配線容量と、ドライバがそれを駆動できるか

50pF の負荷は、8mA のドライバで 20ns かけて 3.3V まで充電されます。50MHz で振れば 27mW を消費します。配線容量は「寄生」と呼ばれますが、タイミングと消費電力の両方に、はっきり数字で効きます。

最終更新: 2026-09-14 配線容量寄生容量ドライバ消費電力

配線 1cm は 1pF 前後

プレーン上の配線の単位長さあたりの容量は、特性インピーダンス Z₀ と伝搬遅延 tpd から C = tpd ÷ Z₀ で出せます。50Ω のマイクロストリップ(6.5ps/mm)なら 0.13pF/mm、1cm で 1.3pF。内層のストリップライン(7ps/mm)なら 1.4pF/cm。細くてプレーンから遠い高インピーダンスの配線(100Ω)なら 0.65pF/cm と半分です。

配線に何がつながるかで、容量はさらに増えます。CMOS の入力ピンは 3〜10pF、ESD 保護ダイオードは 1〜数 pF(高速信号用の低容量品で 0.2〜0.5pF)、コネクタのピンで 1〜3pF、ビア 1 個で 0.3〜0.5pF。

たとえば、10cm の配線に受信 IC が 3 個(各 5pF)、ESD 保護が 1 個(3pF)、コネクタ 1 個(2pF)なら、13 + 15 + 3 + 2 = 33pF。基板間をフラットケーブル(50〜100pF/m)で 30cm 延ばせば、さらに 15〜30pF 加わって 50〜60pF です。

配線につながるものの容量の目安
要素容量備考
50Ω マイクロストリップ1.3pF/cmZ₀ が高いほど小さい
CMOS 入力ピン3〜10pFデータシートの Cin
ESD 保護ダイオード1〜5pF高速用の低容量品は 0.5pF 以下
ビア0.3〜0.5pF基板厚・パッド径による
コネクタのピン1〜3pF
フラットケーブル50〜100pF/m隣接線を GND にすると増える
オシロのパッシブプローブ(10:1)10〜15pF測ると波形が変わる
信号線の負荷容量の内訳と充電時間ドライバから出た配線に ESD 保護、CMOS 入力 3 個、コネクタがつながり、容量の合計が 33pF になる図。右に、8mA の定電流で 15pF と 50pF を 3.3V まで充電する時間の比較。 容量は足し算。充電時間は C × ΔV ÷ I 配線 10cm、受信 IC 3 個、ESD 保護、コネクタの例 ドライバ 8mA 配線 10cm:13pF ESD 3pF IC 入力 5pF IC 入力 5pF IC 入力 5pF コネクタ 2pF 合計 33pF(ケーブルを足せば 50pF 超) 10ns 20ns 30ns 3.3V 50pF:20ns 15pF:6ns 8mA で 3.3V まで t = C × 3.3V ÷ 8mA 20ns の立ち上がりは、20MHz(半周期 25ns)ではもう成り立たない。 消費電力は C × V² × f。50pF × 3.3² × 50MHz = 27mW/本。
図1:1 本の信号線にぶら下がる容量の足し算と、それをドライバの電流で充電する時間。33pF なら 8mA で約 14ns、50pF で 20ns。

充電にかかる時間

ドライバが出力できる電流を I、負荷容量を C とすると、電圧を ΔV 上げるのに t = C × ΔV ÷ I かかります。C = 50pF、ΔV = 3.3V、I = 8mA なら 20ns。データシートの IOH / IOL(4mA、8mA、12mA など)は、出力電圧が規定の VOH / VOL にあるときの保証電流なので、この計算は保守的な見積もりです。

もう少し実態に近いのは、出力を抵抗 Ron とみなした RC の充電です。VOL = 0.4V で IOL = 8mA なら Ron ≒ 50Ω。τ = 50Ω × 50pF = 2.5ns で、10%→90% の立ち上がりは 2.2τ = 5.5ns。これに IC 自身の遅延を足したものが、受信端で見える立ち上がりです。

20MHz のクロックは周期 50ns で、High と Low がそれぞれ 25ns。立ち上がりと立ち下がりに 5〜6ns ずつかかると、それだけで周期の 2 割が遷移に使われ、デューティも崩れます。50MHz(半周期 10ns)ではもう成立しません。負荷容量が大きい配線では、周波数の上限は駆動能力で決まります

ドライブ能力の設定を持つマイコン・FPGA では、必要な負荷に対して最小の設定を選びます。強い設定はエッジが速くなるぶん、リンギング・クロストーク・放射ノイズが増えます。

消費電力は C × V² × f

容量を V まで充電すると ½CV² のエネルギーがドライバの抵抗で熱になり、放電でもう ½CV² が熱になります。1 周期で CV²、周波数 f で振れば P = C × V² × f。50pF × 3.3² × 50MHz = 27mW。16 本のパラレルバスなら 0.44W で、マイコンのコア消費電力を超えることがあります。

この電力はドライバ側の IC で発生します。I/O の消費電力がデータシートで別に規定されているのはこのためで、コアの電力に I/O の CV²f を足したものが実際の消費電力です。

電力を減らす手段は式のとおりで、C を減らす(配線を短く、受信端を減らす、低容量の ESD 素子)、V を下げる(3.3V → 1.8V で 1/3.4)、f を下げる(不要なときはクロックを止める)です。電池駆動で「計算より消費電流が多い」場合、常時トグルしているクロック線の CV²f が原因のことがあります。

プローブをつなぐと波形が変わる

10:1 のパッシブプローブは 10〜15pF の容量を持ちます。33pF の配線にプローブをつなぐと 45pF になり、立ち上がりは 3 割遅くなります。測っている波形は、プローブをつないだ状態の波形で、外した状態とは違います。

動作がぎりぎりの回路で、「プローブを当てると動く/当てないと動かない」という現象はこれです。プローブの容量が、不足していたホールド時間を稼いでいたり、リンギングを鈍らせていたりします。

影響を減らすには、容量 1pF 以下のアクティブプローブを使うか、プローブの容量を最初から負荷に含めて設計するか、動作確認をプローブなしで(LED や別のピンの出力で)行います。

容量として扱えるのは、短い配線だけ

ここまでの「容量」の見方は、配線全体が同じ電圧とみなせる、つまり集中定数で扱える長さでの話です。エッジの速いドライバと長い配線では、配線は容量ではなく伝送線路で、ドライバが見るのは容量ではなく特性インピーダンス(50Ω)です。

その領域では、「50pF を充電する」のではなく「50Ω に電流を流す」ことになり、立ち上がり時間は負荷容量ではなく反射で決まります。境目は配線は何 mm から伝送線路になるかで扱っています。

配線容量の計算機は、配線の寸法から容量を出します。I/O バッファの駆動計算機は、負荷容量とドライバの能力から立ち上がり時間と消費電力を出します。

よくある質問

GPIO で長い配線(1m のケーブル)を駆動できますか。
1m のケーブルは 50〜100pF で、8mA の GPIO なら立ち上がりは 20〜40ns です。100kHz 程度の信号なら問題ありません。それ以上の速さや、ノイズのある環境では、ラインドライバ(RS-422/485 など)を使います。GPIO の絶対最大定格(ピンあたりの電流)も確認してください。
配線容量を減らすには線幅を細くすればよいですか。
細くすると特性インピーダンスが上がり、容量は減ります(50Ω → 100Ω で半分)。ただしインピーダンスが上がると、同じ遷移に対する反射が大きくなり、クロストークも受けやすくなります。容量を減らす効果より、配線を短くする・受信端を減らす効果のほうが大きいことが多いです。
ドライバのデータシートの「負荷容量 50pF」は何を意味しますか。
伝搬遅延や遷移時間の規定値を測定したときの負荷条件です。実際の負荷がそれより大きければ遅延・遷移時間は規定値より悪化し、小さければ良くなります。実際の負荷容量を見積もって、規定値からの差を補正してください。
I/O の消費電力は本当にそんなに大きいですか。
本数と周波数によります。50MHz でトグルする 16 ビットバスで各 30pF なら 16 × 30p × 3.3² × 50M = 0.26W です。低速の GPIO や、ほとんどトグルしない信号線では無視できます。常時動いているクロック線とデータバスが支配的です。

参考にした規格・資料

  • 各ロジック IC・マイコンメーカのデータシート — IOH / IOL、入力容量、負荷容量の試験条件、I/O 消費電力
  • IPC-2141A — 伝送線路の特性インピーダンスと単位長さあたりの容量
  • Tektronix / Keysight のプローブに関する技術資料 — プローブの入力容量と負荷効果

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