2.77mm1.82mm1.39mm
10A7.3mm4.8mm3.7mm

電圧降下で決まる幅:長さが効く

温度上昇の式には長さが出てきません。パターンが長くても短くても、単位長さあたりの発熱と放熱は同じだからです。しかし電圧降下は長さに比例します。

1oz 銅箔のシート抵抗は約 0.5mΩ/□(20℃)です。幅 0.3mm で長さ 100mm のパターンは 333 □なので抵抗は 167mΩ。1A 流すと 167mV 落ちます。3.3V の電源で ±3%(100mV)の許容なら、これだけで予算を超えます。

電圧降下で幅を決めるには、許容できる電圧降下 ΔV から R = ΔV ÷ I を出し、R = 0.5mΩ × L ÷ w から w を求めます。1A・100mm で 25mV 以内にしたいなら R = 25mΩ、□数 = 50、w = 2mm。温度上昇で決めた 0.3mm の 7 倍です。

だから、短い配線(数 mm〜10mm 程度)は温度上昇で、長い配線は電圧降下で幅が決まると考えると実務に合います。IC の電源ピンからコンデンサまでの引き出しは温度の式で十分で、コネクタから基板を横断する電源は電圧降下で計算します。

外層は表面処理のめっきで 1oz が仕上がり 50〜60µm になるので、実際のシート抵抗は 0.3〜0.35mΩ/□ です。基板メーカの仕上がり銅厚で計算し直すと、電圧降下は 3 〜 4 割小さくなります。

1A のパターン幅:温度上昇と電圧降下の 2 つの条件横軸に配線長 0〜150mm、縦軸に必要な線幅 0〜3mm。温度上昇 10℃ の条件は 0.3mm の水平線、電圧降下 25mV 以内の条件は原点から右上がりの直線で、15mm で交差する。 短い配線は温度で、長い配線は電圧降下で幅が決まる 1A、1oz(35µm)、20℃。電圧降下の許容は 25mV 0mm 50mm 100mm 150mm 1mm 2mm 3mm 必要な線幅 配線長 温度上昇 10℃ の条件:0.3mm(長さによらない) 電圧降下 25mV の条件:w = L ÷ 50 15mm で入れ替わる 温度が支配 電圧降下が支配 IC の電源ピンからコンデンサまで 数 mm。温度の式で 0.3mm あれば足りる。 電圧降下は 1A・5mm で 8mV。 コネクタから基板を横断する電源 100mm なら 2mm 必要。 細いパターンではなくベタで引く。 許容電圧降下の目安 3.3V ±3% なら往復で 100mV。 GND 側の降下も同じだけ数える。
図1:1A のパターンに必要な幅。温度上昇(10℃)で決まる幅は長さによらず 0.3mm だが、電圧降下(25mV 以内)で決まる幅は長さに比例し、15mm を超えると電圧降下のほうが厳しくなる。

銅の抵抗は温度で 4 割増える

銅の抵抗率の温度係数は +0.39%/℃ です。20℃ で計算した抵抗は、80℃ では 23% 増、120℃ では 39% 増になります。パターンの自己発熱で温度が上がると抵抗が増え、電圧降下と発熱がさらに増える方向です。

設計では、パターンの動作温度(周囲温度 + 自己発熱 + 近くの発熱部品)で抵抗を補正します。パターン抵抗の計算機には温度の入力があるので、最高動作温度で計算してください。

ビアの電流容量

ビアの導体は、穴の壁に付いためっき(厚み 20〜25µm)の円筒です。穴径 0.3mm、めっき 25µm なら断面積は π × 0.3 × 0.025 = 0.0236mm²(36mil²)で、1oz の幅 0.68mm のパターンと同じ断面積です。IPC-2221 の式で 10℃ 上昇なら 1.5A 程度。

抵抗は、長さ 1.6mm で 1.72×10⁻⁸ × 1.6mm ÷ 0.0236mm² ≒ 1.2mΩ と小さいですが、電流が集中するのはめっきの薄い部分なので、めっき厚のばらつき(最小 20µm など)で計算します。

3A を通すなら 2〜3 本、5A なら 4〜6 本を並べます。ビアを並べるときは電流が均等に分かれるよう、パターンの幅方向に一列に置きます。1 本だけ手前にあると、そこに電流が集中します。

ベタパターンとサーマルリリーフ

1A を超える電源は、細いパターンではなくベタ(ポリゴン)で引くのが基本です。幅の制約がなくなり、電圧降下も発熱も小さくなります。4 層以上なら内層をプレーンにします。

ベタに接続するスルーホール部品のパッドには、半田付けのためにサーマルリリーフ(十字型の細い接続)を入れます。細い接続部(幅 0.3mm × 4 本など)が電流経路になるので、大電流のパッドではリリーフの幅を広げるか、リリーフなしで直結し、半田付けは予熱で対応します。

コネクタのピンやヒューズのパッドで、サーマルリリーフの細い部分が発熱して半田が劣化する不具合があります。大電流のパッドはリリーフの断面積を、パターン幅と同じ基準で確認してください。

よくある質問

1A の電源パターンは何 mm にすればよいですか。
温度上昇 10℃ なら 1oz で 0.3mm ですが、これは発熱の観点だけです。配線が 50mm を超えるなら電圧降下を計算してください。1A・100mm で 25mV 以内なら 2mm 必要です。可能ならベタで引きます。
IPC-2221 と IPC-2152 のどちらを使うべきですか。
IPC-2152 のほうが新しく、基板の厚み・銅箔・隣接プレーンの影響を含めた図表を持っています。ただし図表が複雑で、簡易計算には IPC-2221 の式が今も広く使われています。IPC-2221 は外層について安全側(実際より広い幅を要求する)なので、目安として使うぶんには問題ありません。
外層と内層で、同じ電流ならどちらが有利ですか。
IPC-2221 では内層に 2.6 倍の幅が要りますが、IPC-2152 の測定では、内層は基材を通してプレーンや外層に熱が逃げるため、外層と同等以上の電流を流せます。実務的には、内層の幅を外層と同じにして、温度上昇は試作で確認するのが現実的です。
GND のリターン経路も同じ幅が要りますか。
要ります。電流は往復するので、GND がベタでなく細いパターンなら、同じ電圧降下が GND 側にも生じます。GND をプレーンにしていれば、断面積が十分なので通常は問題になりません。

参考にした規格・資料

  • IPC-2221B, Generic Standard on Printed Board Design — 導体の電流容量の式(Section 6.2)
  • IPC-2152, Standard for Determining Current Carrying Capacity in Printed Board Design — 実測に基づく電流容量の図表。内層・隣接プレーンの影響
  • IPC-6012 — スルーホールのめっき厚の要件

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