RC フィルタのカットオフ周波数と、実際に取れる減衰

1.6kHz の RC フィルタは、100kHz のノイズを 1/60(−36dB)にします。ゼロにはなりません。フィルタは「遮断」ではなく「減衰」で、その量は 1 次なら周波数比で決まります。

最終更新: 2026-10-28 RC フィルタローパスカットオフ周波数ノイズ

−3dB 点と、その先の傾き

1 次ローパスフィルタ(R と C)のカットオフ周波数は fc = 1 ÷ (2πRC) です。1kΩ と 100nF なら 1.59kHz で、出力は入力の 0.707 倍(−3dB)です。

カットオフより上では、周波数が 10 倍になるごとに −20dB です。正確には |H| = 1 ÷ √(1 + (f ÷ fc)²) で、数値は下の表のとおりです。

信号とノイズが 10 倍しか離れていなければ、1 次フィルタで取れる減衰は 20dB、100 倍離れていれば 40dB です。それ以上は、次数を上げるか、fc を下げて周波数を離すしかありません。

1 次 RC ローパスの減衰(fc に対する周波数比)
f ÷ fc振幅dB位相遅れ
0.10.995−0.04dB−5.7°
0.50.894−1.0dB−26.6°
10.707−3.0dB−45°
20.447−7.0dB−63.4°
50.196−14.1dB−78.7°
100.0995−20.0dB−84.3°
1000.01−40.0dB−89.4°
抵抗とコンデンサが信号の変化をなだらかにする様子
抵抗とコンデンサが信号の変化をなだらかにする様子。概念を表すAI生成イラストです。実際の回路・条件は本文の図と説明を参照してください。

信号側にも影響が出る

信号の周波数が fc の 1/10 なら振幅は 0.5% しか減りませんが、位相は 5.7° 遅れます。制御ループのセンサ信号や、複数チャンネルの同時性が要る計測では問題です。振幅を 0.1% 以内にするには fc を信号の 22 倍以上、位相を 1° 以内にするには 57 倍以上にします。

時間領域では整定時間です。ステップ入力に対し、出力が最終値の 1% 以内に入るまで 4.6τ(τ = RC)、0.1% 以内なら 6.9τ かかります。1kΩ × 100nF(τ = 100µs)なら 1% 整定に 460µs で、ADC で多チャンネルを切り替えて読むときは、この時間を待たないと前の値が混ざります。

ノイズを 40dB 落とすフィルタは、信号を 100 倍遅くするのと同じです。

RC のステップ応答の整定時間横軸を時間(τの倍数)、縦軸を最終値との差(対数目盛)としたグラフ。差は指数関数で減るので対数目盛では右下がりの直線になり、4.6τで1%、6.9τで0.1%に達する。1キロオームと100ナノファラドならτは100マイクロ秒で、1%整定は460マイクロ秒。 ステップ入力に対する RC の整定 100% 1% 0.1% 最終値との差(対数目盛) 0 2τ 4τ 6τ 8τ 4.6τ:1% 以内 6.9τ:0.1% 以内 τ = RC 1kΩ × 100nF なら τ = 100µs 1% 整定は 4.6τ = 460µs
図1:RC の整定。最終値との差は 4.6τ で 1%、6.9τ で 0.1% になる。

入出力のインピーダンスが式の前提

fc = 1 ÷ (2πRC) は、信号源のインピーダンスがゼロで、出力に何もつながっていないときの式です。実際には、信号源の出力抵抗 Rs が R に直列に加わり、負荷の入力抵抗 RL が C に並列に入ります。

Rs が R の 1/10 以上あると fc が目に見えて下がります。出力抵抗 10kΩ のセンサに R = 10kΩ を付けると、実効的な R は 20kΩ で fc は半分です。RL が R の 10 倍程度だと、直流ゲインが 0.9 倍に落ち、fc は上がります。目安は Rs ≦ R ÷ 10、RL ≧ 10 × R で、収まらなければ前後にバッファを入れます。

ADC の入力に置く C は、サンプリング容量(数〜数十 pF)の 100 倍以上あれば、サンプリング時の電圧の落ち込みが 1% 以下になります。

RC フィルタの信号源抵抗と負荷抵抗信号源、その出力抵抗Rs、フィルタのR、コンデンサC、負荷の入力抵抗RLをつないだ回路図。RsはRに直列に加わり、RLはCに並列に入る。fcの式はRsがゼロで負荷がないときのもので、目安はRsがR÷10以下、RLがRの10倍以上。Rsが10キロオームでRが10キロオームなら実効的なRは20キロオームでfcは半分になる。 信号源と負荷が、フィルタの R と C に加わる 信号源 Rs 信号源の出力抵抗 R フィルタの R C RL 負荷の入力抵抗 fc = 1 ÷ (2πRC) が成り立つのは、Rs = 0 で、出力に何もつながっていないとき 目安:Rs ≦ R ÷ 10、RL ≧ 10 × R Rs = 10kΩ、R = 10kΩ なら、実効的な R は 20kΩ で fc は半分 RL が R の 10 倍程度だと、直流ゲインは 0.9 倍に落ち、fc は上がる
図2:Rs は R に直列、RL は C に並列に入る。

コンデンサの自己共振で減衰は頭打ちになる

計算上は 1MHz で −56dB でも、実物の 100nF は 1MHz でコンデンサではないかもしれません。積層セラミック 1608 の 100nF は ESL 0.5nH 程度と直列共振して 20MHz 前後でインピーダンスが最小になり、それより上ではインダクタです。減衰はそこで頭打ちです。

10µF なら共振は 2MHz 程度、1nF なら 200MHz 程度で、大容量ほど高周波で効きません。低い fc と高周波の減衰を両立したいときは、大容量と小容量を並列にします(反共振に注意)。高抵抗(100kΩ 以上)も、浮遊容量(0.1〜0.5pF)で高周波をバイパスし、100kΩ と 0.2pF なら 8MHz から上で減衰が止まります。

数十 MHz 以上のノイズには、RC より LC(フェライトビーズとコンデンサ)が向いています。

RC ローパスフィルタの理想特性と、コンデンサの自己共振横軸 100Hz〜1GHz、縦軸 0〜−80dB のボード線図。理想の 1 次特性はカットオフ 1.6kHz から −20dB/decade で下がり続ける。実物(ESL 0.5nH、ESR 20mΩ)は 22MHz 付近で最も深く、それより上で減衰が減る。 計算上の減衰は、コンデンサの自己共振で頭打ちになる R = 1kΩ、C = 100nF(1608、ESL 0.5nH、ESR 20mΩ) 100Hz1kHz10kHz100kHz1MHz10MHz100MHz1GHz 0dB -20dB -40dB -60dB -80dB -100dB 理想の RC 実物:自己共振 fc = 1.6kHz、−3dB 10fc、−20dB 100fc、−40dB 減衰は周波数比で決まる 10 倍で −20dB、100 倍で −40dB。 「遮断」ではなく「減衰」。 100nF は 22MHz から上で コンデンサではなくインダクタ。 減衰はそこで止まる。 数十 MHz 以上を落とすなら 小容量を並列にするか、 フェライトビーズ + C にする。
図3:1kΩ + 100nF の減衰。計算上は下がり続けるが、実物は約 22MHz の共振から上で戻る。

2 段にするとき

同じ R と C を 2 段重ねると、2 段目が 1 段目の負荷になり、fc がずれて傾きも −40dB/decade に届きません。2 段目の R を 1 段目の 10 倍以上(C は 1/10)にします。1kΩ + 100nF の後に 10kΩ + 10nF、といった組み合わせです。

段間にバッファを入れれば同じ R・C を使えます。急峻な特性なら 2 次のアクティブフィルタ(サレン・キーなど)が向いています。

デジタル信号の RC:チャタリング除去

スイッチのチャタリング除去に 10kΩ + 100nF(τ = 1ms)の RC を使うのは定番ですが、信号がゆっくり立ち上がるので、入力がスレッショルド付近に長くとどまります。通常の CMOS 入力では、判定が何度も行き来したり、貫通電流が流れたりします。

なまらせた信号はシュミットトリガ入力に入れます。GPIO は多くがそうですが、データシートで確認し、無ければ 74HC14 などを間に入れます。

RC フィルタの計算機で、ノイズの周波数での減衰量を確認できます。

よくある質問

ノイズを完全に除去するには、カットオフをどこに置けばよいですか。
完全には除去できません。1 次フィルタの減衰は周波数の比で決まり、10 倍で −20dB、100 倍で −40dB です。信号の帯域や応答速度と両立しなければ、次数を上げるか、ノイズ源の対策を優先します。
R と C の組み合わせはどう選べばよいですか。同じ fc なら何でもよいですか。
R が大きいと熱雑音と浮遊容量の影響が増え、小さいと C が大きくなります。Rs ≦ R/10、RL ≧ 10R を満たす範囲(R は 1kΩ〜100kΩ、C は 100pF〜1µF)で選びます。
電源ラインのノイズ除去に RC を使えますか。
R で電圧降下が出るので、数 mA 以下のアナログ部の電源などに限られます。10Ω + 10µF で fc = 1.6kHz、10mA なら降下 0.1V です。それ以上の電流にはフェライトビーズを使います。
位相遅れは何に影響しますか。
フィードバック制御では、位相遅れが位相余裕を減らしてループを不安定にします。複数チャンネルの計測では、RC が違うと時刻のずれになります。

参考にした規格・資料

  • Horowitz & Hill, The Art of Electronics — RC フィルタの周波数特性・位相・整定時間
  • 各 MLCC メーカのインピーダンス特性データ — 自己共振周波数と ESL
  • 各マイコンメーカのデータシート — GPIO のシュミットトリガ特性、ADC のサンプリング容量と入力インピーダンス

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