電源パターンの幅は、温度上昇と電圧降下の両方で決める
1A なら 0.3mm、という表を見て電源パターンを引くと、長い配線では電圧降下で困ります。温度上昇で決まる幅と、電圧降下で決まる幅は別の計算で、長い配線ほど後者が支配します。
温度上昇で決まる幅:IPC-2221 の式
パターンに電流を流すと I²R で発熱し、放熱との釣り合いで温度が上がります。IPC-2221 は、外層のパターンについて I = 0.048 × ΔT0.44 × A0.725(I は A、ΔT は ℃、A は断面積 mil²)という経験式を示しています。内層は係数が半分の 0.024 です。
この式を 1oz(厚み 1.37mil ≒ 35µm)、温度上昇 10℃ で解くと、1A で 0.3mm、2A で 0.8mm、3A で 1.4mm、5A で 2.8mm 程度になります。温度上昇を 20℃ まで許せば幅は 6 割程度、2oz にすれば半分程度です。
内層は係数が半分なので、同じ電流で 2.6 倍の断面積、つまり 2.6 倍の幅が要る計算になります。ただしこの式は 1950 年代の測定に基づく古いもので、2009 年の IPC-2152 では「内層は隣接するプレーンや基材への放熱があり、実際には外層と同程度かそれ以上の電流を流せる」と改められています。IPC-2221 の内層の値は安全側に大きく振れていると考えてください。
| 電流 | ΔT = 10℃ | ΔT = 20℃ | ΔT = 10℃、2oz |
|---|---|---|---|
| 0.5A | 0.12mm | 0.08mm | 0.06mm |
| 1A | 0.30mm | 0.20mm | 0.15mm |
| 2A | 0.78mm | 0.51mm | 0.39mm |
| 3A | 1.37mm | 0.90mm | 0.69mm |
| 5A | 2.77mm | 1.82mm | 1.39mm |
| 10A | 7.3mm | 4.8mm | 3.7mm |
電圧降下で決まる幅:長さが効く
温度上昇の式には長さが出てきません。パターンが長くても短くても、単位長さあたりの発熱と放熱は同じだからです。しかし電圧降下は長さに比例します。
1oz 銅箔のシート抵抗は約 0.5mΩ/□(20℃)です。幅 0.3mm で長さ 100mm のパターンは 333 □なので抵抗は 167mΩ。1A 流すと 167mV 落ちます。3.3V の電源で ±3%(100mV)の許容なら、これだけで予算を超えます。
電圧降下で幅を決めるには、許容できる電圧降下 ΔV から R = ΔV ÷ I を出し、R = 0.5mΩ × L ÷ w から w を求めます。1A・100mm で 25mV 以内にしたいなら R = 25mΩ、□数 = 50、w = 2mm。温度上昇で決めた 0.3mm の 7 倍です。
だから、短い配線(数 mm〜10mm 程度)は温度上昇で、長い配線は電圧降下で幅が決まると考えると実務に合います。IC の電源ピンからコンデンサまでの引き出しは温度の式で十分で、コネクタから基板を横断する電源は電圧降下で計算します。
外層は表面処理のめっきで 1oz が仕上がり 50〜60µm になるので、実際のシート抵抗は 0.3〜0.35mΩ/□ です。基板メーカの仕上がり銅厚で計算し直すと、電圧降下は 3 〜 4 割小さくなります。
銅の抵抗は温度で 4 割増える
銅の抵抗率の温度係数は +0.39%/℃ です。20℃ で計算した抵抗は、80℃ では 23% 増、120℃ では 39% 増になります。パターンの自己発熱で温度が上がると抵抗が増え、電圧降下と発熱がさらに増える方向です。
設計では、パターンの動作温度(周囲温度 + 自己発熱 + 近くの発熱部品)で抵抗を補正します。パターン抵抗の計算機には温度の入力があるので、最高動作温度で計算してください。
ビアの電流容量
ビアの導体は、穴の壁に付いためっき(厚み 20〜25µm)の円筒です。穴径 0.3mm、めっき 25µm なら断面積は π × 0.3 × 0.025 = 0.0236mm²(36mil²)で、1oz の幅 0.68mm のパターンと同じ断面積です。IPC-2221 の式で 10℃ 上昇なら 1.5A 程度。
抵抗は、長さ 1.6mm で 1.72×10⁻⁸ × 1.6mm ÷ 0.0236mm² ≒ 1.2mΩ と小さいですが、電流が集中するのはめっきの薄い部分なので、めっき厚のばらつき(最小 20µm など)で計算します。
3A を通すなら 2〜3 本、5A なら 4〜6 本を並べます。ビアを並べるときは電流が均等に分かれるよう、パターンの幅方向に一列に置きます。1 本だけ手前にあると、そこに電流が集中します。
ベタパターンとサーマルリリーフ
1A を超える電源は、細いパターンではなくベタ(ポリゴン)で引くのが基本です。幅の制約がなくなり、電圧降下も発熱も小さくなります。4 層以上なら内層をプレーンにします。
ベタに接続するスルーホール部品のパッドには、半田付けのためにサーマルリリーフ(十字型の細い接続)を入れます。細い接続部(幅 0.3mm × 4 本など)が電流経路になるので、大電流のパッドではリリーフの幅を広げるか、リリーフなしで直結し、半田付けは予熱で対応します。
コネクタのピンやヒューズのパッドで、サーマルリリーフの細い部分が発熱して半田が劣化する不具合があります。大電流のパッドはリリーフの断面積を、パターン幅と同じ基準で確認してください。
よくある質問
1A の電源パターンは何 mm にすればよいですか。
IPC-2221 と IPC-2152 のどちらを使うべきですか。
外層と内層で、同じ電流ならどちらが有利ですか。
GND のリターン経路も同じ幅が要りますか。
参考にした規格・資料
- IPC-2221B, Generic Standard on Printed Board Design — 導体の電流容量の式(Section 6.2)
- IPC-2152, Standard for Determining Current Carrying Capacity in Printed Board Design — 実測に基づく電流容量の図表。内層・隣接プレーンの影響
- IPC-6012 — スルーホールのめっき厚の要件