セラミックコンデンサは、電圧をかけると容量が減る
0402 の 10µF / 6.3V に定格の約半分の 3.3V をかけると、容量は 3µF 前後(カタログ値の 3 割)しか残りません。データシートの「10µF」は、電圧をかけていないときの値です。
電圧で容量が減る仕組み
X5R や X7R の MLCC は、チタン酸バリウム系の強誘電体を使っています。強誘電体は電界をかけると分極が飽和に近づいて誘電率が下がり、直流電圧をかけた状態の誘電率が電圧ゼロのときより低くなるのが DC バイアス特性です。
減り方は誘電体 1 層あたりの電界強度で決まります。小さいサイズや低い定格電圧の品種ほど誘電体が薄く、同じ電圧でも大きく減ります(図 1)。
C0G(NP0)は常誘電体なので、容量変化はほぼゼロです。ただし誘電率が低く、同じサイズで取れる容量は X7R の 1/10〜1/100 です。
どのくらい減るか
品種ごとに違うので、特性図で確認します。10µF に 3.3V をかけた目安です。
| サイズ | 定格電圧 | 3.3V での残存容量 | 減少率 |
|---|---|---|---|
| 1005(0402) | 6.3V | 2.5〜4µF | −60〜−75% |
| 1608(0603) | 6.3V | 4〜5µF | −50〜−60% |
| 1608(0603) | 10V | 5〜6.5µF | −35〜−50% |
| 2012(0805) | 10V | 6〜7.5µF | −25〜−40% |
| 2012(0805) | 25V | 7.5〜9µF | −10〜−25% |
| 3216(1206) | 25V | 8.5〜9.5µF | −5〜−15% |
同じ 10µF でも、1005 の 6.3V 品と 3216 の 25V 品では 3.3V での実効容量が 3 倍違います。「10µF が要る」なら、必要な電圧で 10µF 残る品種を選びます。22µF や 47µF の品番になることもあります。
定格電圧に余裕があるほど減少は小さくなります。目安は 3.3V に 10V 以上、5V に 16V 以上、12V に 35〜50V ですが、10µF の 10V 品でも 3.3V で 25〜50% 減ります。
温度・経年・許容差も重なる
DC バイアスのほかに 3 つの要因が乗ります。温度特性。X7R は −55〜+125℃ で ±15%、X5R は −55〜+85℃ で ±15%。Y5V は −30〜+85℃ で +22 / −82% と大きく、電源のデカップリングに使うべきではありません。
経年変化。容量は対数的に減り、X7R で 10 倍の時間あたり 1〜2.5%(1000 時間で −3〜−7%)です。半田付けでキュリー温度(約 125℃)を超えると初期化されます。
許容差。K = ±10%、M = ±20%。
最悪側で重ねると、1608 / 6.3V / 10µF / X5R / M 級を 3.3V・85℃・1 年後に使う場合は 10µF × 0.8 × 0.45 × 0.85 × 0.95 ≒ 2.9µF(図 3)。
許容差以外は特性図で分かります。
減った容量が影響するところ
LDO の安定性。出力コンデンサは位相補償の一部で、データシートの最小容量は実効容量の指定です。0402 / 6.3V / 1µF は 3.3V 出力で実効 0.5µF となり、発振することがあります。
スイッチング電源。出力容量が半分になると、リップル電圧は倍になり、クロスオーバー周波数が上がって位相余裕が減ります。
時定数・フィルタ。RC の時定数や LC のカットオフがずれます。タイミング・フィルタ・発振回路には C0G を使います。
音響ノイズ。強誘電体は圧電性も持つので、交流電圧で振動して基板を鳴らします(鳴き)。可聴域のリップルの電源や音声のカップリングで出ます。対策は C0G かフィルムコンデンサです。
選定の手順
セラミックコンデンサを選ぶときは、定格容量だけでなく、使用電圧で容量がどれだけ残るかを確認してください。
- 使用電圧・最高温度で必要な実効容量を決め、候補品番の特性図で残存率を読んで、温度特性(±15%)と許容差を掛ける。
- 足りなければ、定格電圧・サイズ・公称容量のいずれかを上げる。
- タイミング・フィルタ・発振・音声には C0G。1µF を超える C0G は大きく高価なので、フィルムコンデンサも候補にする。
- LCR メータで DC バイアスをかけて実効容量を測るか、LDO の過渡応答やリップルで確認する。
よくある質問
定格電圧の何割で使えば DC バイアスの影響が小さいですか。
X5R と X7R はどちらを使うべきですか。
104 や 106 のコードは実効容量ですか。
タンタルやアルミ電解のほうがよいですか。
参考にした規格・資料
- EIA RS-198 / IEC 60384-9 — 温度特性の記号(X7R、X5R、C0G など)の定義
- 各 MLCC メーカのデータシート・特性図 — 品番ごとの DC バイアス特性、温度特性、エージング率
- 村田製作所・TDK・太陽誘電の技術資料 — DC バイアス特性の原理と、鳴きの対策