電源パターンの幅は、温度上昇と電圧降下の両方で決める

1A なら 0.3mm、という表を見て電源パターンを引くと、長い配線では電圧降下で困ります。温度上昇で決まる幅と、電圧降下で決まる幅は別の計算で、長い配線ほど後者が支配します。

最終更新: 2026-10-28 電源パターン電流容量電圧降下IPC-2221

温度上昇で決まる幅(IPC-2221)

パターンの発熱(I²R)と放熱が釣り合う温度で、温度上昇が決まります。IPC-2221 は外層について I = 0.048 × ΔT0.44 × A0.725(I は A、ΔT は ℃、A は断面積 mil²)という経験式を示し、内層は係数が半分の 0.024 です。

1oz(35µm)、10℃ 上昇で解くと、1A で 0.3mm、2A で 0.8mm、3A で 1.4mm、5A で 2.8mm 程度です。20℃ まで許せば幅は約 2/3、2oz なら半分程度です。

内層は係数が半分なので、同じ電流に 2.6 倍の幅が要る計算です。ただし 1950 年代の測定に基づく式で、2009 年の IPC-2152 では、内層は隣接プレーンや基材へ放熱できるため外層と同程度以上の電流を流せると改められました(図 1)。

IPC-2221 の式による外層パターンの幅(1oz = 35µm)
電流ΔT = 10℃ΔT = 20℃ΔT = 10℃、2oz
0.5A0.12mm0.08mm0.06mm
1A0.30mm0.20mm0.15mm
2A0.78mm0.51mm0.39mm
3A1.37mm0.90mm0.69mm
5A2.77mm1.82mm1.39mm
10A7.3mm4.8mm3.7mm
銅配線の幅と発熱の関係
銅配線の幅と発熱の関係。概念を表すAI生成イラストです。実際の回路・条件は本文の図と説明を参照してください。
外層と内層の放熱経路基板の断面図。外層のパターンは外へ、内層のパターンは上下のプレーンや基材へ放熱する。IPC-2221 は内層の係数を半分とし、同じ電流に 2.6 倍の幅を要求する。IPC-2152 は内層も外層と同程度以上の電流を流せるとする。 外層と内層で、放熱の経路が違う IPC-2221 は内層に 2.6 倍の幅を要求し、IPC-2152 は外層と同程度以上とする 放熱 外層のパターン 内層のパターン プレーン プレーン IPC-2221(式) 内層は係数が半分(0.024) 同じ電流に 2.6 倍の幅 IPC-2152(2009) 内層はプレーンや基材へ放熱できる 外層と同程度かそれ以上の電流
図1:内層の扱いは IPC-2221 と IPC-2152 で異なる。

電圧降下は長さに比例する

温度上昇の式に長さは出てきませんが、電圧降下は長さに比例します。1oz 銅箔のシート抵抗は約 0.5mΩ/□(20℃)で、幅 0.3mm・長さ 100mm は 333 □で 167mΩ、1A で 167mV 落ちます。3.3V の ±3%(100mV)の許容を超えます。

1A・100mm で 25mV 以内なら 50 □で w = 2mm。温度で決めた 0.3mm の 7 倍です(図 2)。

外層は表面処理のめっきで 1oz が仕上がり 50〜60µm になるので、実際のシート抵抗は 0.3〜0.35mΩ/□ で、電圧降下は 3〜4 割小さくなります。

パターンの幅と □ の数長さ 100mm の 2 本のパターン。幅 0.3mm は 333 □で 167mΩ、1A で 167mV 落ちる。幅 2mm は 50 □で 25mΩ、1A で 25mV 落ちる。 同じ長さでも、幅が狭いほど □ の数が増える 1oz 銅箔のシート抵抗は約 0.5mΩ/□(20℃)。□ の数 = 長さ ÷ 幅 幅 0.3mm 長さ 100mm 333 □ = 167mΩ → 1A で 167mV 幅 2mm 長さ 100mm 50 □ = 25mΩ → 1A で 25mV 模式図(縮尺は合わせていない)。R = 0.5mΩ × L ÷ w
図2:幅が狭いほど □ の数が増え、抵抗が大きくなる。

短い配線は温度、長い配線は電圧降下で決まる

短い配線(数 mm〜10mm 程度)は温度上昇で、長い配線は電圧降下で幅が決まると考えると実務に合います(図 3)。IC の電源ピンからコンデンサまでは温度の式で足り、コネクタから基板を横断する電源は電圧降下で計算します。

1A のパターン幅:温度上昇と電圧降下の 2 つの条件横軸に配線長 0〜150mm、縦軸に必要な線幅 0〜3mm。温度上昇 10℃ の条件は 0.3mm の水平線、電圧降下 25mV 以内の条件は原点から右上がりの直線で、15mm で交差する。 短い配線は温度で、長い配線は電圧降下で幅が決まる 1A、1oz(35µm)、20℃。電圧降下の許容は 25mV 0mm 50mm 100mm 150mm 1mm 2mm 3mm 必要な線幅 配線長 温度上昇 10℃ の条件:0.3mm(長さによらない) 電圧降下 25mV の条件:w = L ÷ 50 15mm で入れ替わる 温度が支配 電圧降下が支配 IC の電源ピンからコンデンサまで 数 mm。温度の式の 0.3mm で足りる。 電圧降下は 1A・5mm で 8mV。 コネクタから基板を横断する電源 100mm なら 2mm 必要。 細いパターンではなくベタで引く。 許容電圧降下の目安 3.3V ±3% なら往復で 100mV。 GND 側の降下も同じだけ数える。
図3:1A のパターンに必要な幅。

銅の抵抗は温度で 4 割増える

銅の抵抗率の温度係数は +0.39%/℃ で、20℃ で計算した抵抗は 80℃ で 23%、120℃ で 39% 増えます。パターン抵抗の計算機に最高動作温度を入れて計算してください。

ビアの電流容量

ビアの導体は、穴の壁のめっき(厚み 20〜25µm)の円筒です。穴径 0.3mm、めっき 25µm なら断面積は約 0.0236mm²(36mil²)で、1oz の幅 0.68mm のパターンと同じです(図 4)。IPC-2221 の式で 10℃ 上昇なら 1.8A 程度です。

電流が集中するのはめっきの薄い部分なので、最小値(20µm など)で計算します。3A なら 2〜3 本、5A なら 4〜6 本を、パターンの幅方向に一列に並べます。

ビアのめっきとパターンの断面積穴径 0.3mm、めっき 25µm のビアの断面(環状)と、1oz の幅 0.68mm のパターンの断面。どちらも断面積は約 0.0236mm²。 ビアのめっきの断面積は、幅 0.68mm のパターンと同じ 穴径 0.3mm、めっき 25µm、パターンは 1oz(35µm) 穴 穴径 0.3mm めっき 25µm 0.0236mm² = 幅 0.68mm 1oz のパターン 0.0236mm² IPC-2221 の式で 10℃ 上昇なら 1.8A 程度 電流が集中するのはめっきの薄い部分。最小値(20µm など)で計算する
図4:ビアのめっきの断面積は、幅 0.68mm のパターンと同じ。

ベタとサーマルリリーフ

1A を超える電源は、細いパターンではなくベタで引くのが基本です。電圧降下も発熱も小さくなります。

ベタに接続するスルーホールのパッドには、サーマルリリーフ(十字型の細い接続)を入れます。この細い部分(幅 0.3mm × 4 本など)が電流経路になるので、大電流のパッドではリリーフを広げるか、リリーフなしで直結して半田付けは予熱で対応します(図 5)。

サーマルリリーフと電流経路ベタに接続したスルーホールのパッド。左はサーマルリリーフあり、十字の細い接続だけが電流の通り道になる。右はリリーフなしで直結し、電流が全周から流れる。 サーマルリリーフの細い接続が、電流経路になる ベタに接続したスルーホール部品のパッド サーマルリリーフあり 十字の細い接続だけが電流の通り道 細い部分が発熱し、半田が劣化することがある リリーフなしで直結 大電流のパッドの選択肢(半田付けは予熱で対応) 断面積が大きく、電流が通りやすい
図5:リリーフあり(左)となし(右)。

よくある質問

1A の電源パターンは何 mm にすればよいですか。
温度上昇 10℃ なら 1oz で 0.3mm ですが、発熱だけの条件です。10〜15mm を超えるなら電圧降下も計算してください。1A・100mm で 25mV 以内なら 2mm です。
IPC-2221 と IPC-2152 のどちらを使うべきですか。
IPC-2152 は新しく基板の厚みや隣接プレーンの影響を含みますが複雑で、簡易計算には IPC-2221 が使われます。外層について安全側なので、目安なら問題ありません。
外層と内層で、同じ電流ならどちらが有利ですか。
IPC-2152 の測定では、内層も外層と同等以上の電流を流せます。幅は外層と同じにして、温度上昇は試作で確認します。
GND のリターン経路も同じ幅が要りますか。
要ります。電流は往復するので、GND が細いパターンなら同じ電圧降下が生じます。プレーンなら通常は問題ありません。

参考にした規格・資料

  • IPC-2221B, Generic Standard on Printed Board Design — 導体の電流容量の式(Section 6.2)
  • IPC-2152, Standard for Determining Current Carrying Capacity in Printed Board Design — 実測に基づく電流容量の図表。内層・隣接プレーンの影響
  • IPC-6012 — スルーホールのめっき厚の要件

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