セラミックコンデンサは、電圧をかけると容量が減る

0402 の 10µF / 6.3V に定格の約半分の 3.3V をかけると、容量は 3µF 前後(カタログ値の 3 割)しか残りません。データシートの「10µF」は、電圧をかけていないときの値です。

最終更新: 2026-10-28 セラミックコンデンサMLCCDC バイアスX7R

電圧で容量が減る仕組み

X5R や X7R の MLCC は、チタン酸バリウム系の強誘電体を使っています。強誘電体は電界をかけると分極が飽和に近づいて誘電率が下がり、直流電圧をかけた状態の誘電率が電圧ゼロのときより低くなるのが DC バイアス特性です。

減り方は誘電体 1 層あたりの電界強度で決まります。小さいサイズや低い定格電圧の品種ほど誘電体が薄く、同じ電圧でも大きく減ります(図 1)。

C0G(NP0)は常誘電体なので、容量変化はほぼゼロです。ただし誘電率が低く、同じサイズで取れる容量は X7R の 1/10〜1/100 です。

直流電圧で実効容量が減るセラミックコンデンサ
直流電圧で実効容量が減るセラミックコンデンサ。概念を表すAI生成イラストです。実際の回路・条件は本文の図と説明を参照してください。
誘電体の厚さと電界の強さ同じ 3.3V をかけた 2 つのコンデンサの断面模式図。誘電体が薄い 1005/6.3V 品は電界が強く、3.3V での容量の減少は −60〜−75%。誘電体が厚い 3216/25V 品は電界が弱く、減少は −5〜−15%。 同じ 3.3V でも、誘電体が薄いほど電界が強くなる 10µF の X5R/X7R。板 2 枚で誘電体 1 層をはさんだ模式図(減少率は表の値) 1005 / 6.3V 誘電体が薄い品種 3.3V 薄い 誘電体 電界 強い 3.3V での容量の減少 −60〜−75% 3216 / 25V 誘電体が厚い品種 3.3V 厚い 誘電体 電界 弱い 3.3V での容量の減少 −5〜−15%
図1:同じ 3.3V でも、誘電体が薄いほど電界が強い。

どのくらい減るか

品種ごとに違うので、特性図で確認します。10µF に 3.3V をかけた目安です。

10µF X5R/X7R に 3.3V をかけたときの残存容量の目安(品種により大きく異なる)
サイズ定格電圧3.3V での残存容量減少率
1005(0402)6.3V2.5〜4µF−60〜−75%
1608(0603)6.3V4〜5µF−50〜−60%
1608(0603)10V5〜6.5µF−35〜−50%
2012(0805)10V6〜7.5µF−25〜−40%
2012(0805)25V7.5〜9µF−10〜−25%
3216(1206)25V8.5〜9.5µF−5〜−15%

同じ 10µF でも、1005 の 6.3V 品と 3216 の 25V 品では 3.3V での実効容量が 3 倍違います。「10µF が要る」なら、必要な電圧で 10µF 残る品種を選びます。22µF や 47µF の品番になることもあります。

定格電圧に余裕があるほど減少は小さくなります。目安は 3.3V に 10V 以上、5V に 16V 以上、12V に 35〜50V ですが、10µF の 10V 品でも 3.3V で 25〜50% 減ります。

MLCC の DC バイアス特性の傾向横軸に直流電圧 0〜10V、縦軸に残存容量 0〜100%。1005/6.3V、1608/10V、2012/25V の 3 本の曲線を描き、3.3V での残存率 32%、55%、85% を点で示す。 同じ 10µF でも、サイズと定格電圧で残る容量が 3 倍違う 典型的な傾向を示すモデル曲線。実際の値は品番ごとの特性図で確認する 0V 2V 4V 6V 8V 10V 0% 25% 50% 75% 100% 残存容量 直流電圧 1005 / 6.3V 1608 / 10V 2012 / 25V 3.3V 32% 55% 85% 曲線は C/C₀ = 1 ÷ (1 + (V/Vk)²) のモデルで、3.3V での代表的な残存率に合わせてある。
図2:10µF の残存容量(モデル)。

温度・経年・許容差も重なる

DC バイアスのほかに 3 つの要因が乗ります。温度特性。X7R は −55〜+125℃ で ±15%、X5R は −55〜+85℃ で ±15%。Y5V は −30〜+85℃ で +22 / −82% と大きく、電源のデカップリングに使うべきではありません。

経年変化。容量は対数的に減り、X7R で 10 倍の時間あたり 1〜2.5%(1000 時間で −3〜−7%)です。半田付けでキュリー温度(約 125℃)を超えると初期化されます。

許容差。K = ±10%、M = ±20%。

最悪側で重ねると、1608 / 6.3V / 10µF / X5R / M 級を 3.3V・85℃・1 年後に使う場合は 10µF × 0.8 × 0.45 × 0.85 × 0.95 ≒ 2.9µF(図 3)。

許容差以外は特性図で分かります。

実効容量の見積もり10µF のカタログ値に、許容差 ×0.8、DC バイアス ×0.45、温度 ×0.85、経年 ×0.95 を順に掛けると、実効容量は約 2.9µF(カタログ値の 3 割)になる棒グラフ。 最悪側で重ねると、10µF が 2.9µF になる 1608 / 6.3V / 10µF / X5R / M 級を 3.3V・85℃・1 年後に使う場合 10µF カタログ値 ×0.8 許容差 M 級 ×0.45 DC バイアス 3.3V ×0.85 温度 85℃ ×0.95 経年 1 年後 ≒ 2.9µF 実効容量 カタログ値の 3 割
図3:最悪側の係数を順に掛けた実効容量。

減った容量が影響するところ

LDO の安定性。出力コンデンサは位相補償の一部で、データシートの最小容量は実効容量の指定です。0402 / 6.3V / 1µF は 3.3V 出力で実効 0.5µF となり、発振することがあります。

スイッチング電源。出力容量が半分になると、リップル電圧は倍になり、クロスオーバー周波数が上がって位相余裕が減ります。

時定数・フィルタ。RC の時定数や LC のカットオフがずれます。タイミング・フィルタ・発振回路には C0G を使います。

音響ノイズ。強誘電体は圧電性も持つので、交流電圧で振動して基板を鳴らします(鳴き)。可聴域のリップルの電源や音声のカップリングで出ます。対策は C0G かフィルムコンデンサです。

容量が減ったときの影響左は LDO。最小 1µF の条件に対し、1µF の部品が 3.3V 出力では実効 0.5µF になり不足する。右はスイッチング電源。出力容量が半分になると、リップル電圧が 2 倍、クロスオーバー周波数が上昇、位相余裕が減少する。 減った容量が回路に影響する 2 つの例 公称容量ではなく、実効容量で評価する LDO の出力コンデンサ データシートの最小値 1µF 不足 公称 1µF 実効 0.5µF 0402 / 6.3V 3.3V 出力時 条件を満たさず発振することがある スイッチング電源の出力コンデンサ 出力容量が 半分になる リップル電圧が 2 倍 クロスオーバー周波数が上がる 位相余裕が減る 設計で実効容量を使っていないと実機で発振気味になる
図4:LDO とスイッチング電源への影響。

選定の手順

セラミックコンデンサを選ぶときは、定格容量だけでなく、使用電圧で容量がどれだけ残るかを確認してください。

  1. 使用電圧・最高温度で必要な実効容量を決め、候補品番の特性図で残存率を読んで、温度特性(±15%)と許容差を掛ける。
  2. 足りなければ、定格電圧・サイズ・公称容量のいずれかを上げる。
  3. タイミング・フィルタ・発振・音声には C0G。1µF を超える C0G は大きく高価なので、フィルムコンデンサも候補にする。
  4. LCR メータで DC バイアスをかけて実効容量を測るか、LDO の過渡応答やリップルで確認する。

よくある質問

定格電圧の何割で使えば DC バイアスの影響が小さいですか。
定格の 1/3 以下が目安ですが、小型・大容量の品種は 1/3 でも 3〜4 割減ることがあります。
X5R と X7R はどちらを使うべきですか。
X7R は 125℃ まで、X5R は 85℃ まで ±15% を保証します。DC バイアス特性は同程度で、同じサイズなら X5R のほうが大容量です。
104 や 106 のコードは実効容量ですか。
いいえ、電圧をかけていない状態の公称容量です(104 = 0.1µF、106 = 10µF)。
タンタルやアルミ電解のほうがよいですか。
タンタルや導電性高分子アルミは DC バイアスで容量が減らず、経年変化も小さいですが、ESR が高く(高分子で 10〜50mΩ、電解で数百 mΩ)、高周波には向きません。バルクには高分子、高周波には MLCC が一般的です。

参考にした規格・資料

  • EIA RS-198 / IEC 60384-9 — 温度特性の記号(X7R、X5R、C0G など)の定義
  • 各 MLCC メーカのデータシート・特性図 — 品番ごとの DC バイアス特性、温度特性、エージング率
  • 村田製作所・TDK・太陽誘電の技術資料 — DC バイアス特性の原理と、鳴きの対策

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