オペアンプ回路の基本:反転・非反転・VCVS(サレンキー)を動かして見る
オペアンプの回路は種類が多く見えますが、読み方は 2 つの約束だけです。「負帰還がかかっていれば、2 つの入力端子は同じ電圧になる」「入力端子に電流は流れない」。
2 つの約束
オペアンプは、+ 入力と − 入力の電圧差を 10 万倍以上に増幅して出力します。出力が電源電圧の範囲(たとえば ±10V)に収まるには、入力の差が 0.1mV 以下でなければなりません。出力の一部を − 入力に戻す(負帰還)と、オペアンプは出力を動かしてその差を小さくします。だから次の 2 つが成り立ちます。
約束 1:負帰還がかかっていれば、+ 入力と − 入力は同じ電圧になる(仮想短絡)。
約束 2:入力端子には電流が流れない(入力インピーダンスが非常に高い。CMOS 入力で pA 級)。
非反転増幅:出力を分圧して − 入力に戻す
Vin を + 入力につなぎ、出力を Rf と Rg で分圧して − 入力に戻します。約束 1 から − 入力は Vin なので、Vin = Vout × Rg ÷ (Rf + Rg)、つまり Vout = Vin × (1 + Rf ÷ Rg) です。
Rf = 0、Rg = ∞ にすると、ゲイン 1 のボルテージフォロワです。約束 2 により入力から電流を取らず、出力は低インピーダンスで負荷を駆動できます。高インピーダンスの信号源と電流を要求する負荷の間に入れるバッファとして、最も多く使われます。
反転増幅:− 入力を 0V に固定して、電流を流し込む
+ 入力を GND につなぎ、入力信号を Rin を通して、出力を Rf を通して、それぞれ − 入力に入れます。約束 1 から − 入力は 0V(仮想接地)で、Rin には Vin ÷ Rin の電流が流れます。約束 2 により、この電流は全部 Rf を通って出力へ抜けます。Rf の両端電圧は I × Rf で、− 入力側が 0V ですから、Vout = −Vin × Rf ÷ Rin です。
3 つの回路の比較
非反転の入力インピーダンスはオペアンプの + 入力そのもの(109〜1012Ω)です。反転は入力インピーダンスが Rin しかなく、信号源の出力抵抗が Rin に対して無視できないとゲインが下がります(詳しくは反転増幅回路の入力インピーダンスとゲイン誤差)。
かわりに、反転構成は − 入力が 0V に固定されていることが利点で、複数の入力をそれぞれの抵抗を通して − 入力に集めると、電流が足し算されて加算回路になります。入力は干渉しません。
| ゲイン | 入力インピーダンス | 向く用途 | |
|---|---|---|---|
| ボルテージフォロワ | +1 | オペアンプの入力(10⁹Ω 以上) | バッファ。高インピーダンス源の受け |
| 非反転増幅 | 1 + Rf ÷ Rg(1 以上) | オペアンプの入力 | センサ信号の増幅 |
| 反転増幅 | −Rf ÷ Rin(1 以下も可) | Rin | 低インピーダンス源、加算、電流→電圧変換 |
VCVS 型 2 次フィルタ(サレンキー):非反転増幅に C を 2 個足す
VCVS(電圧制御電圧源)は、入力電圧を K 倍して出力する箱のことで、非反転増幅がまさにそれです(K = 1 + Rf ÷ Rg、フォロワなら K = 1)。この箱を使った 2 次フィルタが、Sallen と Key(1955 年)にちなむサレンキーです。
回路は、RC を 2 段(R1–C1、R2–C2)縦につないで + 入力に入れ、1 段目のコンデンサ C1 の下側を GND ではなく出力につなぎます。
違いが出るのはカットオフ付近です。出力が入力と同相で動いている間は C1 の両端の電圧差が小さく、電流がほとんど流れず 1 段目の RC が効かないので、信号が落ちにくくなります。この正帰還によるブーストが、なだらかに落ちる RC 2 段の特性を、平坦なまま急に落ちる 2 次フィルタの特性に変えます。
ブーストの強さが Q です。R1 = R2 = R、C1 = C2 = C の等価部品構成では Q = 1 ÷ (3 − K)。K = 1 で Q = 0.5(RC 2 段と同じ)、K = 1.586 で Q = 0.707(バターワース、通過帯域が最も平坦)、K = 2 で Q = 1(カットオフに 0dB のピーク)、K = 3 で Q = ∞(発振)です。
K = 1 で Q を上げたいときは、R1 = R2 = R のまま、コンデンサの比を変えます。C1 = m × C、C2 = C ÷ m とすると Q = m ÷ 2 で、バターワースなら m = √2、つまり C1 = 1.41C、C2 = 0.707C です。fc = 1 ÷ (2πRC) は変わりません。
GBW と帯域
ゲイン G の回路の帯域は GBW ÷ ノイズゲインで、ノイズゲインは非反転では G、反転では 1 + |G| です。サレンキーは fc × Q × 100 以上の GBW が目安で、足りないと Q が計算より上がり、ピークが立ちます。
実機で引っかかるところ
- 単電源の中点バイアス。+ 入力の基準を Vcc/2 にして、入力を交流結合します。反転構成では + 入力を中点につなぎ、Rin の手前にコンデンサを入れます。
- 出力振幅。レール・ツー・レール品でも、レールから数十 mV 以内は振れません。旧来品は 1〜2V 内側までです。
- 容量性負荷。出力に直接 1nF 以上をつなぐと発振することがあります。数十 Ω を直列に入れるか、対応品を使います。
- バイアス電流。バイポーラ入力(数十〜数百 nA)で 100kΩ 超の抵抗を使うと、オフセットが mV 級になります。CMOS・JFET 入力なら問題ありません。
- 電源のデカップリング。電源ピン直近に 0.1µF を入れます。ないと発振やノイズの原因になります。
- サレンキーの高域漏れ。fc の 100 倍以上で減衰が止まります(パッシブとアクティブの記事参照)。遮断域の減衰が重要なら、後段に RC を足すか、MFB 型にします。
よくある質問
「仮想短絡」は本当に短絡しているのですか。
反転と非反転、どちらを基本にすべきですか。
サレンキーの K を 3 にすると本当に発振しますか。
2 次より高い次数はどう作りますか。
参考にした規格・資料
- R. P. Sallen, E. L. Key (1955), "A Practical Method of Designing RC Active Filters" — VCVS 型フィルタの原論文
- TI SLOA088, Active Filter Design Techniques — サレンキーの設計式、Q と K の関係
- Horowitz & Hill, The Art of Electronics — オペアンプの黄金律(2 つの約束)と基本回路