マイクロストリップの線幅は、層構成が決めている

「50Ωにしたいので線幅を教えてください」という質問には答えられません。線幅は、その線の下にある絶縁層の厚みで決まります。層構成が決まって初めて線幅が決まり、しかもその線幅は基板メーカが最終的に調整します。

最終更新: 2026-09-14 特性インピーダンスマイクロストリップ層構成基板設計

線幅を決めているのは、線の下の絶縁層

表層に引いたパターンと、そのすぐ下のGNDプレーンの組み合わせがマイクロストリップ線路です。特性インピーダンスを決める要素は4つあります。パターンの幅 w、パターンの厚み t、プレーンまでの絶縁層の厚み h、そして絶縁層の比誘電率 εr です。

このうち設計者が自由に選べるのは w だけで、t は銅箔厚(1oz なら 35µm 前後、めっき後は 40〜50µm)、h と εr は層構成で決まります。同じ 50Ω でも、h が 0.2mm なら w は 0.35mm 前後、h が 0.1mm なら 0.15mm 前後、h が 0.075mm なら 0.1mm 前後になります。h が半分になれば、必要な線幅もほぼ半分です。

つまり、線幅を決める前に「この基板の表層と第2層の間は何mmか」を決めなければいけません。逆に言えば、線幅を先に決めて層構成をあとから変えると、インピーダンスは大きく外れます。

4層 1.6mm の「標準構成」で何が起きているか

基板メーカに「4層 1.6mm」とだけ指定すると、多くの場合は表層〜第2層の絶縁層が 0.2mm 前後の構成になります。中央にコア材(1.0〜1.2mm)を置き、その両側にプリプレグを1〜2枚重ねて表層の銅箔を貼るからです。プリプレグの厚みは 1080 で約 0.07mm、2116 で約 0.11mm、7628 で約 0.19mm が目安で、どれを何枚使うかはメーカが自社の在庫と工程で決めます。

この構成で 50Ω を出そうとすると、線幅は 0.35mm 前後になります。差動 100Ω なら、線幅 0.2mm・ギャップ 0.2mm 程度です。0.5mm ピッチの QFP や 0.8mm ピッチの BGA から 0.35mm の線を引き出すことはできないので、高速信号を扱う基板では「標準構成」をそのまま使えないことが多いです。

表層〜第2層を 0.1mm 以下に薄くすれば、50Ω の線幅は 0.15mm 以下まで細くなり、細ピッチ部品からの引き出しに困らなくなります。そのかわり、内層の絶縁層が厚くなって全体で 1.6mm に収める構成になります。メーカによっては層構成の標準品として「インピーダンス対応の4層」を用意しているので、それを最初から指定するのが早道です。

表層〜第2層の厚みと、50Ω シングルエンドの線幅の目安(1oz、εr≒4.3、IPC-2141 の近似式で算出。メーカの値とは数%ずれます)
絶縁層の厚み h50Ω の線幅 w引き出せる部品ピッチの目安
0.20mm約 0.35mm1.27mm ピッチまで
0.15mm約 0.25mm1.0mm ピッチまで
0.10mm約 0.15mm0.8mm ピッチまで
0.075mm約 0.10mm0.5〜0.65mm ピッチ

近似式の値と、メーカが電磁界ソルバで出す値は数 % ずれます。線幅を決めるときは近似式で当たりをつけ、最終的な線幅はメーカの計算に合わせるのが手順です。

マイクロストリップの断面と、絶縁層の厚みごとの 50Ω 線幅左は表層パターン・絶縁層・GND プレーンの断面で、線幅 w、銅箔厚 t、絶縁層厚 h、比誘電率 εr を示す。右は h = 0.2、0.15、0.1、0.075mm のときの 50Ω 線幅 0.35、0.25、0.15、0.10mm の棒グラフ。 線幅を決めるのは、線の下の絶縁層の厚み 同じ 50Ω でも、h が薄いほど線は細くなる(1oz、FR-4、レジストなし) 表層パターン 絶縁層(プリプレグ) GND プレーン w h t εr 設計で選べるのは w だけ。 t は銅箔厚、h と εr は層構成で決まる。 50Ω シングルエンドの線幅(IPC-2141 近似) h = 0.2mm w ≒ 0.35mm 1.27mm ピッチまで引き出せる h = 0.15mm w ≒ 0.25mm 1.0mm ピッチまで h = 0.1mm w ≒ 0.15mm 0.8mm ピッチまで h = 0.075mm w ≒ 0.1mm 0.5〜0.65mm ピッチ
図1:50Ω の線幅は、線の下の絶縁層の厚み h で決まる。h が半分なら線幅もほぼ半分。

製造ばらつきで、インピーダンスはどれだけ動くか

設計で 50Ω と計算しても、できあがった基板は 50Ω ちょうどにはなりません。動く要因は主に3つです。

絶縁層の厚み。プリプレグは加熱加圧で樹脂が流れるので、厚みは公称に対して ±10% 程度ばらつきます。h が 0.1mm で ±0.01mm 動くと、インピーダンスは ±2〜3Ω 動きます。

線幅。エッチングで設計値より細くなる方向に、±0.02mm 程度の誤差が乗ります。線幅 0.15mm に対して 0.02mm は 13% で、インピーダンスにすると ±3Ω 前後です。線幅が細い構成ほど、この影響が大きくなります。

比誘電率。FR-4 の εr は材料・ガラス布の含有率・周波数で 4.0〜4.7 の幅があります。±0.2 の違いでインピーダンスは ±1Ω 程度です。周波数が上がると εr は下がる(1GHz で 4.2 前後、10GHz で 4.0 前後)ので、どの周波数の値で計算したかも確認が要ります。

これらを合わせると、管理なしで作った基板の 50Ω 線は 45〜55Ω の範囲でばらつくと考えておくのが安全です。メーカに「インピーダンス管理」を依頼すると、メーカは試作クーポンを測定して線幅とプリプレグを調整し、±10%(±5Ω)を保証します。±7%、±5% は追加費用で対応するメーカもあります。

レジストも効きます。表層のパターンにソルダーレジスト(εr≒3.5〜4)を塗ると、インピーダンスは 2〜3Ω 下がります。メーカの計算はレジスト込みなので、自分で近似式を使うときは「レジストなしの値から数 Ω 引く」と覚えておいてください。

メーカへの依頼は「線幅」ではなく「インピーダンス」で書く

インピーダンス管理を依頼するときの基本は、設計の線幅を絶対値として渡すのではなく、目標のインピーダンスを渡すことです。メーカは自社の材料と工程で線幅を微調整するので、こちらが 0.15mm で設計した線を 0.16mm に変えることがあります。

依頼票には次を書きます。

対象のネット(信号名かレイヤとクラス)、目標インピーダンスと許容差(例:50Ω ±10%、差動 100Ω ±10%)、設計での線幅とギャップ、対象のレイヤと参照プレーンのレイヤ。層構成はメーカの提案を受け、絶縁層の厚みと材料名が入った層構成図を戻してもらいます。この層構成図がないと、次の改版で再現できません。

差動線路では、ペアを同じレイヤに引き、ギャップを一定に保つこと、線幅とギャップを CAD のデザインルールで固定しておくことが前提です。メーカが線幅を変える場合、ギャップも連動して変わるので、隣接パターンとのクリアランスに余裕を持たせておきます。

  • 参照プレーンが途切れていないか。プレーンのスリットや大きな穴の上を線が横切ると、そこだけインピーダンスが跳ね上がります。管理してもらったインピーダンスが意味を失います。
  • 線幅を途中で変えていないか。細ピッチ部品の直下だけ線幅を絞る場合、短ければ(数 mm 以下)影響は小さいですが、絞った区間が長いと不連続点になります。
  • ビアの前後で参照プレーンが変わっていないか。表層から内層へ移るとき、参照している GND が変わるとリターン経路が切れます。近くに GND ビアを置きます。

手計算と計算機の使い分け

当サイトの特性インピーダンス計算機は、層構成から線幅の当たりをつける用途です。精度は近似式なりで、細い線(w/h が 1 以下)や厚い銅箔では数 % ずれます。

最終値はメーカに任せる前提であれば、この精度で十分です。むしろ大事なのは、層構成を変えたときに線幅がどれだけ動くかばらつきでどれだけ外れうるかを感覚として持っておくことで、そのために h や εr を振って何度か計算してみてください。

電磁界ソルバが必要になるのは、数 GHz を超える信号で損失まで含めて詰めたいとき、レジストや銅箔の粗さの影響まで見たいときです。そこまでの精度が要る設計では、材料も FR-4 ではなく低損失材(Megtron、Rogers など)を検討する段階です。

よくある質問

50Ω の線幅を教えてください。
層構成によります。表層〜第2層の絶縁層が 0.2mm なら 0.35mm 前後、0.1mm なら 0.15mm 前後です(1oz、FR-4)。まず基板メーカから層構成をもらい、そのうえで計算するか、目標インピーダンスを伝えてメーカに線幅を決めてもらってください。
インピーダンス管理を依頼しないと、どのくらい外れますか。
絶縁層の厚みと線幅と比誘電率のばらつきを合わせて ±10% 程度、つまり 50Ω 設計で 45〜55Ω が目安です。USB 2.0 や 100Mbps Ethernet ならこの範囲で問題になることは少ないです。1Gbps を超える信号や、反射に敏感なクロックでは管理を依頼してください。
設計した線幅をメーカが勝手に変えるのは問題ないのですか。
インピーダンス管理を依頼した場合、メーカが自社工程に合わせて線幅を数 %〜10% 変えるのは通常の手順です。問題になるのは、変えた線幅が隣接パターンとのクリアランスを侵す場合なので、管理対象のパターンまわりは余裕を持たせておいてください。変更後の線幅は必ず戻してもらい、次回の改版に反映します。
内層(ストリップライン)でも同じ考え方ですか。
同じです。ストリップラインは上下にプレーンがあるぶん、同じ線幅でもインピーダンスが低くなり、50Ω を出すには線幅を細くするか絶縁層を厚くする必要があります。また、内層はレジストの影響がなく、εr が全周囲で一定なので、ばらつきはマイクロストリップより小さめです。

参考にした規格・資料

  • IPC-2141A — 伝送線路のインピーダンス計算式(マイクロストリップ・ストリップライン)
  • IPC-2221B / IPC-2222 — リジッド基板の設計標準。層構成と導体の一般要件
  • IPC-4101 — 積層板・プリプレグの材料仕様。厚みと εr の公称値

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