オシロのグラウンドリード 15cm が作るリンギング

オシロのプローブを基板に当てるとき、ワニ口クリップの長いグラウンドリードを何も考えずに使っていませんか。そのリードはただの電線ではなく、プローブ先端の入力容量と組んで直列共振回路を作ります。15cm のリードなら共振は 100〜150MHz 帯。立ち上がりの速い信号を測ると、基板の上では起きていないリンギングが画面に映ります。

最終更新: 2026-09-23 オシロスコーププローブグラウンドリード共振EMI

グラウンドリードとプローブ先端は、直列共振回路そのもの

オシロのプローブでよく使うワニ口クリップのグラウンドリードは、電気的にはただのインダクタです。まっすぐな電線のインダクタンスは、実務でよく使われる目安で1mm あたり約 1nH(太さや周囲の金属で多少変わりますが、桁は動きません)。15cm のリードなら、電線の長さだけなら約 150nH、実際にはクリップの取り回しやループの形で 100〜200nH 程度になります。

一方、プローブ先端には入力容量があります。10:1 パッシブプローブは、オシロ入力の 1MΩ・十数 pF を 10 倍の 10MΩ・数 pF まで下げるために先端に補償回路を持っていて、そこに見える容量はカタログ値でおよそ 8〜16pF に分布します。ここでは代表値として10pFを使います。

グラウンドリードの L とプローブ先端の C は、被測定点からグラウンドリードを通ってプローブ入力へ戻る1 つのループの中で直列につながっています。エッジが立つたびにこの LC が励振され、共振周波数で鳴ります。f = 1 / (2π√(LC)) に L = 150nH、C = 10pF を入れると、f ≈ 130MHz(node で計算:1/(2×π×√(150e-9×10e-12)) ≈ 1.299×10⁸)。100nH〜200nH の幅で見ても、およそ 113〜159MHz です。

グラウンドリードとプローブ先端が作る直列 LC 共振の等価回路被測定点からプローブ先端までは短くほぼ0、被測定点の基板GNDからプローブのグラウンドリード(15cm、L≈150nH)を通ってプローブ入力に戻る経路が直列共振回路のインダクタになる。プローブ先端の入力容量(C≈10pF)と共振し、f≈130MHzでリンギングする。オシロが表示しているのはこのCの両端電圧。 グラウンドリードの L とプローブ先端の C が、直列共振回路を作る 電流のループ 被測定点(信号) 基板 GND エッジ (dV/dt) プローブ先端(リード長 ≈ 0) グラウンドリード 15cm L ≈ 150nH(目安 1nH/mm) プローブ先端の入力容量 C ≈ 10pF(10:1 パッシブ) オシロ入力 実際に見えているのは C の両端電圧 f = 1 / (2π√(LC)) 150nH × 10pF → f ≈ 130MHz 特性インピーダンス Z0 = √(L/C) ≈ 122Ω 被測定点の電圧そのものではなく、L と C で作られた直列共振回路の応答を見ている。 ループを小さくする(L を下げる)か、ループの中に抵抗を足す(Q を下げる)かでしか、この共振は消せない。
図1:被測定点からプローブ先端までは短くほぼ 0、被測定点の基板 GND からグラウンドリード(15cm、L ≈ 150nH)を通ってプローブ入力に戻る経路が直列共振回路のインダクタになる。プローブ先端の入力容量(C ≈ 10pF)と共振し、f ≈ 130MHz でリンギングする。オシロが表示しているのは、この C の両端電圧。

Q とダンピング:なぜ何周期も鳴るのか

この直列共振回路の特性インピーダンスは Z0 = √(L/C)。L = 150nH、C = 10pF なら Z0 = √(150e-9/10e-12) ≈ 122Ω。Q は Q = Z0 / R で決まります。R は被測定点の出力インピーダンスと、グラウンドリード自身の抵抗(銅の細線なので通常 1Ω 未満)を足したものです。

デカップリングコンデンサの直近や電源プレーンのように、被測定点の出力インピーダンスが 1Ω を切るような低インピーダンスの場所では、Q が 100 を超えます(R = 1Ω なら Q = 122/1 ≈ 122)。Q が高いということは、いったん励振されたエネルギーがなかなか減衰しないということで、130MHz のリンギングが何十周期も、時間にして数百 ns 続きます。これが「画面いっぱいに毛羽立ったリンギングが乗る」典型的な絵です。

逆に R を大きくすれば Q は下がります。臨界制動(それ以上大きくしても振動しなくなる境目)は R = 2Z0 ≈ 245Ω。プローブの先端に 100〜200Ω 程度の直列抵抗(ダンピング抵抗、高速ロジックのプロービングでは昔から使われる手法です)を足すと Q は 1 前後まで下がり、リンギングは 1〜2 周期でほぼ収まります。ただし先端抵抗は信号を分圧して減衰させるので、振幅を読み替える必要があります。

立ち上がり 1ns の信号を測ると、基板は鳴っていないのに画面では鳴る

ここからが実務での落とし穴です。130MHz という数字だけ見ると「メガヘルツ止まりの信号なら関係ない」と思いがちですが、リンギングを起こすのは信号の繰り返し周波数ではなくエッジの速さです。立ち上がり 1ns のデジタル信号(多くの現行ロジック IC の出力に相当)は、周波数成分としては数百 MHz まで広がっており、130MHz の共振をきれいに叩き起こします。

結果、基板の上ではただの立ち上がりエッジでも、画面には何周期ものオーバーシュートとリンギングが映ります。これを見て「基板が鳴っている」「ダンピング抵抗が足りない」と判断してしまうのが典型的な誤診断です。実際に鳴っているのは基板ではなく、プローブのグラウンドリードとプローブ先端で作った測定系そのものです。

見分け方は 2 つあります。① グラウンドリードを短くしてみる。共振周波数は f ∝ 1/√L なので、リードを半分の長さにすると L はおよそ半分になり、f は約 1.4 倍に上がります。リンギングの周波数が変わるなら、原因はリード。変わらないなら、電源のレギュレーション不足や実際の伝送線路の反射など、基板側の要因を疑ってください(配線が伝送線路として振る舞う長さも参考にしてください)。② プローブ先端とグラウンドを同じ点に当てる。被測定点を外し、先端をグラウンドクリップに直接触れさせます(後述)。信号源がないのに波形が揺れるなら、それはループが拾った自己ノイズです。

同じ立ち上がり1nsの信号が、グラウンドリードの長さでどう見えるか15cmのワニ口グラウンドリードでは共振周波数約130MHzのリンギングが何周期も表示され続ける。3mmのグラウンドスプリングに替えると共振は約900MHzまで上がり、時定数も短くなるので1ns程度で収まる。どちらも基板上の実際のエッジ(立ち上がり1ns)は点線で示した通りほぼ変わらない。2つの状態を順に表示するアニメーション。 ① 15cm のワニ口グラウンドリード共振 f ≈ 130MHz。立ち上がり 1ns のエッジに何周期も乗って見える ② 3mm のグラウンドスプリング共振 f ≈ 900MHz。同じ 1ns のエッジがほぼそのまま見える 0ns10ns20ns30ns40nsリンギング f ≈ 130MHz(15cm リード) 0ns1ns2ns3ns4nsリンギング f ≈ 900MHz(横軸は A の 1/10 スケール) 点線 = 実際のエッジ 基板は鳴っていない。鳴っているのはグラウンドリードとプローブ先端で作った直列共振回路。横軸 0–40ns。130MHz の周期は約 7.7ns で、表示のあいだ何周期も続く。 リードを短くすると共振周波数が上がり、時定数も短くなるので早く収まる。横軸 0–4ns(A の 1/10)。リンギングは 1ns 程度で収まり、エッジはほぼ素通り。
図2:同じ立ち上がり 1ns の信号を、15cm のワニ口グラウンドリードで測ると約 130MHz で何周期もリンギングして見える。3mm のグラウンドスプリングに替えると共振は約 900MHz まで上がり、時定数も短くなるので 1ns 程度で収まる。点線は基板上の実際のエッジ(模式図)。

ショート試験:信号源なしで測定系自身のノイズを見る

上の②を実機でやる方法です。被測定点からプローブを外し、先端をグラウンドクリップ(またはグラウンドスプリング)に直接当てます。信号も還流電流もない状態なので、理想的には画面はまっすぐな線(電圧ゼロ)になるはずです。

ここで波形が揺れて見えたら、それはプローブとグラウンドリードが作るループが周囲の電磁界を拾っている自己ノイズです。15cm のワニ口リードをつないだままだと、リードが垂れて作るループそのものが小さなアンテナになり、蛍光灯のスイッチング電源、近くのデジタル回路、電源ラインのノイズを拾って画面が揺れます。グラウンドスプリングに替えて先端のすぐ隣にグラウンドを落とすと、ループがほぼ消えるので、多くの場合フラットに近づきます。

この試験は被測定点がなくてもできるので、「リンギングが本物かプローブのせいか」を切り分ける前に、まず測定系だけでどれだけノイズを拾うかを確認しておくと、あとで判断に迷いません。

ショート試験:先端とグラウンドを同じ点に当てて自己ノイズを見るプローブ先端をグラウンド基準に直接当て、信号源なしでループが拾う自己ノイズを見る診断方法。15cmのワニ口リードをつないだままだと、リードが垂れて作るループがノイズを拾い、波形が揺れる。グラウンドスプリングで先端のすぐ隣に当てると、ループがごくわずかになりほぼフラットになる。 ① 15cm リードのまま、先端をクリップに当てる リードはだらんと垂れたまま。ループはリード全体が作る ② グラウンドスプリングで、先端のすぐ隣に当てる 先端とグラウンドがほぼ同じ点。ループはごくわずか プローブ 15cm のワニ口リード ループ面積 大 プローブ 3mm スプリング ループ面積 ごくわずか 拾ったノイズ(大きい) ほぼフラット
図3:プローブ先端をグラウンド基準に直接当て、信号源なしでループが拾う自己ノイズを見る。15cm のワニ口リードのままだと、垂れたリードが作るループがノイズを拾って波形が揺れる。グラウンドスプリングで先端のすぐ隣に当てると、ループがごくわずかになりほぼフラットになる。

グラウンドスプリングに替えると、共振は GHz 帯へ逃げる

対策の本質は単純で、L を下げて共振周波数を測定対象の帯域より上へ追い出すことです。プローブの先端に直接かぶせる金属コイル状の「グラウンドスプリング」(BNC 側の同軸シールドを、先端のすぐ横のグラウンドパターンやビアに数 mm で落とす付属品)を使うと、ループの物理的な長さが 15cm から数 mm まで縮み、L は 1〜数 nH まで下がります。

L = 3nH、C = 10pF なら f ≈ 919MHz。L = 5nH なら f ≈ 712MHz(どちらも node で検算)。ワニ口リードの 130MHz から 1 桁近く上がり、多くのデジタル信号やスイッチングノイズの帯域からは外れます。しかもスプリングはコイル状に密着させるぶん、ループ面積そのものが小さいので、電線の長さだけで見積もる 1nH/mm よりもさらに小さい L になりやすいというおまけも付きます。

ここで区別しておきたいのが、プローブのカタログ帯域(10:1 パッシブなら数百 MHz が一般的)と、実際に組んだときの実効帯域です。プローブ自体の周波数特性がどれだけ良くても、15cm のグラウンドリードを使った瞬間、測定系全体の実効帯域はその共振周波数で頭打ちになります。カタログ帯域は「正しいグラウンド方法(多くはスプリングか、それに準じる短い接続)を使った場合」の数字だと考えてください。

アクティブプローブ(FET 入力)は先端の入力容量が 1pF 以下まで小さく、多くの機種で先端付近に短いグラウンド基準を作る構造になっているため、同じ理屈でもともと共振が GHz 帯に逃げています。価格と引き換えに、この問題そのものを設計で潰しているとも言えます。

リード長と共振周波数、測れる立ち上がり時間の目安

C ≈ 10pF(10:1 パッシブ)、L は 1nH/mm の目安で概算。「測れる立ち上がり時間」は、リンギングの周期の 3 倍以上ゆっくりなら画面上でエッジと分離して見える、という経験則の目安(node で f = 1/(2π√(LC))、tr ≈ 3/f を計算)
グラウンドの取り方L の目安共振 f測れる立ち上がり時間の目安
15cm ワニ口リード≈150nH≈130MHz23ns より遅いエッジまで
8cm ミニフック≈80nH≈180MHz17ns より遅いエッジまで
3cm に縮めたリード≈30nH≈290MHz10ns より遅いエッジまで
5mm グラウンドスプリング≈5nH≈710MHz4.2ns より遅いエッジまで
3mm グラウンドスプリング≈3nH≈920MHz3.3ns より遅いエッジまで

表のとおり、立ち上がり 1ns の信号を額面どおりに見たいなら、15cm はおろか 3cm のリードでも足りません。数 mm のグラウンドスプリングまで詰めて、ようやく 1ns クラスのエッジをリンギングに邪魔されずに観測できる領域に入ります。逆に言えば、立ち上がりが 20〜30ns 程度のゆっくりした信号(多くのアナログ回路や低速ロジック)であれば、15cm のワニ口リードでもさほど問題になりません。

「測れる立ち上がり時間」は経験則の目安であり、正確な RLC シミュレーションの結果ではありません。実機では被測定点の出力インピーダンス(R)次第でリンギングの振幅と収束の速さが変わるので、最終的にはショート試験とリードを変えた比較で確認してください。

スイッチング電源のリプル測定でのもう 1 つの間違い:ループが磁界を拾う

ここまでは被測定点の電圧とプローブ入力容量が作る直列共振の話でした。スイッチング電源の出力リプルを測るときは、もう 1 つ別のメカニズムが働きます。グラウンドリードが作るループ自体が、アンテナとしてインダクタや SW ノードの磁界を拾うという問題です。

同期整流バックコンバータの SW ノードとインダクタの周辺では、スイッチが切り替わるたびに電流が急峻に変化します(同期整流バックの損失の内訳で見たとおり、スイッチング損失はこの遷移の速さそのものが原因です)。この大きな dI/dt が作る磁界の中に、長いグラウンドリードで作った大きなループがあると、相互インダクタンスを介して電圧が誘導され、スイッチのたびに鋭いスパイクとして画面に乗ります。

これはビアのインダクタンスがデカップリングを鈍らせる話と根は同じ「配線のインダクタンス」ですが、起きている現象は別物です。①の共振は被測定点の電圧に対するプローブ自身の応答、②のスパイクはループが周囲の磁界を拾う結合ノイズで、被測定点に信号源がなくても、ループが磁界の中にありさえすれば乗ります。

典型的な間違いは、出力コンデンサから離れた場所(インダクタの真上や、SW ノードの配線に近いところ)に長いリードのままプローブを当てて「リプルが大きい」と判断してしまうことです。対策はグラウンドスプリングでループを小さくすることに加えて、ループの位置そのものを測りたい点(出力コンデンサの端子)のすぐそばに置き、インダクタや SW ノードから離すことです。

スイッチング電源のリプル測定:グラウンドリードのループがSWノードの磁界を拾う同期整流バックの出力リプルを測るとき、プローブのグラウンドリードが作るループがインダクタ/SWノード付近の大きなdI/dtの磁界と重なると、スイッチが切り替わるたびに誘導電圧が乗り、鋭いスパイクとして表示される。ループを出力コンデンサのすぐそばに小さく作ると、磁界の影響が減り真のリプルに近づく。2つの状態を順に表示するアニメーション。 ① グラウンドリードのループが SW ノード/インダクタの近くを通るよくある間違い:ループが dI/dt の大きい磁界を拾い、スパイクが乗る ② グラウンドリードを出力コンデンサのすぐそばの小さいループで終端するループが小さく磁界の強い場所からも離れるので、真のリプルに近く見える 12V スイッチノード SW ローサイド(同期整流) L 大きな dI/dt(磁界) Cout 負荷 大きなループが磁界と重なる ループが小さく磁界から離れている 0T 1T 2T 3T 出力リプルの表示 磁界の拾い込みスパイク(実測でない) 真のリプルに近い(三角波のみ) ループがインダクタ/SW ノードの磁界と重なると、スイッチが切り替わるたびに誘導電圧が乗る。リプルの上に鋭いスパイクが乗るが、これは出力の電圧ではなく、ループが拾った磁界の電圧。 グラウンドリードを出力コンデンサのすぐそば・小さいループで終端すると、磁界の影響が大きく減る。残るのは三角波のリプルだけ。スパイクが消えたのは「直った」のではなく「正しく測れるようになった」。
図4:ループがインダクタ/SW ノード付近の大きな dI/dt の磁界と重なると、スイッチが切り替わるたびに誘導電圧が乗り、鋭いスパイクとして表示される。ループを出力コンデンサのすぐそばに小さく作ると、磁界の影響が減り真のリプルに近づく。

帯域制限 20MHz の意味

多くのオシロには「BW LIMIT」または「20MHz」というボタンがあります。これは入力の前段に低域通過フィルタを入れて、高い周波数の成分をハードウェアで削る機能です。130MHz や 900MHz のリンギング、SW ノードの磁界ピックアップによる鋭いスパイクは、どちらも 20MHz よりはるかに高い周波数にエネルギーが乗っているので、帯域制限を入れると画面上はきれいに消えます。

リプル測定で「帯域制限を入れると急にきれいになった」ときは注意が必要です。波形がきれいになったのは、測定がよくなったからではなく、20MHz 以上の成分をまとめて捨てたからです。スイッチング周波数の高調波が本当に 20MHz を超えて出ている(EMI の観点で問題になりうる)場合も、同じように消えてしまいます。

帯域制限は「ノイズかリンギングかを判断するための切り分け道具」として使うぶんには有効です(入れて消えるなら高周波成分が主因)。ですが、最終的なリプル規格への適合判定は、帯域制限なしで、正しいグラウンド方法(スプリングなど)で測るのが筋です。帯域制限をかけたままの数字を「リプル ◯◯mV」として報告すると、実際より小さい値を報告することになります。

実機で引っかかるところ

  • 「基板を再設計したのにリンギングが消えない」。デカップリングやダンピング抵抗を見直す前に、まずグラウンドスプリングに替えて同じ点を測ってください。周波数が変わらなければ基板側、上がって消えればプローブ側が原因です。
  • 「プローブの帯域は 500MHz のはずなのに、速いエッジが波打つ」。プローブ自体の帯域と、ワニ口リードを使ったときの実効帯域は別物です。カタログの帯域を出すには、多くの場合グラウンドスプリングでの接続が前提になっています。
  • 低インピーダンスの電源プレーンやバイパスコンデンサの直近を測る。Z0 が同じでも R(被測定点のインピーダンス)が低いほど Q が上がり、リンギングが激しく長く続きます。デカップリングの効きを見たいときほど、グラウンドリードの影響を受けやすいので注意してください。
  • 差動信号や高速シリアルの単発波形(アイパターンではなく単発の立ち上がり)を見るとき。1ns を切るエッジでは、数 mm のグラウンドスプリングでもまだ足りないことがあります。アクティブプローブへの切り替えを検討してください。
  • ショート試験でグラウンドスプリングでも揺れる。プローブ自体のノイズフロアか、周囲の強い電磁界(近くのスイッチング電源、モータ、無線機)を疑ってください。測定点をシールドするか、ノイズ源から離すしかない場合もあります。
  • 確かめ方のまとめ。① 同じ点をリード長だけ変えて測り、リンギング周波数が動くか見る。② 被測定点を外し、先端をグラウンドに直接当てて自己ノイズを見る。③ 帯域制限を入れて消えるか見る(消えれば高周波成分が主因)。この 3 つで、基板の問題かプローブの問題かはほぼ切り分けられます。

よくある質問

プローブのカタログ帯域(例 500MHz)を信じていいですか。
プローブ単体の周波数特性としては信じてよいですが、それは正しいグラウンド方法(多くはスプリングなど短い接続)で使った場合の数字です。15cm のワニ口リードを使うと、測定系全体の実効帯域はグラウンドリードとプローブ先端容量が作る共振周波数(15cm なら 100〜150MHz 程度)で頭打ちになり、カタログの帯域よりずっと低いところでリンギングが出ます。
リードを短くしてもリンギングの周波数が変わりません。原因はグラウンドリードではないのですか。
その可能性が高いです。リードの長さを変えても共振周波数が動かないなら、原因は測定系ではなく基板側(電源のレギュレーション不足、実際の伝送線路の反射、部品の自己共振など)を疑ってください。プローブ先端をグラウンドに直接当てるショート試験も合わせて行うと、切り分けがより確実になります。
アクティブプローブを使えば、この問題は気にしなくていいですか。
かなり緩和されますが、ゼロにはなりません。アクティブプローブは先端の入力容量が 1pF 以下と小さく、多くの機種で先端付近に短いグラウンド基準を作れる構造になっているため、共振が数 GHz 帯まで押し上げられます。それでも長いグラウンドリードのアクセサリを使えば同じ理屈で共振は下がってきますし、プローブ自身のグラウンド接続の作法(メーカー推奨の接地方法)は守る必要があります。
スイッチング電源のリプル測定で、帯域制限を入れたらスパイクが消えました。直ったと考えていいですか。
直ったのではなく、20MHz 以上の成分をまとめて捨てただけの可能性があります。スパイクがグラウンドリードのループが SW ノードの磁界を拾ったものなら、正しい直し方はループを小さくして測定点のすぐそばに置くことです。帯域制限は切り分けの道具として使い、最終的な適合判定は帯域制限なし・正しいグラウンド方法で行ってください。
ダンピング抵抗をプローブ先端に入れるのと、グラウンドリードを短くするのとでは、どちらを優先すべきですか。
まずグラウンドリードを短くしてください。ダンピング抵抗は Q を下げてリンギングの振幅と持続時間を抑えますが、共振周波数そのものは変えないので、その帯域にエネルギーがある限り波形は歪みます。リードを短くする(グラウンドスプリングを使う)ことは共振周波数そのものを測定対象の帯域より上へ追い出すので、根本的な対策になります。両方を組み合わせれば、さらに素直な波形になります。

参考にした規格・資料

  • Tektronix, "ABCs of Probes"(プローブの基礎解説) — グラウンドリードの長さが作るインダクタンスと、先端の入力容量との共振、グラウンドスプリングなど接地アクセサリの考え方
  • Henry W. Ott, "Electromagnetic Compatibility Engineering", Wiley — 配線のインダクタンスの目安値(長さあたり)、ループが作る磁界結合の基礎
  • 各オシロスコープメーカーのユーザーズマニュアル「帯域制限(Bandwidth Limit)」の項 — 20MHz などの帯域制限フィルタが前段のどこに入るか、ノイズ除去とスペック測定での使い分け

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