セラミックコンデンサは、電圧をかけると容量が減る

0402 の 10µF / 6.3V に 3.3V をかけると、容量は 3µF 前後しか残りません。定格の半分の電圧で、カタログ値の 7 割が消えます。データシートの「10µF」は、電圧をかけていないときの値です。

最終更新: 2026-09-14 セラミックコンデンサMLCCDC バイアスX7R

なぜ電圧で容量が減るのか

積層セラミックコンデンサ(MLCC)の X5R や X7R は、チタン酸バリウム系の強誘電体を誘電体に使っています。強誘電体は、電界をかけると分極が飽和に近づき、それ以上電界を強めても分極の増え方(=誘電率)が小さくなります。直流電圧をかけた状態での誘電率が、電圧ゼロのときより低くなるのが DC バイアス特性です。

減り方は、誘電体 1 層あたりの電界強度で決まります。同じ容量なら、小さいサイズや低い定格電圧の品種ほど誘電体が薄く、同じ電圧で電界が強くなり、容量の減少が大きくなります。逆に、大きいサイズ・高い定格電圧の品種は誘電体が厚く、減少が小さいです。

C0G(NP0)は常誘電体を使うので、DC バイアスでの容量変化はほぼゼロです。ただし誘電率が低いため、同じサイズで取れる容量は X7R の 1/10〜1/100 です。

どのくらい減るか

メーカごと・品種ごとに違うので、必ず個別の特性図で確認します。目安として、10µF に 3.3V をかけた場合の残存容量は次のような範囲です。

10µF X5R/X7R に 3.3V をかけたときの残存容量の目安(品種により大きく異なる)
サイズ定格電圧3.3V での残存容量減少率
1005(0402)6.3V2.5〜4µF−60〜−75%
1608(0603)6.3V4〜5µF−50〜−60%
1608(0603)10V5〜6.5µF−35〜−50%
2012(0805)10V6〜7.5µF−25〜−40%
2012(0805)25V7.5〜9µF−10〜−25%
3216(1206)25V8.5〜9.5µF−5〜−15%

同じ 10µF でも、1005 の 6.3V 品と 3216 の 25V 品では、3.3V での実効容量が 3 倍違います。「10µF が要る」なら、小さいサイズで 10µF を選ぶのではなく、必要な電圧で 10µF 残る品種を選びます。それが 22µF や 47µF の品番になることもあります。

電圧を定格の 1/3 以下に抑えると、多くの品種で減少は 2 割以内に収まります。3.3V の回路には 10V 以上、5V には 16V 以上、12V には 35〜50V の定格を選ぶと、DC バイアスの影響を小さくできます。

MLCC の DC バイアス特性の傾向横軸に直流電圧 0〜10V、縦軸に残存容量 0〜100%。1005/6.3V、1608/10V、2012/25V の 3 本の曲線を描き、3.3V での残存率 32%、55%、85% を点で示す。 同じ 10µF でも、サイズと定格電圧で残る容量が 3 倍違う 典型的な傾向を示すモデル曲線。実際の値は品番ごとの特性図で確認する 0V 2V 4V 6V 8V 10V 0% 25% 50% 75% 100% 残存容量 直流電圧 1005 / 6.3V 1608 / 10V 2012 / 25V 3.3V 32% 55% 85% 曲線は C/C₀ = 1 ÷ (1 + (V/Vk)²) のモデルで、3.3V での代表的な残存率に合わせてある。
図1:10µF の X5R/X7R に直流電圧をかけたときの残存容量の傾向(モデル曲線)。同じ 3.3V でも、1005/6.3V 品は 3 割、2012/25V 品は 8 割以上残る。

温度・経年・許容差も重なる

DC バイアスだけではありません。実効容量には、さらに 3 つの要因が乗ります。

温度特性。X7R は −55〜+125℃ で ±15%、X5R は −55〜+85℃ で ±15%。Y5V は −30〜+85℃ で +22 / −82% で、高温では容量の 2 割しか残りません。Y5V は電源のデカップリングに使うべきではありません。

経年変化(エージング)。強誘電体は時間とともに分極が整列し、容量が対数的に減ります。X7R で 10 倍の時間あたり 1〜2.5%(1000 時間で −3〜−7%)。半田付けでキュリー温度(約 125℃)を超えると初期化され、また減り始めます。

許容差。K = ±10%、M = ±20%。

これらを最悪側で重ねると、1608 / 6.3V / 10µF / X5R / M 級の場合、3.3V・85℃・1 年後で、10µF × 0.8(許容差)× 0.45(DC バイアス)× 0.85(温度)× 0.95(経年)≒ 2.9µF。カタログ値の 3 割です。

許容差以外の要因はデータシートの特性図に載っています。DC バイアス特性の図は、多くのメーカが Web 上の部品検索ツールで品番ごとに表示しているので、選定時に必ず見てください。

減った容量が何に効くか

LDO の安定性。LDO の出力コンデンサは、位相補償の一部です。データシートに「出力に 1µF 以上のセラミック」とあれば、それは実効容量です。0402 / 6.3V / 1µF を 3.3V 出力に使うと実効 0.5µF で、条件を満たさず発振することがあります。

スイッチング電源の出力リップルと制御ループ。出力容量が半分になると、リップル電圧は倍になり、制御ループのクロスオーバー周波数が上がって位相余裕が減ります。設計時に実効容量で計算していないと、実機で発振気味になります。

時定数・フィルタ。RC の時定数や LC のカットオフが、容量に比例してずれます。タイミングに使うコンデンサ、アナログフィルタ、発振回路には C0G を使います。

音響ノイズ。強誘電体は圧電性も持つので、交流電圧をかけると機械的に振動し、基板を鳴らします(鳴き)。可聴域のリップルを持つ電源のコンデンサや、音声信号のカップリングコンデンサに X7R を使うと出ます。対策は C0G、フィルムコンデンサ、あるいは鳴き対策品(金属端子付きなど)です。

選定の手順

  1. 回路で必要な容量を、使用電圧・最高温度で必要な実効容量として決める。
  2. 候補の品番の DC バイアス特性図で、使用電圧での残存率を読む。温度特性(±15%)と許容差を掛ける。
  3. 実効容量が足りなければ、定格電圧を上げる、サイズを上げる、公称容量を上げる、のいずれかで足りる品番を探す。
  4. タイミング・フィルタ・発振・音声には C0G。1µF を超える C0G は大きく高価なので、そこはフィルムコンデンサも候補にする。
  5. 評価では、実効容量を LCR メータで DC バイアスをかけて測るか、回路の動作(LDO の過渡応答、リップル)で確認する。

よくある質問

定格電圧の何割で使えば DC バイアスの影響が小さいですか。
品種によりますが、定格の 1/3 以下なら減少は 2 割以内に収まることが多いです。3.3V なら 10V 以上、5V なら 16V 以上、12V なら 35V 以上の定格を目安にしてください。ただし小型・大容量の品種は 1/3 でも 3〜4 割減ることがあるので、特性図で確認します。
X5R と X7R はどちらを使うべきですか。
X7R は 125℃ まで、X5R は 85℃ まで ±15% を保証します。DC バイアス特性は同程度で、X5R のほうが同じサイズで大容量の品種が多いです。85℃ を超える環境でなければ X5R で問題ありません。どちらも Y5V よりはるかに安定です。
104 や 106 のコードは実効容量ですか。
いいえ、電圧をかけていない状態の公称容量です。104 = 0.1µF、106 = 10µF。実効容量は使用電圧・温度・経年で減ります。
タンタルやアルミ電解のほうがよいですか。
タンタルや導電性高分子アルミは DC バイアスで容量が減らず、経年変化も小さいです。ただし ESR が高く(高分子で 10〜50mΩ、電解で数百 mΩ)、高周波のデカップリングには向きません。大容量が要る場所(バルクコンデンサ)には高分子、高周波には MLCC、という使い分けが一般的です。

参考にした規格・資料

  • EIA RS-198 / IEC 60384-9 — 温度特性の記号(X7R、X5R、C0G など)の定義
  • 各 MLCC メーカのデータシート・特性図 — 品番ごとの DC バイアス特性、温度特性、エージング率
  • 村田製作所・TDK・太陽誘電の技術資料 — DC バイアス特性の原理と、鳴きの対策

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