オペアンプ回路の基本:反転・非反転・VCVS(サレンキー)を動かして見る

オペアンプの回路は種類が多く見えますが、読み方は 1 つです。「負帰還がかかっていれば、2 つの入力端子は同じ電圧になる」「入力端子に電流は流れない」。この 2 つの約束だけで、反転も非反転も、2 次のフィルタも、電圧がどう動くかを追えます。

最終更新: 2026-09-19 オペアンプ非反転増幅反転増幅サレンキー

2 つの約束

オペアンプは、+ 入力と − 入力の電圧差を 10 万倍以上に増幅して出力する部品です。10 万倍なので、出力が電源電圧の範囲(たとえば ±10V)に収まるためには、入力の差は 0.1mV 以下でなければなりません。出力の一部を − 入力に戻す(負帰還)と、オペアンプは出力を動かして入力の差をそこまで小さくします。だから、

約束 1:負帰還がかかっていれば、+ 入力と − 入力は同じ電圧になる(仮想短絡)。

約束 2:入力端子には電流が流れない(入力インピーダンスが非常に高い。CMOS 入力で pA 級)。

この 2 つを使って、「− 入力の電圧はいくつか」「そこに流れ込む電流はどこへ行くか」を追うと、どんなオペアンプ回路も出力電圧が求まります。以下、3 つの回路で実際にやります。

非反転増幅:出力を分圧して − 入力に戻す

入力信号 Vin を + 入力につなぎ、出力を Rf と Rg で分圧して − 入力に戻します。

約束 1 から、− 入力の電圧は Vin。− 入力は Rf と Rg の分圧点なので、Vin = Vout × Rg ÷ (Rf + Rg)。したがって Vout = Vin × (1 + Rf ÷ Rg)。オペアンプは「分圧した結果が Vin になるように出力を上げる」動作をしています。

Rf = 0、Rg = ∞(出力を直接 − 入力へ)にするとゲイン 1 のボルテージフォロワです。増幅しませんが、約束 2 により入力から電流を取らず、出力は低インピーダンスで負荷を駆動できます。「高インピーダンスの信号源と、電流を要求する負荷の間に入れる」バッファとして、最も多く使われる回路です。

非反転の入力インピーダンスは、オペアンプの + 入力そのもの(109〜1012Ω)です。センサ、分圧、高抵抗の回路から信号を受けるときは、この構成を選びます。

反転増幅:− 入力を 0V に固定して、電流を流し込む

+ 入力を GND につなぎ、入力信号を Rin を通して − 入力に、出力を Rf を通して − 入力に戻します。

約束 1 から、− 入力は + 入力と同じ 0V(仮想接地)。すると Rin には Vin ÷ Rin の電流が流れ込みます。約束 2 から、この電流はオペアンプには入れないので、全部 Rf を通って出力へ抜けます。Rf の両端電圧は I × Rf で、− 入力側が 0V ですから、Vout = −Vin × Rf ÷ Rin。符号が反転するのは、電流が − 入力から出力へ「抜けていく」方向だからです。

非反転との大きな違いは、入力インピーダンスが Rin しかないことです。− 入力は 0V に固定されているので、信号源から見れば Rin の先が GND につながっているのと同じです。信号源の出力抵抗が Rin に対して無視できないと、ゲインが下がります(詳しくは反転増幅回路の入力インピーダンスとゲイン誤差)。

かわりに、反転構成には「− 入力が 0V に固定されている」ことの利点があります。複数の入力を、それぞれの抵抗を通して − 入力に集めれば、電流が足し算されて加算回路になります。入力どうしが干渉しないのは、集まる点が 0V に固定されているからです。

3 つの基本回路
ゲイン入力インピーダンス向く用途
ボルテージフォロワ+1オペアンプの入力(10⁹Ω 以上)バッファ。高インピーダンス源の受け
非反転増幅1 + Rf ÷ Rg(1 以上)オペアンプの入力センサ信号の増幅
反転増幅−Rf ÷ Rin(1 以下も可)Rin低インピーダンス源、加算、電流→電圧変換
非反転増幅と反転増幅の電圧の動き左は非反転増幅(Rf = Rg、ゲイン 2)。Vin と同じ電圧が − 入力に現れ、出力は 2 倍で同相。右は反転増幅(Rf = 2Rin、ゲイン −2)。− 入力は 0V に固定され、出力は 2 倍で逆相。棒の高さが電圧で、正弦波状に動く。 − 入力は + 入力と同じ電圧に保たれる。出力はそれを成立させる値 棒の高さが各点の電圧。左:非反転(Rf = Rg)、右:反転(Rf = 2Rin) 非反転増幅:ゲイン 1 + Rf ÷ Rg = 2 + Vin Vout Rf Rg Vin V− = Vin Vout = 2 × Vin 反転増幅:ゲイン −Rf ÷ Rin = −2 + Vin Rin Vout Rf 仮想接地(0V) Vin V− = 0V Vout = −2 × Vin 非反転では − 入力が Vin に追従する。反転では − 入力が 0V に釘付けで、Rin の電流がそのまま Rf を通って出力へ抜ける。
図1:非反転と反転の電圧の動き。どちらも − 入力は + 入力と同じ電圧(非反転では Vin、反転では 0V)に保たれ、出力はそれを成立させる値になる。

VCVS 型 2 次フィルタ(サレンキー):非反転増幅に C を 2 個足す

VCVS は Voltage-Controlled Voltage Source(電圧制御電圧源)の略で、「入力電圧を K 倍して出力する箱」のことです。非反転増幅がまさにそれで、K = 1 + Rf ÷ Rg、フォロワなら K = 1。この箱を使った 2 次フィルタが VCVS 型フィルタで、Sallen と Key が 1955 年に発表したのでサレンキーとも呼びます。

回路は、RC を 2 段(R1–C1、R2–C2)縦につないで + 入力に入れ、ただし1 段目のコンデンサ C1 の下側を GND ではなく出力につなぐ、というものです。この 1 本の配線が、ただの RC 2 段を 2 次フィルタに変えます。

低い周波数では、コンデンサは開放なので、入力がそのまま + 入力に届き、出力 = K × 入力。高い周波数では、C2 が + 入力を GND に落とし、C1 も短絡なので、出力は −40dB/decade で落ちます。ここまでは RC 2 段と同じです。

違いが出るのはカットオフ付近です。C1 の下側は出力につながっているので、出力が入力と同相で動いている間は、C1 の両端の電圧差が小さく、C1 に電流がほとんど流れません。つまり 1 段目の RC が「効かない」状態になり、カットオフ付近で信号が落ちにくくなります。これが正帰還によるブーストで、RC 2 段の「なだらかに落ちる」特性を、2 次フィルタらしい「平坦なまま急に落ちる」特性に変えます。

ブーストの強さが Q です。R1 = R2 = R、C1 = C2 = C の等価部品構成では、Q = 1 ÷ (3 − K)。K = 1 で Q = 0.5(RC 2 段と同じ、なだらか)、K = 1.586 で Q = 0.707(バターワース、通過帯域が最も平坦)、K = 2 で Q = 1(カットオフに 0dB のピーク)、K = 3 で Q = ∞(発振)。ゲインを上げるほど正帰還が強くなり、3 倍で負帰還と釣り合って発振器になります。

K = 1(フォロワ)で Q を上げたいときは、コンデンサの比を変えます。R1 = R2 = R、C1 = m × C、C2 = C ÷ m とすると Q = m ÷ 2。バターワースなら m = √2、つまり C1 = 1.41C、C2 = 0.707C(比で 2 倍)。fc = 1 ÷ (2πRC) はそのままです。部品数が少なく、ゲイン 1 で済むので、ADC の前段でよく使われる構成です。

K と Q(等価部品、正規化)C1 の両端に電圧差が出ないので 1 段目の RC が効かず、信号はそのまま通る 低い周波数(fc の 1/10):出力は入力に追従するC1 の両端に電圧差が出ないので 1 段目の RC が効かず、信号はそのまま通る 高い周波数(fc の 10 倍):出力はほとんど出ないC2 が + 入力を GND に落とし、C1 も短絡。−40dB/decade で減る Vin R1 R2 C2 + Vout C1 C1 の下側は GND ではなく出力へ K = 1(フォロワ)の構成。K を上げると Q が上がる Vout ≒ Vin Vout ≒ 0.01 × Vin(−40dB) Vin Vout 0.1fc fc 10fc 10dB 0dB -20dB -40dB K と Q(等価部品、正規化) K = 1:Q = 0.5 K = 1.586:Q = 0.707(バターワース) K = 2:Q = 1(ピーク) Q = 1 ÷ (3 − K)。K = 3 で発振。 K = 1 で Q を上げるなら C1 ÷ C2 = 4Q²。
図2:VCVS 型(サレンキー)2 次ローパス。低い周波数では出力が入力に追従し、C1 の両端に電圧差が生じないので 1 段目が効かない。高い周波数では C2 が + 入力を落とし、出力は −40dB/decade で減る。右は K(ゲイン)と Q の関係。

実機で引っかかるところ

  • GBW。ゲイン G の非反転/反転回路の帯域は GBW ÷ ノイズゲイン(非反転では G、反転では 1 + |G|)。サレンキーは fc × Q × 100 以上の GBW が目安。足りないと Q が計算より上がり、ピークが立ちます。
  • 単電源の中点バイアス。+ 入力の基準を Vcc/2 にし、入力を交流結合する。反転構成では + 入力を中点につなぎ、Rin の手前にコンデンサ。中点は抵抗分圧 + コンデンサで作り、必要ならフォロワで低インピーダンス化。
  • 出力振幅。レール・ツー・レール品でも、レールから数十 mV は振れない。旧来品は 1〜2V 内側まで。ゲインを上げる前に、出力が収まるか確認。
  • 容量性負荷。出力に直接 1nF 以上をつなぐと発振することがある。数十 Ω を直列に入れるか、容量負荷対応品を使う。サレンキーの C1 は出力につながっているが、R1 を介しているので通常は問題ない。
  • バイアス電流と抵抗値。バイポーラ入力(数十〜数百 nA)で 100kΩ を超える抵抗を使うと、オフセットが mV 級になる。CMOS・JFET 入力なら気にしなくてよい。
  • 電源のデカップリング。オペアンプの電源ピン直近に 0.1µF。ないと高周波で発振したり、他の回路のノイズが乗る。
  • サレンキーの高域漏れ。fc の 100 倍以上で減衰が止まる(パッシブとアクティブの記事参照)。遮断域の減衰量が重要なら、後段に RC を 1 段か、MFB 型。

よくある質問

「仮想短絡」は本当に短絡しているのですか。
していません。2 つの入力端子の電圧が同じになるだけで、間に電流は流れません(約束 2)。「電圧は同じ、電流はゼロ」という点で、実際の短絡(電圧同じ、電流は流れる)とも開放(電流ゼロ、電圧は違う)とも違うので「仮想」と呼びます。負帰還が外れる(出力が飽和する、正帰還になる)と成り立たなくなります。
反転と非反転、どちらを基本にすべきですか。
信号源が高インピーダンス(センサ、分圧、前段が高抵抗)なら非反転。信号源が低インピーダンス(前段がオペアンプ、DAC)で、加算や電流入力(フォトダイオードなど)が要るなら反転。迷ったら非反転で、入力インピーダンスの心配がないほうを選びます。
サレンキーの K を 3 にすると本当に発振しますか。
等価部品構成で K = 3 のとき Q が無限大になり、fc で発振します。これを意図的に使ったのがウィーン・ブリッジ発振器で、ゲインを 3 倍ちょうどに保つ振幅制御(ランプや FET)を付けます。フィルタとして使うなら K は 2.5 以下、実用的には 2 以下にします。
2 次より高い次数はどう作りますか。
2 次のサレンキーを縦続します。4 次なら 2 段で、各段の Q と fc を少しずつ変えて(バターワースなら Q = 0.54 と 1.31)全体で目標の特性にします。設計表やメーカの設計ツール(TI FilterPro、ADI Filter Wizard など)が段ごとの値を出してくれます。奇数次は 1 次の RC を足します。

参考にした規格・資料

  • R. P. Sallen, E. L. Key (1955), "A Practical Method of Designing RC Active Filters" — VCVS 型フィルタの原論文
  • TI SLOA088, Active Filter Design Techniques — サレンキーの設計式、Q と K の関係
  • Horowitz & Hill, The Art of Electronics — オペアンプの黄金律(2 つの約束)と基本回路

← コラム一覧へ