セラミックコンデンサは、電圧をかけると容量が減る
0402 の 10µF / 6.3V に 3.3V をかけると、容量は 3µF 前後しか残りません。定格の半分の電圧で、カタログ値の 7 割が消えます。データシートの「10µF」は、電圧をかけていないときの値です。
なぜ電圧で容量が減るのか
積層セラミックコンデンサ(MLCC)の X5R や X7R は、チタン酸バリウム系の強誘電体を誘電体に使っています。強誘電体は、電界をかけると分極が飽和に近づき、それ以上電界を強めても分極の増え方(=誘電率)が小さくなります。直流電圧をかけた状態での誘電率が、電圧ゼロのときより低くなるのが DC バイアス特性です。
減り方は、誘電体 1 層あたりの電界強度で決まります。同じ容量なら、小さいサイズや低い定格電圧の品種ほど誘電体が薄く、同じ電圧で電界が強くなり、容量の減少が大きくなります。逆に、大きいサイズ・高い定格電圧の品種は誘電体が厚く、減少が小さいです。
C0G(NP0)は常誘電体を使うので、DC バイアスでの容量変化はほぼゼロです。ただし誘電率が低いため、同じサイズで取れる容量は X7R の 1/10〜1/100 です。
どのくらい減るか
メーカごと・品種ごとに違うので、必ず個別の特性図で確認します。目安として、10µF に 3.3V をかけた場合の残存容量は次のような範囲です。
| サイズ | 定格電圧 | 3.3V での残存容量 | 減少率 |
|---|---|---|---|
| 1005(0402) | 6.3V | 2.5〜4µF | −60〜−75% |
| 1608(0603) | 6.3V | 4〜5µF | −50〜−60% |
| 1608(0603) | 10V | 5〜6.5µF | −35〜−50% |
| 2012(0805) | 10V | 6〜7.5µF | −25〜−40% |
| 2012(0805) | 25V | 7.5〜9µF | −10〜−25% |
| 3216(1206) | 25V | 8.5〜9.5µF | −5〜−15% |
同じ 10µF でも、1005 の 6.3V 品と 3216 の 25V 品では、3.3V での実効容量が 3 倍違います。「10µF が要る」なら、小さいサイズで 10µF を選ぶのではなく、必要な電圧で 10µF 残る品種を選びます。それが 22µF や 47µF の品番になることもあります。
電圧を定格の 1/3 以下に抑えると、多くの品種で減少は 2 割以内に収まります。3.3V の回路には 10V 以上、5V には 16V 以上、12V には 35〜50V の定格を選ぶと、DC バイアスの影響を小さくできます。
温度・経年・許容差も重なる
DC バイアスだけではありません。実効容量には、さらに 3 つの要因が乗ります。
温度特性。X7R は −55〜+125℃ で ±15%、X5R は −55〜+85℃ で ±15%。Y5V は −30〜+85℃ で +22 / −82% で、高温では容量の 2 割しか残りません。Y5V は電源のデカップリングに使うべきではありません。
経年変化(エージング)。強誘電体は時間とともに分極が整列し、容量が対数的に減ります。X7R で 10 倍の時間あたり 1〜2.5%(1000 時間で −3〜−7%)。半田付けでキュリー温度(約 125℃)を超えると初期化され、また減り始めます。
許容差。K = ±10%、M = ±20%。
これらを最悪側で重ねると、1608 / 6.3V / 10µF / X5R / M 級の場合、3.3V・85℃・1 年後で、10µF × 0.8(許容差)× 0.45(DC バイアス)× 0.85(温度)× 0.95(経年)≒ 2.9µF。カタログ値の 3 割です。
許容差以外の要因はデータシートの特性図に載っています。DC バイアス特性の図は、多くのメーカが Web 上の部品検索ツールで品番ごとに表示しているので、選定時に必ず見てください。
減った容量が何に効くか
LDO の安定性。LDO の出力コンデンサは、位相補償の一部です。データシートに「出力に 1µF 以上のセラミック」とあれば、それは実効容量です。0402 / 6.3V / 1µF を 3.3V 出力に使うと実効 0.5µF で、条件を満たさず発振することがあります。
スイッチング電源の出力リップルと制御ループ。出力容量が半分になると、リップル電圧は倍になり、制御ループのクロスオーバー周波数が上がって位相余裕が減ります。設計時に実効容量で計算していないと、実機で発振気味になります。
時定数・フィルタ。RC の時定数や LC のカットオフが、容量に比例してずれます。タイミングに使うコンデンサ、アナログフィルタ、発振回路には C0G を使います。
音響ノイズ。強誘電体は圧電性も持つので、交流電圧をかけると機械的に振動し、基板を鳴らします(鳴き)。可聴域のリップルを持つ電源のコンデンサや、音声信号のカップリングコンデンサに X7R を使うと出ます。対策は C0G、フィルムコンデンサ、あるいは鳴き対策品(金属端子付きなど)です。
選定の手順
- 回路で必要な容量を、使用電圧・最高温度で必要な実効容量として決める。
- 候補の品番の DC バイアス特性図で、使用電圧での残存率を読む。温度特性(±15%)と許容差を掛ける。
- 実効容量が足りなければ、定格電圧を上げる、サイズを上げる、公称容量を上げる、のいずれかで足りる品番を探す。
- タイミング・フィルタ・発振・音声には C0G。1µF を超える C0G は大きく高価なので、そこはフィルムコンデンサも候補にする。
- 評価では、実効容量を LCR メータで DC バイアスをかけて測るか、回路の動作(LDO の過渡応答、リップル)で確認する。
よくある質問
定格電圧の何割で使えば DC バイアスの影響が小さいですか。
X5R と X7R はどちらを使うべきですか。
104 や 106 のコードは実効容量ですか。
タンタルやアルミ電解のほうがよいですか。
参考にした規格・資料
- EIA RS-198 / IEC 60384-9 — 温度特性の記号(X7R、X5R、C0G など)の定義
- 各 MLCC メーカのデータシート・特性図 — 品番ごとの DC バイアス特性、温度特性、エージング率
- 村田製作所・TDK・太陽誘電の技術資料 — DC バイアス特性の原理と、鳴きの対策