降圧の入力コンデンサには、出力電流の半分が流れる

Vin=12V から Vout=6V を作るバックコンバータでは、入力コンデンサに流れるリプル電流の実効値が出力電流のちょうど半分になります。Irms = Iout√(D(1−D)) という式のD=0.5がいちばん厳しい条件で、Vout/Vinが1/2に近い設計ほど入力コンデンサが効いてきます。

最終更新: 2026-09-23 バックコンバータ入力コンデンサリプル電流MLCCアルミ電解コンデンサ

入力電流は台形パルス:コンデンサが交流分を受け持つ

出力コンデンサに流れる電流はインダクタのリプル電流(三角波)だけで、比較的なだらかです。ところが入力コンデンサに流れる電流は様子が違います。バックコンバータが入力から電流を引くのは、上側のスイッチがオンのあいだだけです。オンの瞬間は出力電流とほぼ同じ電流をいきなり引き、オフになった瞬間にゼロまで落ちます。上流の電源(バッテリー、ACアダプタ、上流のレギュレータ)はこの立ち上がり・立ち下がりに追従できないので、上流が供給するのは平均値(DC分)だけで、パルスと平均の差(交流分)を入力コンデンサが肩代わりします。

デューティ D=Vout/Vin として、スイッチがオンのあいだ(D・T の区間)は入力電流 Iin=Iout、オフのあいだ((1−D)・T の区間)は Iin=0 です。平均は Iavg=D・Iout。入力コンデンサの電流はこの平均との差分で、オン区間は Iout−D・Iout=Iout(1−D) だけ放電し、オフ区間は D・Iout の電流で充電し直します。1周期で見た電荷の出入りは釣り合うので、コンデンサの電圧は小さく上下するだけで定常状態が保たれます。

同期整流バックコンバータの損失は、どこで出ているかでは出力側のインダクタ電流やスイッチング損失を見ましたが、今回は入力側、特にコンデンサが受け持つ交流分の大きさを追います。

バック回路の入力電流は台形パルス。DC分は上流が、交流分は入力コンデンサが受け持つ上段はバック回路(Vin、Cin、上下スイッチ、インダクタL、Cout、負荷)。下段は入力電流の波形で、破線が平均(DC分)、網掛けが交流分。スイッチオン時とオフ時の2フェーズを繰り返すアニメーション。 ① オン:Cinが放電し、差分を補う Iin = Iout。上流の供給は平均のD・Ioutだけなので、不足分 Iout(1−D) をCinが放電して補う ② オフ:Cinが充電される Iin = 0。上流からの電流D・Ioutは行き場がなく、Cinを充電する Vin Cin SW(上側) SW(下側) L Cout 負荷 Iout Cin放電:Iout(1−D) Cin充電:D・Iout Iout 0 平均(DC分)= D・Iout(上流が供給) 交流分(Cin放電) 交流分(Cin充電) ON OFF D ≒ 0.417(Vin=12V、Vout=5Vの例) 1周期での電荷の出入りは釣り合うので、コンデンサ電圧は小さく上下するだけ
図1:バック回路の入力電流は台形パルス。上流(Vin)は平均(DC分、破線)だけを供給し、パルスとの差(交流分、網掛け)は入力コンデンサ Cin が受け持つ。スイッチオン時は放電、オフ時は充電。

Irms = Iout√(D(1−D)):D=0.5 が最悪条件

入力コンデンサに流れる電流の実効値(Irms)は、オン区間・オフ区間それぞれの電流を時間で重み付けして求めます。Irms = Iout・√(D(1−D)) という形になり(インダクタのリプル電流ぶんの上乗せは小さいので、ここでは無視した近似です)、D(=Vout/Vin)が 0 や 1 に近いほど小さく、D=0.5 でちょうど Iout/2 の最大値を取ります。

これは直感にも合います。D=0.5 は「半分の時間だけ全電流を流し、残り半分は流さない」という、いちばんメリハリの効いた(=平均から一番外れた)波形になるからです。D が 0 や 1 に近づくと、パルスのオン時間かオフ時間のどちらかが短くなり、平均からの差が小さい時間が長くなるので Irms は下がります。

具体的な数字で確認します。バックコンバータの計算機と同じ条件で、Vin=12V、Iout=5A、Vout をいくつか振ります。

Vin=12V、Iout=5A のときの入力コンデンサのリプル電流(Irms = Iout√(D(1−D))、インダクタのリプル電流は無視した近似)
VoutD = Vout/VinIrmsIrms / Iout
1.2V0.101.50A30%
3.3V0.2752.23A45%
5V0.4172.47A49%
6V0.502.50A(最大)50%

12V→6V(D=0.5)が最も厳しく、Iout=5A に対して Irms=2.5A、実に出力電流の半分です。12V→1.2V のような低デューティの降圧比では Irms は Iout の3割まで下がります。「入力電圧の半分に近い出力電圧」を作る設計ほど、入力コンデンサのリプル電流定格に余裕を見る必要があります。多電圧出力のPOL(Point of Load)で12Vバスから5Vや6Vを作る回路は、まさにこの厳しい条件に当たります。

D(=Vout/Vin)に対する入力コンデンサのIrms/IoutD=0や1に近いほどIrmsは小さく、D=0.5に近い設計ほど入力コンデンサのリプル電流に余裕が要る。 D(=Vout/Vin)に対する入力コンデンサのIrms/Iout Irms = Iout√(D(1−D))。表の4点(Vin=12V、Vout=1.2/3.3/5/6V)をプロット 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 Irms / Iout Vout=1.2V Vout=3.3V Vout=5V D=0.5・Vout=6Vで最大(Irms=Iout/2) D = Vout / Vin D=0や1に近いほどIrmsは小さく、D=0.5に近い設計ほど入力コンデンサのリプル電流に余裕が要る。 インダクタのリプル電流は無視した近似(本文参照)。
図2:デューティ D に対する Irms/Iout の曲線。D=0.5 でちょうど 0.5(Iout の半分)になる。表の4点をプロットした。

ESR の発熱:数十mΩでも侮れない理由

コンデンサの等価直列抵抗(ESR)に電流が流れると、P = Irms² × ESR の電力が熱になります。この式は電流の2乗で効くので、Irms が2倍になれば発熱は4倍です。Vout=5V の例(Irms=2.47A)で、ESR=5mΩ の積層セラミック(MLCC)なら P ≒ 2.47² × 0.005 ≒ 31mW。小さく見えますが、MLCCは0603〜1210のような数mm角の部品なので、熱抵抗(周囲空気やパッドへの逃げにくさ)が大きく、数十mWでも表面温度が周囲温度より数℃〜十数℃上がることがあります。

一方、同じ電流をESRの大きいコンデンサに流すと桁が変わります。ESR=80mΩ(低ESR品としては標準的な範囲)のアルミ電解コンデンサに同じ2.47Aを流すと、P ≒ 2.47² × 0.08 ≒ 0.49W。1個の部品が0.5W近くを消費するのは、周囲温度が高い筐体内では無視できない発熱です。入力コンデンサを選ぶときは容量だけでなくESRと、そこに流れるIrmsをセットで見る必要があります。

ESRは周波数でも変わり、多くのMLCCではスイッチング周波数帯(数百kHz〜数MHz)で最小に近づきますが、アルミ電解コンデンサは100kHzを超えるとESRが下がりきらず高止まりすることが多く、データシートのインピーダンス(Z)特性表やESR-周波数グラフを、実際のスイッチング周波数の欄で読むのが基本です。25℃・120Hzの表記のESRをそのまま使うと過小評価になります。

MLCC の許容リプル電流:ΔT基準の意味

MLCCのデータシートに「許容リプル電流」の項目がある場合、多くのメーカーはこれを自己発熱による温度上昇が一定値(ΔT ≒ 20℃程度が目安として使われることが多い)に収まる電流として定義しています。定格を超えて流すと即座に壊れるわけではありませんが、温度上昇が大きくなり、そのぶんMLCC自身の温度が周囲温度に上乗せされます。使用温度の上限(X7Rなら125℃が一般的)に対してマージンが減るほか、セラミックコンデンサは、電圧をかけると容量が減るで見たとおり、MLCCは温度でも容量が変化するので、発熱そのものが特性のズレにもつながります。

したがって、入力コンデンサにMLCCを使う場合は、計算したIrmsに対して許容リプル電流に十分な余裕(実務では2倍程度を見ることが多い)を持たせるのが安全です。表の2.5A(Vout=6Vの例)をMLCC1個で受けようとすると、大きめのケースサイズ(1210や1812)でも余裕が薄いことがあり、複数個を並列にしてIrmsを分散させるのが実務での標準的な解決策です。ただし次の節で見るとおり、並列にしても電流は均等には分かれません。

アルミ電解コンデンサの許容リプル電流と寿命:10℃2倍則

アルミ電解コンデンサの許容リプル電流は、多くのメーカーが特定の周波数・特定の周囲温度(105℃品なら105℃が多い)でコア(内部)温度上昇が規定値(機種によりますが5〜10℃程度が目安)に収まる電流として規定しています。MLCCと同じ発熱の考え方ですが、アルミ電解には寿命という追加の制約があります。

アルミ電解コンデンサの寿命は、電解液の蒸発(ドライアップ)で決まり、多くのメーカーの技術資料で「10℃2倍則」——動作温度が10℃下がるごとに寿命がおよそ2倍になる(逆に10℃上がると半分になる)——というアレニウス則に基づく近似が使われています。定格寿命(例:105℃・2000時間、というカタログ表記がよく見られます)は、定格温度・定格リプル電流での数字です。

実際の発熱はリプル電流の2乗に比例するので、Irmsが定格の何%かで温度上昇のぶんも変わります。たとえば定格温度上昇(ΔT0)に対して実際のリプル電流が定格の70%なら、発熱は 0.7²≒0.49 倍、温度上昇も概ねそのぶん下がります。定格ΔT0が10℃なら実際は約4.9℃下がる計算になり、10℃2倍則を当てはめると寿命は 2^(4.9/10) ≒ 1.4倍に伸びます。逆に、定格を超えるリプル電流を流し続けると温度上昇が増え、寿命が指数関数的に縮む方向に効きます。周囲温度が高い筐体内で、電解コンデンサに定格ぎりぎりのリプル電流を流す設計は、想定より早く容量抜け・ESR上昇に至るリスクがあります。

並列にしたコンデンサへ均等に分かれない理由

「Irmsが大きいから、コンデンサを複数個並列にして分散させよう」という判断は正しいのですが、並列にした各コンデンサに電流が均等に分かれるとは限りません。均等に分けたいのはESRと配線の抵抗ぶんの話で、実際にはインダクタンスが効いてきます。

スイッチのオン・オフの瞬間、入力電流は数A をns オーダーで立ち上がり・立ち下がりします。例えば5Aの電流が5nsで変化するなら di/dt = 1A/ns。ビアのインダクタンスが、デカップリングを鈍らせるで見たとおり、コンデンサのパッドからスイッチノードまでの配線とビアには0.5〜3nH程度のインダクタンスがあり、V=L・di/dt で電圧に換算すると、L=0.5nHで0.5V、L=2nHで2V にもなります。これはESRの差(数mΩ〜数十mΩ、電流5Aでも15〜100mV程度)よりずっと大きく、エッジの瞬間はインダクタンスの小さい経路——つまりスイッチノードに一番近いコンデンサ——に電流が集中します。

一方、リプル電流の実効値(もっとゆっくりした、周期全体で見た成分)は、ESRと容量の比で分担が決まるので、少しは均等化されます。とはいえ、配線インダクタンスがある限りループのインピーダンスは遠いコンデンサほど高いままなので、「一番近い1個がリプル電流の大半を受け持ち、遠い・容量の小さいものはほとんど仕事をしない」という状態になりがちです。並列にした個数ぶんだけIrms定格が単純に増えるわけではありません。

MLCCと電解コンデンサを混在させる場合はさらに差がつきます。MLCCはインダクタンスが小さく高周波(エッジ)で強いのでスイッチノードのすぐそばに複数個、電解コンデンサはESRと容量で低周波の平均的なリプルとホールドアップを受け持つのでやや離れた位置に1〜2個、という役割分担が実務での定石です。加えて、MLCCはVin(例えば12V)のDCバイアスがかかった状態で使われるので、セラミックコンデンサは、電圧をかけると容量が減るで見た容量減少(16V定格品に12Vをかけると実効容量が定格の半分以下に落ちることも珍しくありません)が起き、同じ型番でもケースサイズや定格電圧の違うMLCCを混ぜると、容量比そのものがカタログ値とずれて電流の分担がさらに読みにくくなります。

並列にしたコンデンサへ電流が均等に分かれない:エッジでは一番近いMLCCに集中するスイッチノードから距離の違う3個のMLCCと1個のアルミ電解コンデンサへの電流経路。破線の太さが電流の大きさを表す。エッジ(速いdi/dt)フェーズでは一番近いMLCCが太く、リプル電流の実効値(低い周波数成分)フェーズではやや均される。 ① エッジ(速いdi/dt):一番近いMLCCに集中 配線・ビアのインダクタンスの差がESRの差よりずっと大きく効く ② リプル電流の実効値(低い周波数成分):やや均される ESRと容量の比で分担が決まるが、ループインピーダンスの差は残る スイッチノード C MLCC①(近い) C MLCC② C MLCC③(遠い) C アルミ電解 配線(距離が長いほどインダクタンス大) エッジの電圧差の目安(5Aが5nsで変化:di/dt=1A/ns) L=0.5nH → V=L・di/dt=0.5V/L=2nH → 2V(配線・ビアのインダクタンスの差) ESRの差(数mΩ〜数十mΩ)による電圧差は、同じ5Aで15〜100mV程度 エッジの瞬間はインダクタンスの差(V級)がESRの差(数十mV級)を圧倒する
図3:スイッチノードから距離の違う3個のMLCCと1個のアルミ電解へ電流が分かれる様子。エッジの瞬間(速いdi/dt)は配線インダクタンスの小さい、一番近いMLCCに集中する。リプル電流の実効値(低い周波数成分)ではやや均される。

出力コンデンサとの比較、多相化で入力リプルが減る話

出力コンデンサに流れる電流は、インダクタのリプル電流そのもの(三角波、平均はゼロ)です。振幅はインダクタのリプル電流ΔIL(多くの設計でIoutの20〜40%程度に選ぶ)の半分程度で、入力コンデンサのIrms(今回の例で最大Iout/2)よりずっと小さく済みます。入力コンデンサのほうが出力コンデンサよりリプル電流の要求が厳しいのは、パルス状の電流を受けるか三角波を受けるかの違いによるものです。

入力側のリプル電流を減らす設計上の手段が多相化(マルチフェーズ)です。位相をずらした複数のスイッチング相を持たせると、各相のオンタイミングが重なる部分が減り、入力から見た電流の合計波形が平坦に近づきます。2相をD=0.5に近いタイミングでずらすと理論上はほぼ完全に打ち消し合い、Vout=5V(D≒0.417)の例で計算すると、1相のときのIrms 2.47A が2相化で 0.93A まで下がります——約6割の削減です。マルチフェーズのコントローラICが高電流のPOLで使われる理由の一つは、効率だけでなく入力コンデンサの個数・サイズを削れることにあります。

入力(1相/2相)と出力コンデンサの電流波形の比較Vin=12V、Vout=5V(D≒0.417)、Iout=5A の例 入力(1相/2相)と出力コンデンサの電流波形の比較 Vin=12V、Vout=5V(D≒0.417)、Iout=5A の例 入力 (1相) 平均(DC分) Irms = 2.47A 入力 (2相) Irms = 0.93A(約6割減) 出力 三角波、振幅は小さい 入力コンデンサは台形パルスの交流分を受け持つので、Irmsが大きい。 出力コンデンサはインダクタのリプル電流(三角波)だけを受け持つので、振幅が小さい。 多相化すると各相のパルスが打ち消し合い、入力コンデンサのIrmsが大きく下がる。
図4:入力電流(1相)は台形パルスでリプル電流が大きい。2相インターリーブにすると波形が平坦化し、リプル電流の実効値が大きく下がる(Vout=5Vの例で2.47A→0.93A)。出力コンデンサの電流は三角波でもともと振幅が小さい。

実機で引っかかるところ

  • 入力コンデンサだけが異常に熱い。出力側は問題ないのに入力コンデンサだけ触れないほど熱いなら、Irmsの見積もりが甘いか、並列にした中の1個に電流が集中している可能性があります。サーモグラフィで並列コンデンサの温度分布を見ると、一番スイッチに近い1個だけが突出して熱いことがよくあります。
  • 入力電圧のリプル・ノイズが大きい。入力コンデンサの容量・ESR不足、または配線インダクタンスの大きい配置だと、スイッチのオン・オフのたびに入力レールに電圧スパイクが乗ります。上流の他の回路(同じレールを共有するIC)に誤動作やノイズとして波及することがあります。
  • 効率の実測が計算値より悪い。入力コンデンサのESR損失は効率計算で見落とされがちです。効率の計算機で見積もった値と実測がずれるとき、入力コンデンサの発熱ぶんが抜けていないか確認してください。数百mWでも、小さいコンバータでは効率換算で1%前後に効くことがあります。
  • 設計を流用したら電解コンデンサが早期に容量抜けした。Vin/Voutの組み合わせを変えて流用したときにD(=デューティ)が変わり、Irmsが増えていないか確認してください。同じ部品・同じIoutでも、D=0.5に近づく変更は入力コンデンサのIrmsを最大1.7倍近く(D=0.1の1.5AからD=0.5の2.5Aへ)押し上げます。
  • 確かめ方。入力コンデンサの直近にオシロスコープのプローブ(GNDリードを短く)を当て、電流プローブがあれば入力コンデンサのリード電流を直接測ります。電流プローブがなければ、コンデンサ両端の電圧リプルとESRから概算するか、サーモグラフィで発熱の偏りを見るのが簡便です。

よくある質問

入力コンデンサのIrms定格は、計算値ぴったりで選んでよいですか。
おすすめしません。並列にしたコンデンサへの電流の偏り(本文参照)、周囲温度、負荷変動時の追加的なリプルを考えると、計算したIrmsに対して2倍程度の余裕を持たせるのが実務での目安です。特に並列の一番近い1個は計算上の平均Irmsより多くの電流を受け持つことがあります。
MLCCだけで入力コンデンサを構成してもよいですか。
高周波(エッジ)に強く、ESRも小さいのでリプル電流の発熱には有利です。ただし個々の容量が小さいぶん多数並列にする必要があり、実装面積が増えます。また入力ラインの起動時やホットプラグ時の突入電流に対しては、電解コンデンサのようなある程度の直列抵抗(ESR)がダンピングとして働く場合があるので、大容量入力や長いケーブル越しの給電では電解またはポリマーコンデンサを併用するのが無難です。
なぜD=0.5(Vout=Vin/2)が一番厳しいのですか。
Irms = Iout√(D(1−D)) はD=0.5で最大値0.5を取る二次関数的な形をしているためです。感覚的には、パルスが「半分の時間はIoutをそのまま流し、残り半分は流さない」というオン・オフの差が最も大きい波形になるからで、Dが0や1に近づくとオン時間かオフ時間のどちらかが短くなり、平均からのズレが小さい時間が長くなるぶんIrmsは下がります。
入力コンデンサのリプル電流は、インダクタのリプル電流を無視してよいのですか。
本文の式はインダクタのリプル電流ΔILを無視した近似です。実際にはIL自体が三角波でIout±ΔIL/2の範囲で変化するため、入力コンデンサの電流もそのぶん多少変わります。ΔILがIoutの20〜30%程度に収まる一般的な設計では、この近似による誤差は数%程度に収まることが多く、概算には十分です。厳密に詰めたい場合は、インダクタのリプル電流を含めた式で再計算してください。
多相化すれば入力コンデンサは要らなくなりますか。
いいえ。理想的な位相配置・デューティで大きく減らせますが、負荷が変動して各相のデューティやタイミングがずれる過渡時、あるいは位相数と実際のデューティの組み合わせによっては打ち消しが不完全になります。エッジの瞬間の高周波成分(本文図1・図3)はどのみち局所的なMLCCが受け持つ必要があるので、多相化は「入力コンデンサの容量・個数を減らせる」設計であって「不要にする」ものではありません。

参考にした規格・資料

  • 各社 MLCC の技術資料 — 許容リプル電流の定義(自己発熱による温度上昇ΔTを基準とする考え方)、ESRの周波数特性
  • 各社アルミ電解コンデンサ カタログ・技術資料 — 定格リプル電流、寿命推定(アレニウス則に基づく「10℃2倍則」)の説明
  • Texas Instruments, バックコンバータの入力・出力コンデンサ選定に関するアプリケーションノート — 入力コンデンサのリプル電流の式(Irms = Iout√(D(1−D)))の導出
  • 各社マルチフェーズ・コントローラICのデータシート/アプリケーションノート — 多相インターリーブによる入力リプル電流の低減効果

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