マイクロストリップの線幅は、層構成が決めている

「50Ω にしたいので線幅を教えてください」には答えられません。線幅は線の下の絶縁層の厚みで決まり、層構成が決まって初めて決まります。

最終更新: 2026-10-30 特性インピーダンスマイクロストリップ層構成基板設計

線幅を決めているのは、線の下の絶縁層

表層のパターンと、そのすぐ下の GND プレーンの組み合わせがマイクロストリップ線路です。特性インピーダンスを決める要素は、パターンの幅 w、パターンの厚み t、プレーンまでの絶縁層の厚み h、絶縁層の比誘電率 εr の 4 つです。

設計者が選べるのは w だけで、t は銅箔厚(1oz なら 35µm 前後、めっき後は 40〜50µm)、h と εr は層構成で決まります。同じ 50Ω でも h が 0.2mm なら w は 0.35mm 前後、0.1mm なら 0.15mm 前後で、h が半分になれば線幅もほぼ半分です。

線幅を先に決めて層構成をあとから変えると、インピーダンスは大きく外れます。先に表層と第 2 層の間を決めてください。

基板の層構成と銅配線の幅・絶縁層の厚さ
基板の層構成と銅配線の幅・絶縁層の厚さ。概念を表すAI生成イラストです。実際の回路・条件は本文の図と説明を参照してください。

4層 1.6mm の「標準構成」で何が起きているか

4層・板厚1.6mmという指定だけでは、表層からL2までの絶縁厚は決まりません。ここでは比較用の仮定としてh=0.2mmとh=0.1mmを使います。実際には発注先が提示する完成後の絶縁厚・銅厚・材料・周波数条件を入手してください。ガラスクロスの品種名だけからプレス後の厚さを固定できません。

図ではh=0.2mmの例を50Ωで約0.35mm幅として比較しています。ただし部品から引き出せるかは、ピッチだけでなくパッド幅・間隙・ビア・製造最小間隔に依存します。細い引き出しを短く使ってから設計幅へ広げる案も含め、パッケージの推奨ランドと製造ルールを確認します。

4 層 1.6mm の標準構成と、表層を薄くした構成の断面左は表層〜第 2 層が 0.2mm 前後の標準構成で、50Ω の線幅は 0.35mm 前後。右は表層〜第 2 層を 0.1mm 以下に薄くした構成で、線幅は 0.15mm 以下。どちらも全体の厚みは 1.6mm。 4層・1.6mmの構成比較例 表層〜第 2 層を薄くするほど、50Ω の線は細くなる h=0.2mmの例 w ≈ 0.35mm h ≈ 0.2mm 第 2 層(GND) コア材(1.0〜1.2mm) 1.6mm 0.35mm幅の引き出しは パッドと間隔から判断 表層を薄くした構成 w ≤ 0.15mm h ≤ 0.1mm 第 2 層(GND) 内層の絶縁層が厚くなる 1.6mm 0.15mm 以下の線なら 引き出しの選択肢が増える
図1:標準の 4 層 1.6mm は表層〜第 2 層が 0.2mm 前後で線幅 0.35mm 前後。0.1mm 以下に薄くすれば 0.15mm 以下。

表層を薄くすると、線幅は 0.1mm 台まで細くなる

表層〜第 2 層を 0.1mm 以下に薄くすれば、50Ω の線幅は 0.15mm 以下になり、細ピッチ部品から引き出せます。そのかわり内層の絶縁層が厚くなり、全体で 1.6mm に収まる構成になります。「インピーダンス対応の 4 層」を標準品で用意しているメーカもあり、最初からそれを指定するのが早道です。

図の線幅はIPC-2141近似による丸めた例(銅厚35µm、εr≈4.3)です。ソルダーレジストや隣接銅箔などは含めていません。計算機・電磁界ソルバ・基板メーカーの値が数%以内で一致する保証はなく、製造用の線幅はメーカーと合意したスタックアップと計算方法で決めます。

マイクロストリップの断面と、絶縁層の厚みごとの 50Ω 線幅左は表層パターン・絶縁層・GND プレーンの断面で、線幅 w、銅箔厚 t、絶縁層厚 h、比誘電率 εr を示す。右は h = 0.2、0.15、0.1、0.075mm のときの 50Ω 線幅 0.35、0.25、0.15、0.10mm の棒グラフ。 線幅を決めるのは、線の下の絶縁層の厚み 同じ 50Ω でも、h が薄いほど線は細くなる(1oz、FR-4、レジストなし) 表層パターン 絶縁層(プリプレグ) GND プレーン w h t εr 設計で選べるのは w だけ。 t は銅箔厚、h と εr は層構成で決まる。 50Ω シングルエンドの線幅(IPC-2141 近似) h = 0.2mm w ≒ 0.35mm 引き出しはランド形状で確認 h = 0.15mm w ≒ 0.25mm ピッチだけでは決まらない h = 0.1mm w ≒ 0.15mm 間隔・ビアも確認 h = 0.075mm w ≒ 0.1mm 製造ルールに照合
図2:50Ω の線幅は、線の下の絶縁層の厚み h で決まる。h が半分なら線幅もほぼ半分。

製造ばらつきで、インピーダンスはどれだけ動くか

設計で 50Ω と計算しても、できあがった基板は 50Ω ちょうどになりません。動く要因は主に 3 つです。

絶縁層の厚み。プリプレグは加熱加圧で樹脂が流れるので、公称に対して ±10% 程度ばらつきます。h が 0.1mm で ±0.01mm なら ±2〜3Ω です。

線幅。エッチングで細くなる方向に ±0.02mm 程度の誤差が乗り、線幅 0.15mm では 13%、±3Ω 前後です。

比誘電率。FR-4 の εr は材料・ガラス布の含有率・周波数で 4.0〜4.7 の幅があり、±0.2 で ±1Ω 程度です。周波数が上がると下がります(1GHz で 4.2 前後、10GHz で 4.0 前後)。

図の45〜55Ωは説明用の範囲で、無管理の基板が必ずその範囲に入るという意味ではありません。厚さ・線幅・材料の許容差を発注先から入手して評価します。インピーダンス管理を依頼する場合も、許容差、クーポン位置、測定方法、合否基準、線幅変更の承認範囲を事前に確認します。

ソルダーレジストの影響は膜厚・材料・線幅に依存します。図の−2〜3Ωは例であり、一律の補正値として引かず、実際の断面を含むモデルで確認します。

製造ばらつきによる 50Ω からのずれ50Ω の線で、絶縁層の厚みは ±2〜3Ω、線幅は ±3Ω 前後、比誘電率は ±1Ω 程度、ソルダーレジストは 2〜3Ω 下がる向きにずれる。合わせると管理なしで 45〜55Ω。 製造ばらつきで、50Ω はどれだけ動くか 仮定したばらつきによる比較例。保証範囲ではない 40Ω 45Ω 50Ω 55Ω 60Ω 絶縁層の厚み 公称に対して ±10% 程度 ±2〜3Ω 線幅 エッチングで ±0.02mm 程度 ±3Ω 前後 比誘電率 εr が ±0.2 違う ±1Ω 程度 ソルダーレジスト εr ≒ 3.5〜4 を塗ると −2〜3Ω 合わせると 説明用の範囲 45〜55Ω
図3:製造ばらつきによる 50Ω からのずれ。管理なしでは 45〜55Ω。

メーカへの依頼は「線幅」ではなく「インピーダンス」で書く

インピーダンス管理の依頼では、線幅の絶対値ではなく、目標のインピーダンスを渡します。メーカは自社の材料と工程で線幅を微調整し、0.15mm で設計した線が 0.16mm になることがあります。

依頼票には、対象のネット、目標インピーダンスと許容差(例:50Ω ±10%、差動 100Ω ±10%)、設計での線幅とギャップ、対象のレイヤと参照プレーンのレイヤを書きます。層構成はメーカの提案を受け、絶縁層の厚みと材料名が入った層構成図を戻してもらいます。この図がないと次の改版で再現できません。メーカが線幅を変えるとギャップも変わるので、隣接パターンとのクリアランスには余裕を持たせます。

あわせて、参照プレーンが途切れていないか(スリットや大きな穴の上ではインピーダンスが跳ね上がる)、線幅を途中で絞っていないか(数 mm 以下なら影響は小さく、長いと不連続点)、ビアの前後で参照プレーンが変わっていないか(変わるとリターン経路が切れる)を確かめます。

メーカー確認前に作る依頼票の記入例(値は仮定)
項目記入例
対象/層/参照面CLK、L1、L2 GND
目標/許容差50Ω、±10%を希望(要合意)
初期の線幅/間隔w=0.15mm、単端、隣接銅との間隔は要確認
材料と完成形状材料名、完成絶縁厚・銅厚、レジスト厚をメーカー記入
確認後の寸法と検査確定w・s、クーポンと判定方法、図面版を記録

手計算と計算機の使い分け

特性インピーダンス計算機で、絶縁厚やεrを変えた場合の線幅の動きを比較できます。近似式の結果を製造保証には使わず、最終的にはメーカーが合意した断面・材料・許容差で照合します。

数 GHz を超えて損失やレジスト、銅箔の粗さまで詰めるなら、電磁界ソルバと低損失材(Megtron、Rogers など)の領域です。

よくある質問

50Ω の線幅を教えてください。
層構成によります。表層〜第 2 層が 0.2mm なら 0.35mm 前後、0.1mm なら 0.15mm 前後です(1oz、FR-4)。メーカから層構成をもらって計算するか、目標インピーダンスを伝えて決めてもらいます。
インピーダンス管理を依頼しないと、どのくらい外れますか。
±10% 程度、50Ω 設計で 45〜55Ω が目安です。USB 2.0 や 100Mbps Ethernet なら問題は少なく、1Gbps を超える信号や反射に敏感なクロックでは依頼してください。
設計した線幅をメーカが勝手に変えるのは問題ないのですか。
管理を依頼した場合、数 %〜10% 変えるのは通常の手順です。問題は隣接パターンとのクリアランスを侵す場合なので、余裕を持たせ、変更後の線幅を戻してもらって次回の改版に反映します。
内層(ストリップライン)でも同じ考え方ですか。
同じです。ストリップラインは上下にプレーンがあるぶん同じ線幅でもインピーダンスが低くなり、50Ω には線幅を細くするか絶縁層を厚くします。ばらつきはマイクロストリップより小さめです。

参考にした規格・資料

  • IPC-2141A — 伝送線路のインピーダンス計算式(マイクロストリップ・ストリップライン)
  • IPC-2221B / IPC-2222 — リジッド基板の設計標準。層構成と導体の一般要件
  • IPC-4101 — 積層板・プリプレグの材料仕様。厚みと εr の公称値

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